- ① 始めに(特徴紹介)
- ②使用アンプ一覧と特徴【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
- ③使用ギターの種類と特徴【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
- ④使用エフェクターとボード構成【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
- ⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
- ⑥比較的安価に音を近づける機材【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
- ⑦総括まとめ【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
① 始めに(特徴紹介)
デヴィッド・トーン(David Torn)というギタリストを一言で表現するなら、「音の錬金術師」あるいは「テクスチャーの魔術師」がふさわしいでしょう。特にビル・ブルーフォード、トニー・レヴィン、クリス・ボッティと結成した伝説的ユニット「Bruford Levin Upper Extremities(B.L.U.E.)」において、彼のプレイは既存のギター概念を完全に破壊し、再構築しました。
彼のサウンドの最大の特徴は、ギター本来の生々しいトーンに、深いディレイやループ、ピッチシフトを幾重にも重ね、まるでオーケストラや映画のサウンドトラックのような広がりを持たせる点にあります。単なる「ギターを弾く」という行為を超え、その場の空気感を支配するドローン・サウンドや、突如として牙を剥く破壊的なディストーション・リードは唯一無二です。
B.L.U.E.の代表曲「Upper Extremities」や「Cobalt Canyons」を聴けば、彼がいかにして空間を塗りつぶし、リズム隊の硬質なビートに対して有機的なアプローチを行っているかが分かります。複雑な機材システムを駆使しながらも、その核心にあるのは極めてエモーショナルでブルージーな魂です。本記事では、この摩訶不思議な「トーン・ワールド」を解明していきます。
▶ Bruford Levin Upper Extremities の公式YouTube動画を検索
②使用アンプ一覧と特徴【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
B.L.U.E.時代のデヴィッド・トーンのサウンドの核となっていたのは、単体のアンプヘッドというよりも「プリアンプ+パワーアンプ」を組み合わせたラックシステム的な思考です。彼はギターから出力された信号を複数のエフェクトで処理し、それを最終的に色付けの少ない、しかしダイナミクスに優れたアンプで増幅することを好みます。
メインアンプとして名高いRivera M100は、クリーンからハイゲインまで対応する柔軟性を持ちながら、デヴィッドの複雑な空間系サウンドを潰さずに再生できる懐の深さがあります。また、この時期からFryette(当時はVHT)との関わりが深く、特にパワーアンプ「2/50/2」などは彼のステレオ・セットアップを支える屋台骨となっていました。真空管らしいレスポンスと、ラックシステム特有のクリアな分離感を両立させているのが、彼のセットアップの妙と言えます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| M100 Combo | Rivera | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | B.L.U.E.時期のメインコンボ。12インチ1発のスピーカーから放たれる濃密なトーンが特徴。 |
| 2/50/2 (Power Amp) | Fryette (VHT) | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ラックシステム内のパワー増幅に使用。デヴィッドのステレオ音響の要。 |
| Ampulator | ADA | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | スピーカー・エミュレーター。ライン送りの際の質感調整に重宝された名機。 |
と、想定されます。彼のシステムは非常に流動的ですが、上記機材がサウンドの背骨を形成していることは間違いありません。
③使用ギターの種類と特徴【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
デヴィッド・トーンのステージで最も目を引くのは、その未来的で独特なフォルムを持つギターたちです。彼は長年、ヘッドレスギターのパイオニアであるSteinbergerを愛用してきました。特にTransTremを搭載したモデルは、音程を保ったままコード全体を移調させることができ、彼の変幻自在なフレージングに不可欠な要素となっています。
さらに、彼を象徴するもう一本のギターがKlein(クライン)です。人間工学(エルゴノミクス)に基づいた歪なボディシェイプは、座奏・立奏を問わず完璧なバランスを提供します。デヴィッドはこのクラインのボディにスタインバーガーのネックやパーツを移植したカスタムモデルを多用しており、B.L.U.E.のライブでもその姿を頻繁に確認できます。
また、彼の音楽性の幅広さを示すのが、エレクトリック・ウードの使用です。フレットレス楽器特有の微分音や滑らかなスライドを多用し、中東的なエキゾティシズムを楽曲に注入します。さらに、マイクロカセットレコーダーをピックアップに近づけ、テープの磁気情報をノイズとして出力する手法は、もはや「ギター」の枠を超えたサウンド・パフォーマンスと言えるでしょう。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| GL series / TransTrem | Steinberger | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ヘッドレスギター | 彼の原点とも言える機材。TransTremによる和音のピッチシフトが鍵。 |
| Electric Guitar | Klein | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ヘッドレスギター | 人間工学に基づいた唯一無二のボディシェイプ。B.L.U.E.でもメイン格。 |
| Electric Oud | Godin等 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | エレクトリック・ウード | 民族楽器の電化モデル。フレットレス特有のニュアンスを楽曲に加える。 |
と、想定されます。特にヘッドレス構造とトレモロユニットの組み合わせは、彼の表現力に直結しています。
④使用エフェクターとボード構成【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
デヴィッド・トーンの真骨頂は、このエフェクター/ラックシステムにあります。彼は単に音を歪ませたり残響を加えたりするのではなく、入力された音を「リアルタイムでサンプリングし、解体し、再構築する」というプロセスをステージ上で行っています。
その核となるのが、Lexicon PCM 42とOberheim Echoplex Digital Proです。これらは単なるディレイではなく、彼にとっては「録音機」であり「楽器」です。演奏したフレーズを即座にループさせ、そのピッチを落としたり、逆再生させたりすることで、独創的なテクスチャーを生み出します。また、DigiTech Whammyの使用法も特徴的で、急激なピッチ上昇によるスクィール音を、まるで生き物の鳴き声のように響かせます。
これらの膨大な信号を整理するために、Raneのラインミキサーを使用し、ドライ音とウェット音のバランスを極めて精密にコントロールしています。彼の出す音がノイズまみれにならず、常に音楽的な透明感を保っているのは、この並列ミックス(パラレル処理)の賜物です。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PCM 42 | Lexicon | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | 彼のサウンドに欠かせない、伝説的なデジタル・ディレイ。 |
| Echoplex Digital Pro | Oberheim | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ルーパー | リアルタイム・ループの先駆け的機材。即興演奏の核。 | |
| Whammy | DigiTech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ピッチシフター | 極端なピッチ操作により、ギターを電子的な楽器へと変貌させる。 | |
| Sustain+ Parametric EQ | TC Electronic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | イコライザー | 絶妙なコンプレッションとEQ調整に使用される足元の定番。 |
と、想定されます。特にLexiconとEchoplexの組み合わせは、彼の代名詞とも言えるでしょう。
⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
デヴィッド・トーンの音作りを理解するためには、まず「ドライ(生音)」と「ウェット(加工音)」の徹底的な分離という概念を理解する必要があります。彼のシステムでは、ギターのダイレクトな歪みサウンドと、ディレイやループによる残響音が別々に管理され、ラインミキサーで最終的に統合されます。これにより、どれだけ深い空間エフェクトをかけても、フレーズの芯がぼやけることがありません。
EQセッティングにおいて、彼は非常に中音域(Mid)の解像度を重視します。彼のリードトーンは一見すると非常に歪んでいるように聞こえますが、低域(Low)はスッキリとカットされており、ドラムやベースの帯域を邪魔しません。逆に、高域(High)は「痛くない程度に鋭く」設定されており、ワーミーペダルによる急激なピッチシフトがアンサンブルを突き抜けるように調整されています。これは、B.L.U.E.のような手練れのプレイヤーが集まるバンドにおいて、自身の立ち位置を明確にするためのプロフェッショナルな配慮です。
特筆すべきは、彼の「ボリュームペダル」の使い方です。彼は常に右足でボリュームをコントロールし、ピッキングのアタック音を消して音を立ち上がらせる「スウェル奏法」を多用します。これにロングディレイとリバーブを組み合わせることで、ギターをシンセサイザーのパッドのような持続音に変貌させます。また、曲中では常にループの多重録音を行っており、一度弾いたフレーズをバックグラウンドとして鳴らし続けながら、その上で全く別のソロを弾くという、一人二役以上の役割を瞬時にこなします。
ミックスの視点で見ると、彼の音はステレオで出力されることが前提となっています。一方のチャンネルからはドライに近いサウンド、もう一方からは激しく加工されたループ音、といった具合に左右で役割を分けることで、リスナーの耳を惑わせる立体的な音像を作り出します。PAエンジニアに対しては、ギターを単なる「一本の楽器」としてではなく、「ステレオのオーケストラ」として扱うよう要求しているかのようです。この「空間の占有」こそが、B.L.U.E.におけるデヴィッド・トーンの最大の武器であり、工夫の集大成なのです。
と、想定されます。彼の音作りは、テクニックだけでなく、信号の流れ(ルーティング)への深い理解に基づいています。
⑥比較的安価に音を近づける機材【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
デヴィッド・トーンの本物のラックシステムを組むには、莫大な予算と希少なビンテージ機材が必要ですが、現代の最新エフェクターを駆使すれば、そのエッセンスを安価に再現することが可能です。重要なのは「良質な歪み」「多機能ディレイ」「変態的なピッチシフト」の3点です。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| マルチエフェクター | HX Stomp | Line 6 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | パラレルルーティングが可能で、デヴィッドのような複雑な信号処理を一台で完結できます。 |
| ディレイ | Flashback 2 | TC Electronic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | MASH機能により、足元の操作だけでピッチやフィードバックを操れる点がデヴィッド的。 |
| ピッチシフター | Whammy Ricochet | DigiTech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 省スペースながらワーミーの急激なピッチ上昇を再現。あの「鳴き声」サウンドに。 |
特にHX Stompは、デヴィッド・トーンの「パラレル処理(ドライとウェットを混ぜる)」を簡単に再現できるため、最もおすすめの機材です。これにエクスプレッションペダルを繋ぎ、複数のパラメータを同時に動かすことで、彼のようなダイナミックな音色変化に近づけることができます。
⑦総括まとめ【Bruford Levin Upper Extremities・David Torn】
デヴィッド・トーンのサウンドを再現するために最も必要なのは、高級な機材ではなく「音を時間軸で捉える視点」です。彼の演奏は、常に「今弾いている音」と「数秒前に弾いた音」、そして「これから変化させる音」が共存しています。B.L.U.E.における彼の役割は、単なるギタリストではなく、リアルタイムで楽曲をリミックスし続ける即興のサウンド・デザイナーでした。
彼の音作りを志すなら、まずはディレイやルーパーを「ただ繰り返す道具」としてではなく、「新しい音色を作るための素材」として捉えてみてください。一音を弾いた後にボリュームペダルを絞り、ディレイのフィードバックを上げ、ワーミーでピッチを揺らす――。そうした「音との対話」こそが、デヴィッド・トーンという唯一無二の個性に近づくための第一歩となります。
完璧に同じ機材を揃えるのは至難の業ですが、彼の「既成概念に囚われない自由なアプローチ」を理解すれば、あなたの手元にある機材からも、まだ見ぬ未知のサウンドが鳴り響くはずです。デヴィッド・トーンの音作りは、私たちにギターという楽器の無限の可能性を常に示唆してくれています。

