始めに(特徴紹介)
フジイケンジ(藤井謙二)は、THE BIRTHDAYのギタリストとして、その独特で重厚なサウンドメイキングで多くのファンを魅了している。2011年にイマイアキノブに替わってバンドに加入して以降、シンプルながらも深みのある音作りで、チバユウスケのボーカルを支える重要な役割を果たしている。
音の特徴は、何といってもその「太さ」と「ドス」の効いた迫力にある。特に1959年製のFender Jazzmasterをメインギターとして使用し、Marshall Lead & Bass(1976年製)とMusic Man 112 RD One Hundredの2台のアンプを使い分けることで、ライブでは圧倒的な存在感を放っている。
レコーディングでは楽曲ごとに異なるギターを使い分ける丁寧さも特徴的で、「ヒマワリ」では1981年製のGreco TL500、「息もできない」や「レボルバー」では1961年製のJazzmaster、「月光」では1956年製のGretsch Duo Jetといった具合に、楽曲の世界観に最適な音色を追求している。エフェクターも飛び道具的な使い方をするものから、ベーシックなブースターまで幅広く活用し、楽曲に応じた繊細な音色変化を演出している。
THE BIRTHDAYの楽曲では、パンクの勢いと大人の余裕が同居したサウンドが印象的で、フジイケンジの音作りがその世界観を支えている。特に「なぜか今日は」「Red Eye」「OHBABY!」などの楽曲では、シンプルながらも奥行きのあるギターサウンドが楽曲の魅力を最大限に引き出している。
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使用アンプ一覧と特徴【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】
フジイケンジのライブサウンドの核となるのは、2台のアンプを使い分けるシステムである。メインとなるのは1976年製のMarshall Model 2100 Lead & Bassで、これは50W出力、12インチスピーカー2発(Celestion G12M搭載)という構成。2017年頃から愛用しており、レコーディングでもメインアンプとして使用している。
このMarshallの設定は非常に独特で、インプットⅠのHIGHに接続し、PRESENCE 0、BASS 3、MIDDLE 2、TREBLE 3、VOLUME Ⅰ 1程度という控えめな設定で常に鳴らしっぱなしにしている。これにより、メインの歪みを作り出すベースサウンドを構築している。フジイケンジは「ローさんと同じもの(マーシャル)を使っている」と語っており、ROLLYへのリスペクトも感じられる。
サブアンプとして使用されるのがMusic Man 112 RD One Hundredで、これはハイブリッド構造(プリ部トランジスタ、パワー部真空管)の100W出力、12インチスピーカー1発搭載モデル。ライブではギターソロやサビでオンにし、ブースター的な役割を果たしている。インプットはHI GAINを選択し、BRIGHT/DEEPスイッチはOFF、GAIN 3、VOLUME 2.5、TREBLE 3、MIDDLE 8、BASS 3.5という設定で使用している。
レコーディングでは、さらに多彩なアンプを使い分けている。1965年製のVOX AC30 Bassは貴重なビンテージモデルで、JMIロゴのグレーパネル、回転式ドーム型入力電圧セレクターを持つ。スピーカーはリイシューのCelestion製VOX Alnico Blueに交換されており、BRILLANTのHIGHにインプットし、ボリュームを上げて歪みを作る設定で使用している。
また、1966年製のFender Deluxe Reverb AB763も重要なレコーディングアンプの一つで、63年製ジャガーとBOSS BD-2との組み合わせで使用されている。NORMAL ch.の1を使用し、Oxford製12インチスピーカー1発で、ボリュームアップによる煌びやかな歪みが特徴的である。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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Model 2100 Lead & Bass | Marshall | https://www.amazon.co.jp/s?k=Marshall+Model+2100+Lead+Bass&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 1976年製、メインアンプ。50W出力、常に鳴らしっぱなし設定でベース音作り |
112 RD One Hundred | Music Man | https://www.amazon.co.jp/s?k=Music+Man+112+RD+One+Hundred&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ハイブリッド構造、100W出力。ギターソロ・サビでブースター的に使用 |
AC30 Bass | VOX | https://www.amazon.co.jp/s?k=VOX+AC30+Bass&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 1965年製、JMIロゴのグレーパネル。レコーディング専用、Alnico Blue搭載 |
Deluxe Reverb AB763 | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Deluxe+Reverb+AB763&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 1966年製、63年製ジャガーとBD-2の組み合わせで使用。Oxford製スピーカー |
Model 1992 Super Bass | Marshall | https://www.amazon.co.jp/s?k=Marshall+Model+1992+Super+Bass&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 1975年製、加入当初から愛用。ジム・マーシャル直筆サイン入り、ロー感重視 |
Band-Master | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Band-Master&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 1967年製、ブラックフェイス。40W出力、2×12ピギーバックキャビネット |
使用ギターの種類と特徴【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】

フジイケンジのギターサウンドを語る上で欠かせないのが、1959年製のFender Jazzmasterである。これが彼のメインギターで、複数所有するジャズマスターの中でも「音が一番太くて、ドスが効いている」と本人が語る特別な1本だ。プリセットスイッチの配線をカットし、ブリッジをムスタングタイプへ交換するなどの改造が施されている。興味深いのは、フロントピックアップのみを使用している点で、これは以前断線したリアピックアップと交換したまま使用し続けているためだ。
弦はErnie Ball .011-.048を長年愛用していたが、最近は.010-.046も試すなど、常により良い音を求めて実験を続けている。この59年製ジャズマスターは主にライブで使用され、レコーディングでは楽曲に応じて他のギターを選択するという使い分けをしている。
レコーディングで活躍するのが1961年製のFender Jazzmasterで、これは「息もできない」「レボルバー」「晴れた午後」「ショートカットのあの娘」「ギムレット」「バタフライ」の6曲で使用された。メインの59年製より「エッジのある音」が特徴で、こちらもブリッジはムスタングタイプに交換されている。フジイケンジ独特の弦の張り方として、1弦のみ弦をペグ穴に入れずに巻くという「フジイ流」のテクニックも注目される。
今年入手したばかりの1963年製Fender Jaguarも重要なギターの一つで、貴重なオリジナル・ブラックカラーで初期仕様のフラットポールピースピックアップを搭載している。年内リリース予定のシングル曲でメイン使用が予定されており、フロントピックアップでの録音が計画されている。
家族の歴史を感じさせるのが1981年製のGreco TL500で、これは藤井家で最も古いエレキギターとして、元々は兄の所有だった。ボディはシルバーっぽくリフィニッシュされ、ネックは72年製シンラインのものに交換、べっ甲ピックガードに交換、フロントピックアップにP-90を搭載するなど大幅な改造が施されている。「ヒマワリ」と「オルゴール」のレコーディングで使用され、最近はライブでの出番も多くなっている。
グレッチサウンドを担うのが1956年製のGretsch Duo Jetで、「月光」「アンチェイン」で使用されている。2018年の「青空」から使用を開始し、『VIVIAN KILLERS』でも4曲で使用された実績がある。ピックアップはミックスポジションで使用し、ブリッジはアジャストマティックに交換してテープで固定するという独特のセッティングが施されている。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
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Jazzmaster | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Jazzmaster&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1959年製メインギター。最も太くドスの効いた音。プリセット配線カット、ムスタングブリッジ |
Jazzmaster | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Jazzmaster&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1961年製レコーディング用。エッジのある音、6曲で使用。フジイ流弦巻き |
Jaguar | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Jaguar&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1963年製、貴重なオリジナル・ブラック。初期仕様フラットポールピース |
TL500 | Greco | https://www.amazon.co.jp/s?k=Greco+TL500&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1981年製、元々兄の所有。シルバーリフィニッシュ、P-90搭載 |
Telecaster | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Telecaster&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1966年製、リフィニッシュ・ブラック。ラウンド貼り、ローズウッド指板 |
Duo Jet | Gretsch | https://www.amazon.co.jp/s?k=Gretsch+Duo+Jet&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1956年製、「月光」「アンチェイン」で使用。ミックスポジション |
ES-355TDSV | Gibson | https://www.amazon.co.jp/s?k=Gibson+ES-355TDSV&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | セミアコースティック | 1967年製、オリジナル・ブラック。「ラドロックのキャデラックさ」で使用 |
Les Paul Custom ’54 Reissue | Gibson | https://www.amazon.co.jp/s?k=Gibson+Les+Paul+Custom+54+Reissue&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エレキギター | 1972年製、「12月2日」で使用。ダーティなサウンド、アルニコVフロント |
Scorpion 2N12 | Coral | https://www.amazon.co.jp/s?k=Coral+Scorpion+2N12&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 12弦ギター | 1960年代、「スイセンカ」で使用。THE BIRTHDAY初登場 |
使用エフェクターとボード構成【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】
フジイケンジのエフェクターボードは、実用性と音楽性を兼ね備えた新機材を導入したニューボードとなっている。ギターからの信号の流れは、チューナー(KORG Pitchblack mini)→ コーラス(BOSS CE-1)→ オーバードライブ(BOSS BD-2、JHS Pedals SuperBolt、DOD FX10)→ トレモロ(BOSS TR-2)→ ディレイ(下村音響 飛飛機械 compact11、Maxon AD-900)→ ボリュームペダル(Shin’s Music Perfect Volume Hybrid)→ アンプセレクター(Radial Bones TwinCity)という構成になっている。
最も特徴的なのがBOSS BD-2の使い方で、これはギターソロ用のブースターとして使用されている。TONE 9時、LEVEL 1時固定という設定で、GAINツマミにプラモデル用タイヤを装着し、足で0〜9時の間でリアルタイム調整できるようにしている。この独特なセッティングにより、楽曲中でも細かな歪み調整が可能となっている。
最近導入されたJHS Pedals SuperBoltは、ブースターとして使用され、従来のDOD FX10の使用頻度が下がっている。DOD FX10は長年使用してきたため「今さらはずせない」と語りつつも、BD-2よりエッジが欲しい時の使用に留まっている。
コーラスエフェクトにはBOSS CE-1を使用し、昨年のホールツアーから導入された。「オルゴール」で使用され、入力low、level control 3時、chorus intensity 9時手前という繊細なセッティングで、楽曲に上品な広がりを与えている。
ディレイシステムは2台構成で、メインとなるMaxon AD-900は長年使用されているアナログディレイで、D-TIME/D-LEVELツマミを足で操作し、ショート/ロングディレイを切り替える。ショートディレイとしての使用頻度が高く、「Red Eye」「レボルバー」「月光」などでオンにされる。REPEAT 9時固定という設定で、自然なエコー感を演出している。
飛び道具的な役割を果たすのが下村音響株式会社の飛飛機械 compact11で、デジタルディレイとして使用されている。F.BACK/D.TIMEツマミをリアルタイム操作することで、「Red Eye」「SUMMER NIGHT」の間奏で発振音を作り出している。コントロール部はマイクスタンドに設置され、演奏中の操作性を向上させている。
BOSS TR-2は、チバユウスケから借りているトレモロエフェクターで、「ラドロックのキャデラックさ」で使用されている。ボリュームペダルにはShin’s Music Perfect Volume Hybridを使用し、インピーダンスHi/Lo切り替え可能で、バッファ搭載エフェクターの後段のためLo(アクティブ)を選択している。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
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BD-2 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+BD-2&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | オーバードライブ | ギターソロ用ブースター。GAINツマミにプラモデル用タイヤ装着 |
CE-1 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+CE-1&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | コーラス | 昨年のホールツアーから導入。「オルゴール」で使用 |
SuperBolt | JHS Pedals | https://www.amazon.co.jp/s?k=JHS+Pedals+SuperBolt&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ブースター | 最近導入。ブースターとして使用、使用頻度増加中 |
FX10 | DOD | https://www.amazon.co.jp/s?k=DOD+FX10&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ブースター | 長年使用。「今さらはずせない」。BD-2よりエッジが欲しい時 |
TR-2 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+TR-2&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | トレモロ | チバユウスケから借用。「ラドロックのキャデラックさ」で使用 |
飛飛機械 compact11 | 下村音響株式会社 | https://www.amazon.co.jp/s?k=下村音響+飛飛機械+compact11&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ディレイ | 飛び道具的役割。「Red Eye」「SUMMER NIGHT」間奏で発振音 |
AD-900 | Maxon | https://www.amazon.co.jp/s?k=Maxon+AD-900&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ディレイ | 長年使用。ショート/ロングディレイ切り替え。REPEAT 9時固定 |
Perfect Volume Hybrid | Shin’s Music | https://www.amazon.co.jp/s?k=Shin’s+Music+Perfect+Volume+Hybrid&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ボリュームペダル | インピーダンスHi/Lo切り替え可能。バッファ搭載エフェクター後段でLo選択 |
Bones TwinCity | Radial | https://www.amazon.co.jp/s?k=Radial+Bones+TwinCity&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | スイッチングシステム | アンプセレクター。Marshall/Music Man分岐。BOTHスイッチで2台同時出力 |
Pitchblack mini | KORG | https://www.amazon.co.jp/s?k=KORG+Pitchblack+mini&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エフェクター | Perfect Volume Hybridのチューナーアウトに接続 |
PT-1D | FREE THE TONE | https://www.amazon.co.jp/s?k=FREE+THE+TONE+PT-1D&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | パワーサプライ | エフェクターボード全体の電源供給 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】

フジイケンジの音作りにおける最大の特徴は、2台のアンプを使い分けることによる立体的なサウンド構築にある。メインアンプのMarshall Lead & Bassは、PRESENCE 0、BASS 3、MIDDLE 2、TREBLE 3、VOLUME Ⅰ 1程度という非常に控えめな設定で常に鳴らしっぱなしにしている。これは一見矛盾するようだが、真空管アンプの特性を活かした巧妙なセッティングで、低音量でも真空管の甘い圧縮感とサチュレーションを得ることができる。
PRESENCEを0にすることで高域の刺激的な成分をカットし、MIDDLEを2という低めの設定にすることで、中域の膨らみを抑制している。この設定により、バンドアンサンブルの中で他の楽器と干渉しない「居場所」を確保しつつ、ギター本来の音色を保持している。BASS 3という設定は、ジャズマスターの持つ自然な低域特性と相まって、必要十分な低音の厚みを提供している。
サブアンプのMusic Man 112 RD One Hundredは、GAIN 3、VOLUME 2.5、TREBLE 3、MIDDLE 8、BASS 3.5という設定で、特にMIDDLE 8という高い設定が注目される。これはギターソロやサビでオンにした際に、楽曲の中で埋もれることなく前に出てくるための工夫である。ハイブリッド構造(プリ部トランジスタ、パワー部真空管)の特性を活かし、トランジスタの明瞭さと真空管の温かみを両立させている。
レコーディングでの音作りは、楽曲ごとに使用するギターとアンプの組み合わせを変えることで、楽曲の世界観に最適な音色を追求している。例えば、63年製ジャガーとFender Deluxe Reverb、BOSS BD-2の組み合わせでは、NORMAL ch.の1を使用し、Oxford製スピーカーの持つ独特の音色特性を活かしている。ボリュームアップによる煌びやかな歪みは、ジャガーの持つブライトな特性と相まって、楽曲に華やかさを与えている。
VOX AC30 Bassでは、BRILLANTのHIGHにインプットし、ボリュームを上げて歪みを作るという、VOXアンプの伝統的な使い方を踏襲している。Celestion製VOX Alnico Blueスピーカーに交換することで、オリジナルのVOXサウンドを現代的にアップデートし、レコーディングでの使い勝手を向上させている。
ミックスでの工夫として、Marshall Lead & BassをベースサウンドとしてPANの中央に配置し、Music Man 112 RD One Hundredをやや左右に振ることで、ステレオ感のあるギターサウンドを構築している。ライブでのPA設定では、Marshall側のマイキングを重視し、Music Man側は楽曲の盛り上がりに応じてフェーダーを上げる運用をしている。
エフェクターのセッティングにおいては、BOSS BD-2のGAINツマミにプラモデル用タイヤを装着するという独特の工夫により、演奏中のリアルタイム調整を可能にしている。これにより、楽曲の展開に応じて0〜9時の間で歪みの強さを微調整し、動的な表現力を獲得している。TONE 9時、LEVEL 1時固定という設定は、アンプの前段で適度な音色補正を行いつつ、音量的にはアンプとのバランスを保つための絶妙なセッティングである。
Maxon AD-900のセッティングでは、D-TIME/D-LEVELツマミを足で操作することで、楽曲中でのショート/ロングディレイの切り替えを実現している。REPEAT 9時固定という設定により、ディレイ音が楽曲に溶け込みつつも存在感を保つバランスを実現している。特に「Red Eye」や「月光」などの楽曲では、このディレイが楽曲の浮遊感や空間的な広がりを演出する重要な役割を果たしている。
比較的安価に音を近づける機材【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】
フジイケンジのサウンドを手頃な価格で再現するために、まず重要なのがギター選びである。高価なビンテージジャズマスターの代替として、Fender Player Jazzmasterや、さらに予算を抑えたい場合はSquier Classic Vibe ’60s Jazzmasterが有効だ。これらのギターは本家の基本的な音色特性を備えており、特にSquier版はコストパフォーマンスに優れている。フジイケンジが愛用するジャズマスターの「太くてドスの効いた音」を再現するには、フロントピックアップを中心に使用し、ブリッジをムスタングタイプに交換することで、より近いサウンドが得られる。
アンプについては、Marshall DSL40CRが最も現実的な選択肢となる。これは40W出力のオールチューブアンプで、Marshall Lead & Bassの系譜を継ぐサウンドキャラクターを持っている。ULTRA GAINチャンネルを低ゲイン設定で使用し、フジイケンジと同様にPRESENCEを低め、MIDDLEも控えめに設定することで、類似したベースサウンドが得られる。さらに予算を抑えたい場合は、Marshall MG30CFXのようなソリッドステートアンプでも、適切なセッティングにより近似したサウンドは可能だ。
2台のアンプを使い分ける効果を1台で再現するには、BOSS Katana-100やYamaha THR30IIA Wirelessなどのモデリングアンプが有効である。これらは複数のアンプモデルを内蔵しており、フットスイッチによる切り替えでMarshallとMusic Manの使い分けを模擬できる。特にBOSS Katanaシリーズは、Marshallライクなサウンドから、よりモダンなハイゲインサウンドまで幅広くカバーしており、THE BIRTHDAYの楽曲に必要な音色バリエーションを1台で実現できる。
エフェクター面では、BOSS BD-2は比較的入手しやすい価格帯にあり、フジイケンジと全く同じモデルを使用できるのが大きな利点だ。GAINツマミの改造については、市販のラバーキャップやノブカバーで代替可能で、足での操作性を向上させることができる。コーラスエフェクトのBOSS CE-1は現在入手困難だが、BOSS CE-2やTC Electronic Corona Chorusで類似した効果が得られる。
ディレイエフェクターについては、Maxon AD-900の代替としてBOSS DM-2Wやtc electronic Flashback 2 Delayが適している。特にDM-2Wはアナログディレイの質感を現代的な信頼性で提供し、フジイケンジが多用するショートディレイの効果を手軽に得ることができる。Flashback 2は、アナログとデジタルの両方のディレイタイプを切り替えられるため、楽曲に応じた使い分けが可能だ。
予算をさらに抑えたい場合は、BOSS GT-1やZoom G1X FOURなどのマルチエフェクターが選択肢となる。これらの機材では、オーバードライブ、コーラス、ディレイを同時に使用でき、フジイケンジのエフェクターチェーンを1台で再現できる。特にZoom G1X FOURは、エクスプレッションペダル機能により、BD-2のGAIN調整のような表現も可能だ。
音作りのコツとしては、まずクリーンなベースサウンドをしっかりと構築することが重要だ。フジイケンジのMarshall設定を参考に、PRESENCEとMIDDLEを控えめにし、BASSで必要な低域を確保する。その上で、BD-2系のオーバードライブをブースターとして使用し、楽曲の盛り上がりに応じてゲインを調整する。ディレイは常にオンにしておき、楽曲に空間的な広がりを与えることで、THE BIRTHDAYらしい浮遊感のあるサウンドに近づけることができる。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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ギター | Player Jazzmaster | Fender | https://www.amazon.co.jp/s?k=Fender+Player+Jazzmaster&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | ビンテージジャズマスターの基本特性を継承。フロント中心使用で太いサウンド再現可能 |
ギター | Classic Vibe ’60s Jazzmaster | Squier | https://www.amazon.co.jp/s?k=Squier+Classic+Vibe+60s+Jazzmaster&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | コストパフォーマンス抜群。ムスタングブリッジ交換でより近似サウンド実現 |
アンプ | DSL40CR | Marshall | https://www.amazon.co.jp/s?k=Marshall+DSL40CR&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 40Wオールチューブ。Lead & Bassの系譜継ぐサウンド。低ゲイン設定で使用 |
アンプ | Katana-100 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+Katana-100&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | モデリングアンプで2台使い分けを再現。Marshallライクサウンド搭載 |
エフェクター | BD-2 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+BD-2&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | 本人と同じモデル使用可能。市販ラバーキャップでGAIN調整改良 |
エフェクター | CE-2 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+CE-2&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | CE-1の代替。類似したコーラス効果で「オルゴール」的サウンド再現 |
エフェクター | DM-2W | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+DM-2W&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | AD-900の代替。アナログディレイ質感とショートディレイ効果を現代的信頼性で |
マルチエフェクター | GT-1 | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BOSS+GT-1&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | オーバードライブ、コーラス、ディレイを1台で。エフェクターチェーン再現 |
マルチエフェクター | G1X FOUR | Zoom | https://www.amazon.co.jp/s?k=Zoom+G1X+FOUR&tag=aki1446-22 | THE BIRTHDAY | フジイケンジ | エクスプレッションペダル搭載。BD-2のGAIN調整のような表現も可能 |
総括まとめ【THE BIRTHDAY・フジイケンジ】

フジイケンジのギターサウンドの本質は、「シンプルでありながら奥深い」音作りにある。彼の機材選択と音作りを総合的に分析すると、決して複雑なセッティングや最新の機材に頼るのではなく、むしろクラシックで信頼性の高い機材を自分なりに理解し、使いこなすことに重点を置いていることがわかる。これは現代のギタリストにとって非常に示唆的なアプローチだと言える。
最も印象的なのは、2台のアンプを使い分けるシステムの巧妙さである。Marshall Lead & Bassを常に鳴らしっぱなしにするという一見非効率に見える手法は、実は真空管アンプの特性を深く理解した上での判断である。低音量でも真空管の甘い圧縮感とサチュレーションを得ることで、バンドサウンドの土台となる「居場所」を確保している。これにMusic Man 112 RD One Hundredのブースター的使用を組み合わせることで、楽曲の展開に応じた動的な表現を実現している。
ギター選択においても、フジイケンジの美学が現れている。1959年製のJazzmasterをメインに据えながら、レコーディングでは楽曲ごとに最適なギターを選択するという姿勢は、「音楽ファースト」の考え方を体現している。単に高価な楽器を集めるのではなく、それぞれの楽器が持つ個性を理解し、楽曲の世界観に最適な選択をする姿勢は、多くのギタリストが見習うべき点である。
エフェクターの使い方においても、フジイケンジの実用主義が際立っている。BOSS BD-2のGAINツマミにプラモデル用タイヤを装着するという独創的な改造は、機能美を追求した結果生まれたアイデアだ。また、DOD FX10を「今さらはずせない」と語りながらも新しいJHS SuperBoltを導入するなど、過去への敬意と新しい可能性への探求心のバランスが絶妙である。
THE BIRTHDAYの音楽における藤くんの役割を考えると、彼のギターはチバユウスケのボーカルを支える「縁の下の力持ち」的存在でありながら、楽曲の核心部分では確実に存在感を示している。これは、ロックバンドにおけるギターの理想的な在り方の一つを示している。派手さよりも楽曲への貢献を重視し、必要な時に必要な表現を的確に行うという姿勢は、技術偏重になりがちな現代のギタリストにとって重要な教訓である。
フジイケンジのサウンドを再現しようと考える場合、最も重要なのは機材の表面的な模倣ではなく、彼の音楽に対する姿勢を理解することである。「楽曲に最適な音色とは何か」を常に考え、そのために必要な機材選択と設定を行う。エフェクターやアンプの設定値を単純にコピーするのではなく、なぜその設定が選ばれたのかを理解し、自分の演奏環境や楽曲に応じて調整する柔軟性が必要だ。
また、フジイケンジの音作りから学べる重要な点は、「制約の中での創造性」である。限られた機材の中で最大限の表現を行うという姿勢は、予算や環境に制約があるアマチュアギタリストにとって非常に参考になる。高価な機材を揃えることよりも、手持ちの機材を深く理解し、創意工夫により新しい表現を見つけ出すことの方がはるかに音楽的価値が高い。
最終的に、フジイケンジのギターサウンドの魅力は、技術的な完璧さよりも「音楽への真摯な姿勢」にある。彼の機材選択、セッティング、演奏すべてが、THE BIRTHDAYという音楽的世界観を構築するための手段として機能している。この「音楽ファースト」の考え方こそが、彼のサウンドを特別なものにしている最大の要因であり、すべてのギタリストが心に留めておくべき本質的な教えである。
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