① 始めに(特徴紹介)
Incubus(インキュバス)のギタリスト、Mike Einziger(マイク・アインジガー)の音は「1本のリードで全部持っていく」タイプじゃなく、曲全体の“空気”を設計していく建築家寄りです。クリーン〜クランチの芯が太く、そこにフェイザー/リングモジュレーター/エンベロープフィルターみたいな“動く質感”を重ねて、バンド全体のグルーヴを立体化していくのが特徴。特に『Make Yourself』『Morning View』期の、タイトだけど湿度のあるクリーン〜軽い歪みは、彼の代名詞ですね。
代表曲でいうと「Drive」のコーラス感のある揺れ、「Wish You Were Here」のジャキッとした分離感、「Megalomaniac」「Vitamin」あたりのフェイザーが暴れる質感、「Aqueous Transmission」の異国情緒(琵琶=Pipa)まで、ギターが“主役にも背景にもなる”レンジの広さが武器です。本人インタビューやギア記事でも、手首の負担(手根管症候群)を前提に「弾きやすさ」を強く意識している点が語られていて、そこが機材選びにも直結しています。いわば、フィジカル制約をサウンドデザインに変換した人。かっこよすぎる。
実使用の裏付けが強いのは、2012年以降にツアーで使用されているMusic Man Albert Lee HH(複数モデルをツアー投入)で、本人コメントとして手首の問題と結びつけて語られています。まずここが再現の“起点”になります。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
②使用アンプ一覧と特徴【Incubus・Mike Einziger】
マイクのアンプ運用は時期でキャラクターが変わりますが、根っこは一貫していて「クリーンの土台を太く作り、歪みは必要に応じて足す」設計です。『Make Yourself』『Morning View』期の象徴として語られやすいのがMesa/Boogie Dual Rectifier系。レクチは“メタル専用機”と思われがちなんですが、実はクリーンも太くて、ペダル前提で鳴らすとレンジが広い。Incubusのクリーンが薄くないのは、こういう土台のパワー感が関係していると考えられます(当時の機材記事・まとめでも頻出)。
一方で近年の運用としてはMesa/Boogie Tremoverb(コンボ+2×12拡張)をクリーン設定で使い、歪みはペダルで補う、という思想が語られがち。クリーン2台(またはクリーン基調)を用意して、片方をより“前に出る艶”、もう片方を“レンジの土台”にしてブレンドする発想は、マイクの「空間を作るギター」にめちゃくちゃ合います。そこに、2006年前後のヘビーサウンド向けとしてMarshall 1959 SLP Plexi Reissue(マスターボリューム追加改造)やJCM800、4×12(V30/75混在)を絡め、必要な時だけ“硬さと噛みつき”を足すイメージです。
さらに、クリーン専用枠としてVox AC30(整流器改造)のような「倍音が前に出るクリーン」を混ぜると、Incubusの“艶+立体感”が作りやすい。クリーンをステレオ的に扱い、ペダルで歪みとモジュレーションを制御するのが王道ルートです。ホテル練習用の小型アンプ(Fender G-DEC Junior)のような用途別も、現代ツアー勢あるあるですね。
ただし、アンプまわりは時期・会場・レンタル事情で変動しやすく、写真や本人発言で確定できない部分も混ざります。上位の機材まとめで頻出するMesa系(Dual Rectifier / Tremoverb)とMarshall系(Plexi/JCM800/4×12)を軸に、クリーン基調+ペダル歪みの運用が“最もそれっぽい落とし所”、と想定されます。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Dual Rectifier Head + 2×12 Mesa Cab (Celestion 30s) | Mesa/Boogie | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 『Make Yourself』『Morning View』期の代表格として語られる定番。太いクリーン土台+ペダル前提でIncubusの分離感を作りやすい。 |
| Tremoverb Combo + 2×12 Extension Cab (Celestion V30) | Mesa/Boogie | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 近年のMesa枠としてまとめ記事で言及されやすい。ライブではクリーン設定にして歪みはペダルで補う運用が“それっぽい”とされる。 |
| 1959 SLP Plexi Reissue + 2×12 Cabinet | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 2006年前後のヘビー寄りサウンド用として言及される枠。マスターボリューム追加改造の話もあり、補助的にブレンド運用されがち。 |
| Vox AC30 Reissue (Rectifier Mod) | Vox | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | クリーン専用枠として語られやすい。倍音が前に出るため、Incubusの“艶+空気感”作りに相性が良いと想定。 |
| Marshall 4×12 Slant Cabinet (V30 / G12T-75 mix) | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 上段V30/下段75などの混在は、レンジ設計(中域の押し出し+ローの締まり)として合理的。現場ブレンド用途の想定。 |
| JCM 800 | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ヘビー寄りの硬さ・アタックを足す補助アンプとして言及されがち。Mesaの太さに“噛みつき”を足す発想に合う。 |
| G-DEC Junior Carbon 15W | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ホテル練習用の用途として語られる枠。ツアー勢の“実用機材”として整合的。 |
④使用エフェクターとボード構成【Incubus・Mike Einziger】
マイク・アインジガーのペダルボードは、一言でまとめると「歪みで押し切る」の真逆で、“空間処理+フィルター+動き”で曲の表情を作る設計です。Incubusって、歌・ベース・ドラムのグルーヴが強いぶん、ギターが前に出すぎると一気にバンド全体が窮屈になる。だからマイクは、歪みは必要最低限にしつつ、フェイザーやリングモジュレーター、エンベロープフィルターみたいな「動く倍音」を混ぜて“聴感上の存在感”を稼ぐタイプです。特にBoss PH-2(2台運用)で異なる設定を同時に使う、という発想がもう職人芸で、「Megalomaniac」「Vitamin」「Are You In」などで“うねり方が曲ごとに違う”のは、単に深さを変えるだけじゃなく、位相のキャラを設計しているからだと考えられます。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
次に重要なのがBoss OC-2。これは“足し算のオクターブ”というより、ギターの下支えを太くしてバンド全体のロー〜ローMIDを安定させるための道具。クリーン寄りの設定でも、OC-2をうっすら混ぜると「ギターが薄くならない」状態を作れるので、Incubusのようにセクションでダイナミクスが大きい曲で強い。さらにBoss CS-3でコンプを「音を揃える」より、「特定のハーモニクスやイントロの輪郭を立てる」目的で使うのも、マイクの“音色で構成する”思想と一致します。
空間系の要がBoss RV-3(リバーブ/ディレイ複合)。マイクはスウェルや余韻の出し方が上手いんですが、RV-3のような“デジタルの角”が残る残響は、ロックバンドのミックスで埋もれにくい。実際、Equipboard側のまとめでもRV-3やGonkulator、Phase 90の組み合わせが言及されていて、単体というより「並び順で音の意味が変わる」タイプのボードと捉えるのが正解です。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
『Science』期の狂気担当がDOD FX-13 Gonkulator(リングモジュレーター)とDOD FX-25(エンベロープフィルター)。この2つは“分かりやすいギターの気持ちよさ”から外れる方向の道具なんですが、Incubusの初期はそこが魅力で、「Glass」「Vitamin」「Redefine」みたいな、ギターが“ノイズとグルーヴの境界”を泳ぐサウンドに直結します。ワウもDunlop 95Qを2006年頃からフィルター的に使うとされ、典型的な「ソロでワウ!」より、帯域を動かしてフレーズの発音を変える用途が中心だと想定できます。さらに最近のライブで復帰とされるElectro-Harmonix Deluxe Memory Manをワウ前段に置く、というのも“発音前の質感”を作る発想で、いかにもマイクらしい。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
ボード全体の実運用としては、クリーンアンプ側/ダーティ寄り側をA/Bで分け、Digitech Tone DriverやDOD 250のようなペダルで役割を分担する考え方が語られやすいです。加えて、Hughes & Kettner Tube Rotosphere MKII(ロータリー)で「The Warmth」「Drive」系の“回転する空気”を作り、コーラス(Digitech XMC Multi Chorus)やフェイザー(MXR EVH Phase 90)と使い分ける。電源はVoodoo Lab Pedal Powerの複数ユニット、最後段にBoss TU-2/TU-3を置いてバッファー兼チューナー、ノイズ対策にNS-2、ハム対策にEbtech 2ch Hum Eliminator、という“現場の生存戦略”まで含めて一つのシステムです。
ただし、エフェクターボードはツアーや年代で入れ替わりが発生しやすく、写真や本人発言で確定できない項目も混ざります。そのため、確度が高いとされる定番(PH-2、OC-2、RV-3、Gonkulator等)を中核に置きつつ、上位の機材まとめで頻出する周辺機材も含めた“再現性の高い構成”として以下を整理します。最終的に、クリーン土台+動く倍音+フィルター設計がマイクの本質であり、こうしたボード構成になる、と想定されます。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PH-2 Super Phaser(2台) | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | フェイザー | 異なる設定で2台併用とされる定番。「Megalomaniac」「Vitamin」「Are You In」など“動く質感”の中核。:contentReference[oaicite:4]{index=4} |
| OC-2 Octaver | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オクターブ | キャリア通じて重要とされる枠。クリーンでも“薄くならない”ローMIDの補強に効く。 |
| CS-3 Compression Sustainer | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | コンプレッサー | 特定のハーモニクスやイントロの輪郭を立てる用途として語られる。空間系の前段で“素材”を整える役。 |
| RV-3 Reverb/Delay | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 空間系マルチエフェクター | 重要ペダルとして頻出。スウェルや余韻の作り込みに直結し、ボードの“空気”担当。:contentReference[oaicite:5]{index=5} |
| FX-13 Gonkulator | DOD | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | リングモジュレーター | 『Science』期中心の象徴。「Glass」「Vitamin」などで“金属的なうねり”を作る。まとめ・写真ベースでも言及されやすい。:contentReference[oaicite:6]{index=6} |
| FX-25 Envelope Filter | DOD | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オートワウ・エンベロープフィルター | 『Science』期のフィルター担当。「Vitamin」「Redefine」などで“発音の表情”を作る(ベース版使用の説もあり)。 |
| DOD Flanger | DOD | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | フランジャー | 時期によってボードに入るとされる揺れ担当。フェイザーと役割を分けて“位相の厚み”を作る用途が想定。 |
| 95Q Cry Baby Wah | Dunlop | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ワウペダル | 2006年頃からとされる。ソロ用というより“フィルター的”に帯域を動かして発音を変える用途がマイク流。 |
| Reel Echo | Danelectro | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | エコー | テープエコー模倣で“古い残響の粘り”を足す役。時期によってボードから外されることもあるとされる。 |
| POD | Line 6 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | プリアンプ/アンプシミュレーター | 時期によって使用が言及されるマルチ的枠。ライン/補助用途で“再現性”を確保する目的が想定。 |
| Filter Factory | Electrix | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オートワウ・エンベロープフィルター | フィルター系の拡張として言及される枠。ギターを“シンセ的に”扱うマイクの思想と整合する(年代で入替の可能性)。 |
| Tone Driver | DigiTech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | Vox側スプリット用とされる。クリーン土台に“軽い粒立ち”だけ足して前に出す用途の想定。 |
| Overdrive Preamp/250 | DOD | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | Marshall側スプリット用とされる。硬めのアンプに“押し出し”を足して、フェイザー等を深くかけても芯を残す役。 |
| Deluxe Memory Man | Electro-Harmonix | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | 最近のライブで復帰とされる。ワウ前段で“発音前の質感”を作る使い方が想定され、マイクの空間設計に合う。:contentReference[oaicite:7]{index=7} |
| Micro POG | Electro-Harmonix | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オクターブ | ポリフォニック系で“コードのまま厚みを足す”用途に強い。OC-2と役割を分けて現代的に再現しやすい。 |
| Holy Grail Nano Reverb | Electro-Harmonix | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | リバーブ | 最近追加とされる。「Warning」でPhase 90と併用の言及があり、“揺れ+残響”の組み合わせで空気を作る用途。:contentReference[oaicite:8]{index=8} |
| EVH Phase 90 | MXR | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | フェイザー | 「Warning」「Nowhere Fast」等で使用とされるフェイザー枠。PH-2とキャラを分けて“位相の味”を使い分ける想定。:contentReference[oaicite:9]{index=9} |
| TU-2 / TU-3 | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | バッファー | チェーン最後に置き、チューナー兼バッファーとして運用とされる。長いケーブル/多段ペダルでも高域の劣化を抑える“現場の要”。 |
| NS-2 Noise Suppressor | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ノイズリダクション | 多段モジュレーション+歪み運用でのノイズ管理に必須。PA/現場視点で“事故を減らす”系の代表。 |
| GE-7 Equalizer | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | イコライザー | 曲ごとの帯域補正・アンプ分岐後の整形に使いやすい。マイクの“空間に収めるギター”にはEQが効く。 |
| XMC Multi Chorus | DigiTech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | コーラス | “揺れの種類”を増やすためのコーラス枠。ロータリーやフェイザーと使い分けて曲の空気を変える用途。 |
| 2ch Hum Eliminator | Ebtech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ダイレクトボックス | ハム/グラウンドループ対策の実務機材。多アンプ/分岐運用の現場で“鳴らない事故”を減らす。 |
| Tube Rotosphere MKII | Hughes & Kettner | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | モジュレーション系 | 「The Warmth」「Drive」などでロータリー(レスリー系)サウンドを作る用途として語られる。空間に“回転する空気”を足す。:contentReference[oaicite:10]{index=10} |
| DTR Rack Tuner | Korg | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | バッファー | ラックチューナーとして運用される定番枠。システム全体の信頼性確保(現場での管理)に寄与。 |
| Pedal Power(複数ユニット) | Voodoo Lab | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | パワーサプライ | 多段ボードの電源を安定化。ノイズ・トラブルを減らす“裏の主役”。 |
| Selector A/B Box | Whirlwind | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | スイッチングシステム | アンプ分岐や信号ルートの切替に使用。クリーン/ダーティの役割分担を現場で成立させる要。:contentReference[oaicite:11]{index=11} |
| Overdrive Expression Pedal | Ernie Ball | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | エクスプレッションペダル | ライブでクリーンアンプ用ドライブのブレンドに使用とされる。手元ではなく足元で“歪み量を演奏する”発想。 |
| EVH 5150 Overdrive | MXR | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | ライブでダーティアンプ専用として言及される。ノイズゲート内蔵で“現場運用の安定性”が高い。 |
⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Incubus・Mike Einziger】
Mike Einziger(マイク・アインジガー)風の音作りで、いちばん大事なのは「良い音を作る」より先に、“バンドの中でギターが担う役割”を決めることです。
Incubusのギターは、メロを引っ張るというより、歌とリズム隊の間に「動く床」を敷く仕事が多い。
だからこそ、歪みで前に出るより、クリーン土台の帯域設計と、フェイザー/フィルター/空間系で“存在感の出し方”をコントロールするのが近道になります。
基本の考え方はこうです。
①アンプ(またはアンプシミュ)側はクリーン〜クランチの“素材”を作る:低域を出しすぎず、ローMID(200〜350Hz付近)を太くしすぎない。
②歪みは「密度」より「輪郭」を出す:ゲインを上げるほどマイクらしさから離れやすい。
③モジュレーションやフィルターは“音量ではなく帯域が動く”ようにする:深くかけてもミックスで消えない設定に寄せる。
この順番を守るだけで、いきなり近づきます。
具体的なEQの作り方(会場/機材で変わる前提の例)を、PA/エンジニア目線で書くとこうです。
クリーン基調(「Wish You Were Here」「Drive」寄り)
・HPF(ローカット):80〜110Hzでカット。ローが出すぎるとベースとキックの“住処”を荒らします。
・ローMID(200〜350Hz):出しすぎるとモコつくので、必要なら-1〜-3dB程度の整理。
・MID(800Hz〜1.6kHz):ここが“ギターの言葉”です。バンド内で埋もれるなら+1〜+3dBで前に出す。
・プレゼンス(3〜4.5kHz):ピッキングの芯。出しすぎると耳が痛いので、+0〜+2dB程度で管理。
・ハイ(6〜8kHz):フェイザーやリバーブの“粒”が痛いなら軽く落とす。上げるより整える発想。
これで「薄いクリーン」じゃなく「芯のあるクリーン」が作れます。
クランチ〜軽い歪み(「Megalomaniac」「Nice To Know You」寄り)
・ゲインは“見た目の半分”が基準:歪ませるほどコードが濁ってIncubusの立体感が死にます。
・ローは締める:アンプ側のBassを上げるより、ローMIDを整理して“太く聞こえる錯覚”を作る。
・MIDは逃げない:ハムバッカーでもミッドを引っ込めない。ここが引っ込むと、フェイザーを深くかけた瞬間に音像が溶けます。
・歪みの前段にコンプを置く場合は、押しつぶしすぎない:アタックが死ぬとグルーヴが弱くなる。
この方向に寄せると、“歪んでるのに分離してる”Incubusっぽさが出ます。
曲ごとの使い分けは、「歪み量」より「動かす要素」で考えると再現性が上がります。
「Drive」系:クリーン土台+ロータリー/コーラスの揺れ+短めディレイ(または薄いリバーブ)で“回転する空気”。
「Wish You Were Here」系:ジャキッとしたアタックと分離感が命なので、空間系は薄く、フェイザーは基本オフ(入れるなら浅く遅く)。
「Vitamin」「Are You In」系:フェイザーやエンベロープで“帯域が動くグルーヴ”。このとき大事なのは、エフェクトの深さより、原音のMIDがちゃんと立っていること。
「Aqueous Transmission」系:ギターというより質感楽器。EQは“帯域を削って色を出す”方向(ローを切って中域の独特な鳴りを残す)に寄せます。
アンプのCH切り替え(またはアンプ2台の役割分担)の考え方も重要です。
マイク系の再現では、いきなり「クリーンCH」と「歪みCH」を作るより、
・A:完全クリーン(空間系が映える、レンジの土台)
・B:軽いクランチ(輪郭と押し出し、フィルターが暴れても芯が残る)
の2系統を作って、歪みはペダルで“必要な分だけ”足す運用がハマりやすいです。
フェイザーやリングモジュレーターは、歪みCHに入れると音像が破綻しやすいので、基本はクリーン寄りの土台で鳴らして「倍音の動き」を聴かせるのが安全です。
ミックス処理(録音/PA)での工夫は、Incubus再現の“最後の一手”です。
1) ダブルトラック/レイヤーの思想
マイクの音は、ギター単体の迫力より、重なったときの立体感が価値。左右で同じ音を作るより、片側を少し明るく、もう片側を少し太くして“ステレオで一つの音像”を作るとそれっぽい。
2) 空間系はリターンで管理
リバーブ/ディレイを深くしたいなら、インサートでベタ付けより、センド/リターンで戻り音をEQする。例えばリバーブのローを200Hz以下カット、ディレイの3kHz以上を少し落として“痛くない余韻”にする。
3) フェイザーは“広げる”より“動かす”
広がりを作る目的でコーラスを常時かけると、ミックスで濁る。マイクっぽさは、位相が動くことで生まれる“瞬間的な表情”なので、必要なセクションだけ大胆に動かすほうが近い。
4) HPFはギターにも容赦なく
ギターのローを残すほど太くなる…は半分ウソで、実際はベースとキックの邪魔をして結果的に薄く聞こえます。80〜120Hzは切る、必要なら150Hzまで整理して“ローMIDの言葉”を残す、が実務的です。
最後に、実演者目線の“事故らない”設定指針も置いておきます。
・フェイザー/フィルターは、バンドが鳴った瞬間に音量が落ちない設定にする(落ちるならMIDを戻すか、ブーストではなく帯域補正で対処)。
・歪みは「サステイン」ではなく「アタックが前に出る」方向に作る(ゲインよりトーンとMID)。
・ディレイはテンポ同期より先に“邪魔にならない音量”を決める(曲が速いほど薄く短く)。
こういう実務の積み重ねが、Incubusの“動くのにうるさくない”ギターを成立させます。
まとめると、マイク・アインジガー風の本質は「クリーン土台の帯域設計」+「動く倍音(フェイザー/フィルター)」+「空間系の戻り音を整えるミックス思考」です。
歪みで押すのではなく、音の“居場所”と“動き方”を設計することで、Incubusらしい立体的なギターが再現できる、と想定されます。
⑥比較的安価に音を近づける機材【Incubus・Mike Einziger】
マイク・アインジガー(Incubus)の音って、正直「同じ機材を揃える」より「同じ設計思想で組む」ほうが近づきます。
理由はシンプルで、彼のサウンドは“歪みそのもの”が主役じゃなく、クリーン土台にフェイザー/フィルター/空間系をレイヤーして、曲の表情を作っているから。
つまり、初心者〜中級者が狙うべきは、①クリーンが太く出る、②フェイザー/フィルターが気持ちよく動く、③空間系を薄く綺麗に足せる、の3点セットです。
ここでは「1万円〜5万円程度(上限10万円)」で、市販されていて入手しやすく、再現性が高い機材を“実務目線”で選びます。
ポイントは、レア機材(PH-2やRV-3、Gonkulatorなど)を無理に追うより、現行品で“役割を再現”すること。
マイクのボードは多段ですが、最初は「フェイザー+オクターブ(orフィルター)+ディレイ/リバーブ」の3〜4台で十分に雰囲気が出ます。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| フェイザー | Phase 95 | MXR | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | マイクの“動く倍音”の核はフェイザー。PH-2が理想でも入手難なので、現行で位相キャラを作りやすいPhase 95が再現性◎。深くかけるより「遅め・浅め」で帯域が動く感じを狙う。 | |
| フェイザー | Phase 90(Standard) | MXR | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 「Warning」等の方向性に寄せやすい。PH-2の“クセ”とは違うが、ミックスで消えない位相の動きが作れる。まず1台目のフェイザーとして現実解。 | |
| オクターブ | OC-5 Octave | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | OC-2が理想でも価格が上がりがち。OC-5は現行で追従が良く、薄く混ぜるだけで“ギターが薄くならない”Incubus感が出しやすい。コンプ後段・フェイザー前後で試すとハマる。 | |
| コンプレッサー | CS-3 Compression Sustainer | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 本人使用枠でもあり、安価再現でも優秀。押しつぶすより“素材の輪郭”を整える方向で、フェイザーやフィルターのノリが安定する。 | |
| ディレイ | DD-8 Digital Delay | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | RV-3が理想でも相場が上がりがちなので、現行で“邪魔にならない残響”を作れるDD-8が現実的。短めのディレイを薄く混ぜるだけで、Incubusの空気が出る。 | |
| リバーブ | RV-6 Reverb | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | “空間の骨組み”を作るならリバーブは必須。深くかけるより、短め・薄めで“部屋のサイズ”だけ足すとマイクの文脈に合う。 | |
| オートワウ・エンベロープフィルター | AW-3 Dynamic Wah | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | FX-25はヴィンテージで入手性が不安定なので、現行で“フィルターが踊る”要素を再現する代替。Vitamin系のニュアンスは、深さより“反応の速さ”で作る。 | |
| ワウペダル | Cry Baby 95Q | Dunlop | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 本人の定番枠でもあり、現行で入手しやすい。ソロで踏むというより“帯域を動かして発音を変える”フィルター用途がマイクっぽい。 | |
| イコライザー | GE-7 Equalizer | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | “ギターを前に出す”というより、“曲の空気に収める”ための実務機材。HPF代わりに100Hzを落とす、1.6kHzを少し足すなど、マイク的な帯域設計がやりやすい。 | |
| ギター用マルチエフェクター | ME-90 | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 初心者が最短で“Incubusの雰囲気”に入るならマルチは強い。クリーン土台+フェイザー+フィルター+ディレイ/リバーブを1台で試行錯誤でき、ボード設計の学習コストも下がる。 | |
| プリアンプ/アンプシミュレーター | IR-2 Amp & Cab | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | マイクはMesa/Marshall/Vox的な“土台”の作り分けが肝。アンプを買い替えずに土台を変えられるIR/アンプシムは再現性が高い。クリーン基調を作って、フェイザーと空間系で勝負できる。 |
安価再現の“組み方”も、短く実務的に置いておきます。
最小構成(まず雰囲気):フェイザー(Phase 95/90)+ディレイ(DD-8)+EQ(GE-7)
→これだけで「動く質感+空気+帯域設計」が揃い、Incubusっぽい立体感が出ます。
標準構成(かなり近い):上記+オクターブ(OC-5)+フィルター(AW-3)+コンプ(CS-3)
→“薄くならない”+“グルーヴが動く”+“イントロが決まる”が一気に揃います。
最後に大事な注意点。
マイクっぽさは「エフェクトを深くかける」ことじゃなく、
・原音のMIDが立っていて
・ローを整理していて
・動く帯域がボーカルの邪魔をしていない
という“配置のセンス”で決まります。
だから高い機材を一発で買うより、GE-7みたいな実務ツールで“置き方”を詰めるほうが、結果として近づきやすいです。
以上のように、現行で買える機材でも「クリーン土台+動く倍音+空間設計」を組めば、Incubus/マイク・アインジガー風のサウンドに十分寄せられる、と想定されます。
⑦総括まとめ【Incubus・Mike Einziger】
ここまでの話をまとめると、IncubusのMike Einziger(マイク・アインジガー)風サウンドは、機材の“高級さ”で成立しているのではなく、音の役割を設計する「思想」と「運用」で成立しています。
ギタリストあるあるで「同じMesaを買えば近づく」「同じフェイザーを揃えれば再現できる」と思いがちなんですが、マイクの場合はそこが罠。
なぜなら、彼のギターはバンドの主役を奪うためじゃなく、歌とリズム隊の間に“動く床”を敷いて、曲の空気をデザインするために鳴っているからです。
この音作りの本質を3つに圧縮すると、こうなります。
①クリーン土台の帯域設計(EQ思考)
ローは切って、ローMIDを太らせすぎず、MIDを逃がさない。これだけで、フェイザーやディレイをかけても音像が崩れにくくなります。
②“動く倍音”で存在感を作る(フェイザー/フィルター)
歪みで音量を上げるのではなく、位相やフィルターで帯域を動かして、聴感上の存在感を作る。PH-2を2台で併用する発想は、その象徴です。
③空間系は“戻り音”を管理する(ミックス目線)
リバーブ/ディレイは深くするより、邪魔にならない質感に整える。ローを削ったリターンを作る、短めに薄く混ぜる、これがIncubusの“うるさくない広さ”に直結します。
機材面で言うと、核になりやすいのは「クリーンに強いアンプ(またはアンプシム)」「フェイザー」「空間系」「帯域補正(EQ)」です。
マイク本人の文脈では、Mesa/Boogieのクリーン設定+ペダルで歪み補完、MarshallやVoxを補助的にブレンド、といった運用が語られやすい。
ギター側も、Music Man Albert Lee HHで弾きやすさとレンジを確保しつつ、JazzmasterやThinline Teleで曲の質感を作る——この“役割分担”がいかにも彼らしい構造です。
再現の手順としては、次の順番が最短です。
1) まずクリーンを作る(ローを切ってMIDを立てる)
2) 次にフェイザーで動かす(深さより「遅め・浅め」で帯域が動く感じ)
3) 最後にディレイ/リバーブを薄く足す(戻り音のローを整理する)
この順番を守ると、機材が完璧じゃなくても“Incubus感”が急に出ます。逆に、いきなり歪みを主役にすると、音は派手でもマイクっぽさから離れやすいです。
そして、マイクらしさを決定づける最後の視点は「曲の中での立ち位置」です。
例えば「Drive」系なら“回転する空気”が主役で、歪みは最小限。
「Vitamin」系なら、フィルターや位相で“グルーヴが動く”ことが主役で、音量はむしろ上げないほうがハマる。
このように、曲ごとに「何を主役にするか」を切り替えられると、もうかなりマイクに近い領域です。
読者への結論としては、こう言い切れます。
Mike Einziger風の音作りは、機材を“集める”より、音を“配置する”。
歪みで押すより、帯域で居場所を作り、位相で表情を動かし、空間系で奥行きを整える。
この3点ができれば、ギターもアンプも完全一致でなくても、Incubusのあの立体的で気持ち悪い(褒めてる)動きのあるギターに寄せられる、と想定されます。


