始めに(特徴紹介)
The Doors(ドアーズ)のギタリスト、Robby Krieger(ロビー・クリーガー)は、サイケデリックかつブルージーで独自の空気感を生み出すサウンドで知られています。彼のプレイスタイルは、ロックにフラメンコやジャズの要素を取り入れた唯一無二のアプローチです。
特に「Light My Fire」や「Spanish Caravan」などで聴けるサウンドは、ギターそのものの質感を活かしたクリーントーンとスライドプレイの美学が色濃く表れています。ジム・モリソンの歌とレイ・マンザレクのオルガンが中心にある編成の中で、Kriegerは自己主張しすぎず、それでいてバンド全体の色彩を決定づける重要な役割を担っていました。
彼の音作りのポイントは、派手なエフェクトを多用しないこと。60年代後半から70年代にかけてのギタリストとしては珍しく、基本はアンプ直でP-90やハムバッカーの生音をそのまま活かすスタイルを貫いていました。これにより、バンド全体のオルガン主体のサウンドに自然に溶け込みながらも、適度な存在感を放つトーンを実現していたのです。
一方で、ライブや楽曲によってはファズやワウを使い、サイケデリック・ロックならではの空気感を演出することもありました。特に「When the Music’s Over」などの長尺曲では、即興的なエフェクト操作によって観客をトランス状態に導いていたとも言われます。
Robby Kriegerのサウンドは、「ギター単体の派手さ」ではなく「アンサンブルの一部としての存在感」に重きを置いたものです。これは多くの現代ギタリストにも通じる考え方であり、シンプルな構成でいかに音楽的な幅を広げられるかという大きなヒントになります。
つまり、Kriegerの音作りを理解することは、The Doorsというバンド全体のサウンド哲学を理解することにつながります。これから紹介するアンプやギター、エフェクターの情報をもとに、あなた自身の環境でも彼の音に近づける工夫ができるでしょう。
使用アンプ一覧と特徴【The Doors・Robby Krieger】
Robby Kriegerのアンプ遍歴は、The Doorsのサウンド形成に大きな影響を与えました。彼は派手なアンプサウンドよりも、ギター本来のトーンを活かす方向性を好み、時代や環境に合わせて複数のアンプを使用しています。その特徴を時期ごとに整理すると、彼のサウンドの核心に近づくことができます。
デビュー初期(1966〜1967年)には、Magnatone製の2×12”コンボアンプが主力でした。Magnatoneはウォームで立体的な揺らぎを持つビブラート回路で知られ、The Doors初期のクラブや劇場での演奏において、オルガンと溶け合うような柔らかいサウンドを作り出していました。この特性が、Kriegerのナチュラルなクリーントーンを支えていたと言えます。
代表曲「Light My Fire」の録音時には、Fender Twin Reverbをレンタルして使用したと本人が証言しています。Twin Reverbはアメリカンロックの定番アンプで、クリーンのヘッドルームが広く、JBLスピーカーを搭載した個体では特にシャープで抜けの良いトーンが得られます。レコーディングではエフェクトを一切使わず、Twin Reverbのクリーンをそのまま活かすことで、The Doorsの透明感あるサウンドに貢献しました。
1968年以降になると、スポンサー契約によりAcoustic Control 260ヘッド+261キャビネット(2×15”)を導入。しかし、巨大かつソリッドステート特有の硬質な音色はThe Doorsの音楽性に合わず、バンドやKrieger自身から不評だったと言われています。その後、再びFender Twin Reverbや真空管アンプ系に戻った点からも、彼が求める音は「自然で温かいクリーン」であったことが伺えます。
また、1969年には、バンドの音響担当Vince Treanorが設計した巨大ソリッドステートリグ「Monolith」を一時的に使用しましたが、これも長くは続かず、最終的にはコンパクトなFender系に回帰しました。
近年ではFender Hot Rod DeVille(2×12”や4×10”)を常用しており、現代的なステージでも安定した出力とクリーンヘッドルームを確保しています。ジャズやブルースを感じさせる彼のフレーズに対し、余計な色付けをせず素直に鳴ってくれるアンプを選んでいるのが一貫した特徴です。
まとめると、Robby Kriegerのアンプ選びは「真空管アンプのナチュラルクリーンを基調にする」点で一貫しており、時期による変化はスポンサー契約や環境要因によるものでした。したがって、彼の音を再現するなら、Fender Twin ReverbやHot Rodシリーズのようにヘッドルームの広いアンプが最適、と想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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Magnatone 2×12” | Magnatone | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 初期のクラブ期で使用。ウォームで揺らぎあるクリーン。 |
Fender Twin Reverb | Fender | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 「Light My Fire」録音にレンタル使用。JBL換装でシャープなトーン。 |
Acoustic 260+261キャビ | Acoustic Control | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | スポンサー供給も、硬質すぎて不評で短期使用。 |
Fender Hot Rod DeVille | Fender | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 近年常用。ステージで安定したクリーンを確保。 |
Monolith(ソリッドステートリグ) | Vince Treanor設計 | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 1969年ツアー用に設計。短期間の試用。 |
使用ギターの種類と特徴【The Doors・Robby Krieger】
Robby Krieger(ロビー・クリーガー)のサウンドを語る上で、欠かせないのが多彩なギターコレクションです。The Doors時代から近年に至るまで、彼はGibson SGを中心に据えつつも、クラシックギターやES系、さらには個性的なNationalまで幅広く使用してきました。その選択は彼の音楽的背景――フラメンコやジャズの影響を受けた独自のスタイル――を強く反映しています。
初期の代表的なギターはGibson SG Special(1964/P-90/赤)です。「Light My Fire」をはじめとした初期2作品の録音やライブで確認されており、太く温かみのあるP-90ピックアップのサウンドが、オルガン主体のバンドサウンドに柔らかく馴染んでいました。この個体は盗難に遭ったとされ、その後はGibson SG Standard(1967/Maestro Vibrola搭載)を常用するようになります。この67年製は、後に公式シグネチャーモデルのベースとなった重要なギターです。
1968年頃からはGibson SG Standard(1968年製)やGibson SG Special(1967年製)もステージで併用し、SGを基盤としたスタイルを確立していきます。また、スライドプレイではGibson Les Paul Custom “Black Beauty”(1954年製)を用いたと証言されており、ブルージーで粘り気のあるトーンを聴かせています。
一方で、ジャズ寄りの表現ではGibson ES-355(1964/1967年製)を使用していた時期もあります。セミアコ特有の甘く広がるトーンが「Love Me Two Times」などで映えており、バンド全体の音の奥行きを支えています。さらに、初期にはNational ‘Town & Country’(1958年製)を使っており、「Break On Through」のプロモーション映像でも確認可能です。奇抜なデザインとシングルコイル特有の鋭い音色は、当時の彼の実験的な側面を象徴しています。
特に注目すべきは、フラメンコルーツを感じさせるJosé Ramírez クラシック/フラメンコ(1963年製)です。「Spanish Caravan」で聴けるスパニッシュギターの原点とも言える存在であり、その後もナイロン弦ギターを使い続ける基盤になりました。近年では、同曲をライブで演奏する際にRick Turner Renaissance(ナイロン)を愛用し、現代的なステージ仕様に適応させています。
さらにGibson Barney Kessel(1968年製)を使った逸話も残されており、ジャズテイストのコードワークを強調する場面での使用が想定されます。また1970年代半ばにはGibson SG Special(1975年製)も加わり、時代に応じて複数本を使い分けていました。2009年には、本人の67年製SGを基にしたGibson Robby Krieger Signature SGがリリースされ、近年のライブでもそのシグネチャーを使用する姿が見られます。
このように、Kriegerのギター遍歴は「SGを核としつつ、多彩なギターで楽曲の色を拡張する」スタイルで一貫しています。SGの力強い中域とクラシックギターの柔らかさを融合させることで、The Doorsの唯一無二のサウンドを形作ったと想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
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Gibson SG Special(1964) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 初期代表曲「Light My Fire」で使用。盗難に遭ったとされる。 |
Gibson SG Standard(1967) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 盗難後のメイン。Maestro Vibrola搭載。 |
Gibson SG Standard(1968) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 1968年以降のツアーで使用。 |
Gibson Les Paul Custom “Black Beauty”(1954) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | スライドプレイに使用されたとの証言あり。 |
Gibson ES-355(1964/1967) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | セミアコ | ジャズ寄りの楽曲で使用。 |
National ‘Town & Country’(1958) | National | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 初期に使用。「Break On Through」映像で確認可能。 |
José Ramírez クラシック/フラメンコ(1963) | José Ramírez | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | クラシック | 「Spanish Caravan」で使用。フラメンコルーツの象徴。 |
Rick Turner Renaissance(ナイロン) | Rick Turner | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ナイロン | 近年「Spanish Caravan」をライブで演奏時に使用。 |
Gibson Barney Kessel(1968) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | フルアコ | ジャズ的アプローチの場面で使用との逸話あり。 |
Gibson SG Special(1975) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 70年代中期に使用。メインSGの補強的役割。 |
Gibson Robby Krieger Signature SG(2009) | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ソリッド | 本人の67年SGを基にしたシグネチャー。近年のステージで愛用。 |
使用エフェクターとボード構成【The Doors・Robby Krieger】
Robby Kriegerの音作りは「基本的にアンプ直」で知られています。The Doorsの楽曲の多くはギターそのもののトーンとアンプのクリーン・ドライブ感で成立しており、派手なエフェクトを駆使するタイプではありません。しかし、サイケデリック・ロックというジャンル的な背景もあり、時折ファズやワウを使用して実験的なアプローチを見せてきました。特に60年代後半のライブやレコーディングでは、必要最小限のエフェクトで最大限の効果を引き出す姿勢が強調されています。
代表的な使用例として、1967年の「When the Music’s Over」ではMaestro Fuzz-Tone(Gibson製)を導入。これはローリング・ストーンズの「Satisfaction」で有名になった初期のファズペダルで、荒削りながらも強烈な質感をギターに与えました。当時のKriegerは、このファズを適度に混ぜることで、サイケデリックな音の壁を構築しています。
また、1960年代末から70年代初頭にかけてはワウペダル(Cry BabyやVox)を稀に使用していたと本人が回想しています。過度にワウを踏み込むのではなく、トーンを揺らす程度に軽くかける使い方が多く、リードラインにニュアンスを与える目的で取り入れられていました。近年のライブではDunlop Mini Cry Babyを常にボードに組み込み、コンパクトながら確実にワウサウンドを再現しています。
Kriegerが「最小限派」である一方、近年のステージではより実用的なボードを構築しています。具体的には、チューナーのBoss TU-2を起点に、ワウ、さらに「Love Her Madly」でコーラス効果を得るためのBoss CE-B(ベース用コーラス)を使用。そして、トレモロ表現ではBoss TR-2を導入し、「Riders on the Storm」や「Strange Days」で独特の揺らぎを生み出しています。
歪み系としては、ブルース色の強いソロやリードを強調するためにIbanez TS-808 Tube Screamer(オリジナルと復刻の2台を使用)をボードに並べており、軽いブーストとサスティンを付与しています。また、クリーンにアタック感を加える目的でXotic SP Compressorを使用し、さらにディレイにはTC Electronic Flashback DelayとBoss DD-7を組み合わせて立体的な空間を演出。特にDD-7はエクスプレッションペダルでMix量を可変できるようにセッティングされています。
興味深い点として、彼はかつてBoss ME-10というマルチエフェクターを使っていたことをインタビューで語っています。現在は生産終了していますが、マルチならではの多機能性を活かしつつ、必要最小限にセッティングしていたと考えられます。また、The Doors初期のアルバムではペダルではなく、スタジオのSunset Soundの実エコーチェンバーを多用し、ルームリバーブによる幻想的な響きをギターに加えていたことも有名です。
まとめると、Robby Kriegerのエフェクター使用は「限定的かつ効果的」であり、特定の場面でのみ導入することでバンド全体のサイケデリックな世界観を支えています。したがって、彼のボード構成を再現する際は、ワウ、軽いオーバードライブ、トレモロ、コーラス、そしてディレイを最小限に揃えることが近道、と想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
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Maestro Fuzz-Tone | Gibson | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ファズ | 「When the Music’s Over」で使用と紹介。 |
Dunlop Cry Baby / Mini Cry Baby | Dunlop | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ワウペダル | 60年代末に稀に使用。近年はMini Cry Babyを常備。 |
Boss ME-10 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ギター用マルチエフェクター | 本人インタビューで使用言及。現在は生産終了。 |
Boss TU-2 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | チューナー | 近年のボード起点として使用。 |
Boss CE-B | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | コーラス | 「Love Her Madly」でコーラス効果を演出。 |
Boss TR-2 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | トレモロ | 「Riders on the Storm」「Strange Days」で使用。 |
Ibanez TS-808 | Ibanez | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | オーバードライブ | ブルージーなリード強調に使用。復刻版とヴィンテージの2台を併用。 |
Xotic SP Compressor | Xotic | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | コンプレッサー | クリーンにアタック感を追加する目的。 |
TC Electronic Flashback Delay | TC Electronic | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ディレイ | 立体感のある空間演出に使用。 |
Boss DD-7 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | ディレイ | エクスプレッションでMix量を可変可能に設定。 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【The Doors・Robby Krieger】
Robby Kriegerの音作りは、複雑なセッティングというよりも「シンプルな構成でいかに幅を出すか」という点に特徴があります。彼は派手な歪みや過剰なエフェクトに頼らず、ギターとアンプ、そしてタッチのニュアンスで表情を生み出すスタイルを一貫していました。そのため、EQやアンプのセッティングは楽曲ごとにわずかな調整を行い、音楽的なニュアンスを最大限に引き出していたと考えられます。
アンプのEQセッティング
The Doorsの初期に使用されたMagnatoneやFender Twin Reverbでは、クリーンヘッドルームを活かすためにBassは5〜6、Middleは5前後、Trebleは6〜7程度に設定することが多かったと想定されます。とりわけTrebleを少し強めに設定することで、オルガンの中域に埋もれず、ギターのアタックが前に出るように工夫していました。Twin Reverb特有のリバーブ回路は控えめに使い、代わりにスタジオのエコーチェンバーで深みを加えるという手法も取られていました。
曲ごとの使い分け
「Light My Fire」では完全にクリーンなトーンを使い、ピックではなく指弾きで独特の柔らかいアタックを実現。これにより、フラメンコやジャズの影響を受けた独自のフレーズがより際立っています。
「Spanish Caravan」ではクラシックギターのナイロン弦を使い、アンプを通さないピュアな響きでスパニッシュな世界観を表現。「When the Music’s Over」や「The End」といった長尺曲では、ファズや軽いブーストを使い、ミドル寄りのトーンを強調してトランス的なサウンドを構築しました。
スライドプレイ時の工夫
Kriegerはスライドギターを積極的に取り入れており、その際はレスポンスの良いSGやレスポールを選び、アンプのTrebleを抑えめに設定して耳に痛くならないよう調整しています。さらに、コンプレッサーや軽いオーバードライブを併用することで、サスティンを確保していました。録音時にはマイク位置を工夫し、キャビ中央よりやや外側に配置することで滑らかなトーンを得ていたと考えられます。
ミックスでの工夫
The Doorsのレコーディングでは、スタジオ独自のSunset Soundのエコーチェンバーを積極的に使用していました。特に「Riders on the Storm」では、ギターにも自然なルームリバーブが付与され、全体のサイケデリックな雰囲気を補強しています。PAやエンジニア視点で見ると、Robbyのギターはバンド全体の中域にすっと馴染ませるように定位され、オルガンやボーカルを邪魔しない位置に配置されていました。
ライブでの調整
1968年以降のツアーでは、会場の規模拡大に伴ってアンプ出力を大きくせざるを得ず、Acoustic 260などのソリッドステートを試す場面もありましたが、結果的には「音が硬すぎる」と不評でした。そのため、EQで中域を下げ、低音と高音を補う調整が行われていた可能性があります。最終的に彼がFenderアンプに戻ったのは、自然なクリーンと温かみを優先した結果といえるでしょう。
再現のポイント
もし現代の環境でKriegerの音を再現するなら、アンプはFender系のクリーンを選び、EQはBass 5、Middle 4〜5、Treble 6〜7を基準に調整するのが近道です。そこに軽いコンプレッションと薄めのトレモロ/コーラスを加えると、「Riders on the Storm」的な幻想的な揺らぎを再現可能です。ディレイは深くかけすぎず、1〜2回のリピートに留めるのが彼の空気感を再現するコツです。
つまり、Robby Kriegerの音作りの本質は「アンプとタッチに依存したシンプルな基盤+必要最小限のエフェクト+空間処理」に集約されます。彼の音は過剰な装飾によるものではなく、ギターそのものとプレイスタイルの延長線上にあり、それを理解することが再現への第一歩、と想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【The Doors・Robby Krieger】
Robby Kriegerのサウンドを完全に再現するには、ヴィンテージのGibson SGやFender Twin Reverbといった高価な機材が必要になります。しかし、これらは数十万円から数百万円に達することが多く、初心者や趣味で再現したい人にとっては現実的ではありません。そこで、比較的安価で手に入りやすく、かつ彼の音色に近づけることができる代替機材を紹介します。価格帯は1〜5万円程度を目安にしています。
まずギターに関しては、エピフォン製のSGシリーズがおすすめです。Epiphone SG Standardは、Gibson SGに比べてかなり手頃な価格で購入可能ですが、マホガニーボディやダブルカッタウェイ構造を備えており、温かみのあるミドルと力強いサステインを実現します。Robby Kriegerの「Light My Fire」や「When the Music’s Over」で聴けるトーンの基盤を作るのに十分対応できます。さらに、P-90搭載モデル(Epiphone SG Special P-90など)を選ぶと、初期の1964年製SG Specialにより近いニュアンスを再現可能です。
アンプについては、Fender系のクリーントーンがカギとなります。高価なTwin Reverbの代わりとしてFender Champion 40やBoss Katana 50 MkIIを選ぶと良いでしょう。Champion 40はフェンダーらしいクリーントーンを手軽に得られるモデルで、自宅練習や小規模ライブに最適です。Boss Katanaはソリッドステートながら温かみのあるトーンが得られ、内蔵エフェクトでトレモロやリバーブも再現できます。
エフェクターについては、彼の使用歴を踏まえつつ、コストパフォーマンスの良いペダルを選ぶのが現実的です。ファズはBOSS FZ-5が手軽で、クラシックなMaestro Fuzz-Toneを意識したサウンドが出せます。ワウはDunlop Cry Baby Standardが定番で、ミニサイズのモデルも選択可能。オーバードライブはIbanez TS-9がTS-808の廉価版として最適で、ブルージーなトーンを得られます。さらに空間系ではBOSS TR-2 トレモロやBOSS DD-3T ディレイを導入すると、「Riders on the Storm」や「Strange Days」の揺らぎが再現できます。
コンプレッサーやブースターについては必須ではありませんが、表現力を補う意味でXotic SP Compressorの代替としてBOSS CS-3 コンプレッサーを導入すれば、アタック感を強調できます。これにより、Robbyが指弾きで生み出す独特のアタックに近づけることが可能です。
まとめると、Epiphone SG(特にP-90モデル)、Fender ChampionやBoss Katanaなどのアンプ、そしてBOSSやIbanezの定番ペダルを組み合わせることで、10万円未満でもKriegerの雰囲気にかなり近づけることができます。重要なのは「派手な歪みではなく、クリーンを基調にした揺らぎとニュアンス」であることを意識する点です。これを踏まえて機材を選べば、The Doorsの空気感を再現するのは十分可能です。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
ギター | Epiphone SG Standard | Epiphone | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | SG系の廉価版。マホガニーボディで暖かいトーン。 |
ギター | Epiphone SG Special P-90 | Epiphone | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | P-90搭載で初期SG Specialのニュアンスを再現可能。 |
アンプ | Fender Champion 40 | Fender | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 手頃な価格でFender系クリーンが得られる。 |
アンプ | BOSS Katana 50 MkII | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 多機能ソリッドステート。内蔵エフェクトで揺らぎ系再現も可能。 |
ファズ | BOSS FZ-5 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | クラシックファズを再現。Maestro Fuzz-Toneの代替。 |
ワウペダル | Dunlop Cry Baby | Dunlop | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 定番ワウ。Miniサイズも選択可能。 |
オーバードライブ | Ibanez TS-9 | Ibanez | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | TS-808の廉価版。ブルージーで温かみのある歪み。 |
トレモロ | BOSS TR-2 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | 「Riders on the Storm」的な揺らぎを再現可能。 |
ディレイ | BOSS DD-3T | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | シンプルなディレイ。DD-7の廉価版として最適。 |
コンプレッサー | BOSS CS-3 | BOSS | Amazonで探す | The Doors | Robby Krieger | Xotic SP Compressorの代替。指弾きのアタックを補強。 |
総括まとめ【The Doors・Robby Krieger】

Robby Kriegerの音作りを振り返ると、その本質は「シンプルでナチュラルなトーンを最大限に活かすこと」にあります。彼はThe Doorsという独特な編成――ボーカル、オルガン、ドラム、ギター――の中で、派手に自己主張するのではなく、楽曲全体の雰囲気を形作る「色彩担当」として存在していました。そのため、ギターサウンドはクリーン基調でありながらも、時にファズやワウを用いてサイケデリックな質感を付与し、曲の世界観を広げる役割を果たしていました。
ギターは主にGibson SGを軸にしつつ、クラシックギターやESシリーズ、さらにはNationalといった異色のモデルまで取り入れ、場面ごとに音色を使い分けていました。特に「Spanish Caravan」に代表されるフラメンコ的なアプローチは、彼のクラシックギターの背景が色濃く反映されたもので、ロックギタリストとして非常にユニークな存在となっています。アンプもFender Twin ReverbやMagnatoneといったクリーンヘッドルームの広い機材を好み、最終的には「自然な音が一番」という姿勢に立ち返るのが印象的です。
また、EQやセッティング面では、「オルガンと共存するための調整」が常に念頭に置かれていました。中域が強すぎればオルガンに埋もれ、高域が弱ければ存在感が失われる。その絶妙なバランスを、TrebleやMiddleの微調整、指弾きのタッチ、スタジオのエコーチェンバーといった工夫で実現していたのです。この点は、現代のギタリストにとっても大きな学びとなります。
再現の観点から言えば、Epiphone SGとFender系のアンプを組み合わせ、ワウ、軽いオーバードライブ、トレモロ、ディレイといった最低限のエフェクトを導入することで、比較的安価にKriegerのサウンドに近づけます。ただし、最も重要なのは「機材そのもの」ではなく「奏法と音楽性」。ピックではなく指で弾き、ブルースやジャズ、フラメンコからの影響を意識することで、彼らしいニュアンスが生まれます。
総じて、Robby Kriegerの音作りの本質は「引き算の美学」にあります。余計なものを足さず、必要な音だけをバンドに供給することで、The Doorsという唯一無二の音楽世界を成立させたのです。その姿勢は、現代のギタリストが音作りを考える際にも大いに参考になるでしょう。機材に頼る前に「どう鳴らすか」「どう楽曲に溶け込むか」を考える――それこそがRobby Krieger流のサウンド哲学と言えます。
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下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
🎸ギター
• Gibson SG Special(1964/P-90/赤)— 初期2作や“Light My Fire”で使用。のちに盗難。Twin Reverbをレンタルして録音(エフェクトなし)。
• Gibson SG Standard(1967/Maestro Vibrola/現行シグネチャーのベース)— 初期個体を盗難後、’67を常用。
• Gibson SG Standard(1968)— 1968年以降のツアー期に使用。
• Gibson SG Special(1967)
• Gibson Les Paul Custom “Black Beauty”(1954)— スライドで使用の証言あり。
• Gibson ES-355(1964/1967)— 併用歴。※66/67年個体の具体名はインタビュー由来。
• National ‘Town & Country’(1958)— 初期に使用。Break On Throughプロモでも確認。近年イベントで再登場。
• José Ramírez クラシック/フラメンコ(1963)— “Spanish Caravan”系での原点ギター。
• Rick Turner Renaissance(ナイロン)— “Spanish Caravan”を近年ライブで演奏時に使用。
• Gibson Barney Kessel(1968)— 本人が逸話紹介。
• Gibson SG Special(1975)
• Gibson Robby Krieger Signature SG(2009)— 自身の’67 SGを基にしたシグネチャー。
• Black Gibson SG Standard
🔊アンプ
• Magnatone(2×12”)— Doors初期のメイン。
• Acoustic Control 260ヘッド+261 2×15”キャビ(1968ごろ)— スポンサー供給→のち不評で撤収。
• Fender Twin Reverb(JBL載せ換え・Vince Treanor改造/ライブ&録音)— “Light My Fire”ではTwin Reverbをレンタル使用。
• Fender Hot Rod DeVille(2×12”または4×10”)— 近年の常用。
• Jordan(ソリッドステート/1967中期に短期間)
• “Monolith”(Vince Treanor設計のソリッドステート大規模リグ/1969)
🎛️エフェクター
• Maestro Fuzz-Tone(Gibson)— “When the Music’s Over”(1967)で使用と紹介。
• Wah(Dunlop Cry Baby ほか)— 近年はDunlop Mini Cry Babyをボードに常備。60年代末にCry Baby/Vox系を“まれに使用”との回想も。
• Boss ME-10 マルチ— 本人インタビューで使用言及(現在は生産終了)。
• 近年のボード(例)— Boss TU-2、Dunlop Mini Cry Baby、Boss CE-B(“Love Her Madly”用コーラス)、Boss TR-2(“Riders on the Storm”“Strange Days”ほか)、Ibanez TS-808(ヴィンテージ&復刻の2台)、Xotic SP Compressor(クリーンブースト)、TC Electronic Flashback Delay、Boss DD-7(EXPでMix可変)。
• 参考(スタジオ処理)— 初期アルバムではSunset Soundの実エコーチェンバーを多用(ペダルでなくルーム・エコー)。
• ※補足:“Light My Fire”録音時はエフェクトなし。
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