始めに(特徴紹介)
MONGOL800のギタリスト・儀間崇(ぎまたかし)氏は、その朴訥としたアンサンブルと抜群のグルーヴ感を武器に、20年以上にわたってバンドの屋台骨を支えてきた存在です。
彼のギターサウンドは、初期のDIY精神溢れるロックサウンドから、現在のタイトでエモーショナルなアンサンブル志向へと変遷を見せており、特に2000年代前半の「小さな恋のうた」や「あなたに」に見られるストレートなクランチトーンは、青春パンクの象徴として多くのギタリストに模倣されました。
一方で近年の儀間氏のプレイには、メロウなクリーンバッキングやトリッキーなノイズ系フレーズも随所に登場し、特にライブアレンジでは音数を絞ったカッティングや広がりのあるリバーブ処理など、アンサンブル重視の現場的な音作りに重点が置かれていることが分かります。
ギター機材も、初期のFender USA StratocasterやBacchus製のストラトタイプから、現在ではSadowsky Metroline R1hを中心とした構成に移行。
また、プリアンプにCastomaudioJapanの3+SE 3chを使用するなど、実は通好みな構成を選択している点も見逃せません。 「シンプルなロックサウンド」と思われがちなMONGOL800ですが、儀間氏の音作りは「余白とバンド全体のバランス感覚」を意識した、非常に戦略的なサウンドアプローチといえます。
このシリーズでは、そんな儀間崇氏の使用機材とそのサウンドの特徴、具体的な音作りのセッティング方法をセクションごとに解説していきます。 初心者からプロ志向のプレイヤーまで、儀間サウンドを再現したい方の参考になるよう、徹底的に掘り下げていきます。
使用アンプ一覧と特徴【MONGOL800・儀間崇】
MONGOL800の儀間崇氏のアンプ構成は、パンクやメロコア系にありがちなシンプルなスタックアンプではなく、プリアンプとパワーアンプ、そしてキャビネットを組み合わせたハイエンド志向なシステムで構成されています。
まず、プリアンプにはCastomaudioJapan 3+SE 3chが使用されています。この機材は、かつてのSoldano SLO-100の流れを汲むようなサウンド設計で、3チャンネル仕様により、クリーン・クランチ・リードまで幅広いトーンを即座に切り替えることが可能です。儀間氏のように楽曲ごとにバッキングとリードトーンを切り替えるタイプのプレイヤーにとって、非常に実用的な選択といえるでしょう。
パワーアンプにはVHT 2902を使用。これはチューブパワーアンプの中でも定評のあるモデルで、非常に高いヘッドルームと解像度を持つのが特徴です。ハイゲイン用途においてもローエンドが潰れず、ライブや大音量環境でも破綻のない再生が可能となります。
スピーカーキャビネットにはMESABOOGIE LONE STAR BLACK DESIGNS 4×12を採用。クラシックなブラックトーレックス仕上げのルックスながら、中域に太さがあり、存在感のあるバッキングサウンドを支えています。
また、明確な証拠はないものの、サブや練習用途としてはJC-120やFender Twin Reverbなどのクリーン系アンプを使用している可能性もあります。特に儀間氏のクリーンサウンドには、カチッとした輪郭とナチュラルな空気感があるため、これらのアンプの使用が想定されます。
彼のアンプセッティングは、派手さよりも「使いやすさ」と「ライブの安定性」を重視していることが伺えます。ライブではギターの音が埋もれやすくなる場面でも、しっかりとバンドアンサンブルの中で抜けてくるチューニングが施されており、現場での信頼性が感じられます。
使用ギターの種類と特徴【MONGOL800・儀間崇】

儀間崇氏のギター遍歴は、MONGOL800の音楽的成長とリンクするように、時代と共に変化してきました。
初期の時代に愛用されていたのが、Fender USA Stratocasterです。ストレートなシングルコイルのトーンは、デビューアルバム『MESSAGE』や「小さな恋のうた」に代表されるパンキッシュなサウンドと非常に相性が良く、青臭くも切実なアンサンブルを引き立てていました。
また、同時期にはサブギターとして、国産ブランドのBacchus製ストラトキャスタータイプ、BST-370も使用。これはコストパフォーマンスに優れ、取り回しのしやすさと音の抜けの良さを兼ね備えたモデルで、ライブでのトラブル回避や屋外フェスでの信頼性を重視した選択と考えられます。
近年、儀間氏の主力となっているのがSadowsky Metroline R1h 3 Tone Burstです。NY発の高級ギターブランドSadowskyのメトロラインシリーズは、ハイエンドでありながらプレイヤー目線のチューニングがされており、特にR1hはフロントにハムバッカーを搭載した仕様で、より太くウォームなトーンを得られるのが特徴です。ライブ映像やSNSの投稿でも頻繁に登場しており、現在のメインギターであることは間違いありません。
サブギターとしては、引き続きストラトキャスター系を愛用しており、Fender Stratocasterや、より切れ味のあるカッティングに向いたFender Telecasterも登場しています。特にテレキャスターは、バンド後期のミディアムテンポな楽曲や、沖縄音階を用いたアンサンブルなどで使用される傾向があり、音の抜けやアタック感が求められる場面での使用が想定されます。
このように、儀間氏のギター選びは「音楽性に対する柔軟性」と「現場での再現性」のバランスを保っており、ジャンルや演奏環境に応じて適材適所でギターを選択しています。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
USA Stratocaster | Fender | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ストラトキャスター | 初期〜中期までのメイン。代表曲で多数使用。 |
BST-370 | Bacchus | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ストラトキャスタータイプ | 初期のサブ。コスパ重視、ライブ用途。 |
Metroline R1h 3 Tone Burst | Sadowsky | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ハイブリッドストラト | 現在のメイン。太いトーンでモダンなサウンド構築。 |
Stratocaster | Fender | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ストラトキャスター | 現在のサブ。多用途に対応。 |
Telecaster | Fender | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | テレキャスター | クリーンカッティング用途に使用。抜け重視。 |
使用エフェクターとボード構成【MONGOL800・儀間崇】
儀間崇氏のエフェクターボード構成は、ライブ向けの堅牢性と、音作りの柔軟性を両立したシンプルかつ実用的な内容です。公式なペダルボード写真や本人のインタビューは少ないものの、ライブ映像やネット上の機材レビュー記事から、その一端を読み取ることができます。
まず、歪みセクションに関しては、BOSS BD-2(Blues Driver)やIbanez TS9といった王道のオーバードライブを使用していると推測されます。特にBD-2は、Fender系アンプとの相性が良く、儀間氏が使用するStratocasterともマッチするため、ライブ映像でも非常に自然なドライブサウンドが聴かれます。
また、しばしばProco RAT系の中域が強い歪みを使っている可能性も取り上げられています。「あなたに」「DON’T WORRY BE HAPPY」などのナンバーでは、ややザラつきのあるディストーションサウンドが特徴的であり、この種のペダルが導入されていた可能性は高いです。
空間系については、BOSS DD-7(デジタルディレイ)や、RV-6(リバーブ)といったBOSS製品の使用が濃厚です。特にライブでは、曲のニュアンスに応じて適度な残響や奥行きを与えることで、3ピースバンドの音像に厚みを持たせることが求められるため、儀間氏のプレイスタイルと合致します。
モジュレーション系では、BOSS CH-1(コーラス)や、軽いトレモロ系の揺れを加えることもあると考えられます。特に中期〜後期の楽曲において、儀間氏のギターがバンド全体の空気感を司っているパートでは、このようなエフェクトが巧みに使用されています。
コンプレッサーは定番のMXR Dyna Compが候補に挙がります。ピッキングニュアンスの整えや、アルペジオ時の粒立ちのコントロールなど、補佐的役割を果たしていると考えられます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
BD-2 Blues Driver | BOSS | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | オーバードライブ | Fender系と相性が良く、初期楽曲のクランチサウンドに適している。 |
TS9 | Ibanez | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | オーバードライブ | 中域が強く、ザラっとしたディストーション的な使い方も。 |
RAT2 | Proco | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ディストーション | 「あなたに」などのやや粗めな歪みに対応。 |
DD-7 | BOSS | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | ディレイ | ライブでの奥行き感演出に有効な定番デジタルディレイ。 |
RV-6 | BOSS | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | リバーブ | パッド的な残響感の付加。空間系に広がりを与える。 |
CH-1 | BOSS | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | コーラス | アルペジオ時の奥行きや立体感を追加。 |
Dyna Comp | MXR | 検索リンク | MONGOL800 | 儀間崇 | コンプレッサー | ピッキングを整えたり、カッティングのアタック感を安定化。 |
以上のように、儀間崇氏のボード構成は、過剰なエフェクトの使用を避けつつも、「必要な音像を正確に作る」ことを目的とした、非常に理にかなった選択となっています。
また、ルーパーやスイッチャーの導入は現時点で明確な情報はありませんが、ライブのMCや曲間の処理が極めてナチュラルであることから、最低限のオートスイッチングやプリアンプ・CHの切り替えはフットスイッチによって行っていると考えられます。
BOSS系の定番ペダルで構成されている点は、全国規模でのライブツアーや急な機材トラブルにも強く、まさに“現場対応力”を重視した機材選定といえます。
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【MONGOL800・儀間崇】

MONGOL800のギタリスト・儀間崇氏の音作りは、機材の選定だけでなく、「楽曲の空気感を支えるバランサー」としての役割を果たすためのチューニングが細かく施されています。 3ピースバンドという構成上、ギターの持つ役割は大きく、ボーカルとの共存、ベースとの共鳴、ドラムとの間合いなど、あらゆるバランスを保つ工夫が必要です。
そのなかでも、特に注目すべきはEQ(イコライザー)処理と音域のセレクトです。 儀間氏のサウンドは、ローエンドを抑え気味にしながら、ミッド〜ハイミッドにフォーカスされたセッティングが特徴的です。
例えば、ライブでの設定では以下のような方向性が想定されます:
- Low:8〜9時方向(絞り気味でベース帯域と分離)
- Mid:12〜2時方向(中域の存在感を確保)
- High:1時前後(バンド全体の抜け感を調整)
アンプのチャンネルセレクターでは、CastomaudioJapan 3+SEのCH2〜CH3を曲によって使い分けていると見られます。 CH2はクランチトーン、CH3はよりディストーション寄りの設定で、「あなたに」のようなエモーショナルな展開曲ではCH3が選択されている可能性が高いです。
エフェクトセクションでは、DD-7などのディレイは「リズムに寄り添う」設定で、ほとんどスラップバックに近いショートディレイが選ばれる傾向があります。 テンポシンクはせず、自然な残響として利用されるケースが多く、これは彼の「空間を埋めない勇気」の表れとも言えるでしょう。
コンプレッサーに関しては、MXR Dyna Compを用いて「カッティングの粒を揃える」「アルペジオの音量を均す」ための使い方が中心。 強いサステインよりは、発音の安定性にフォーカスされたセッティングが想定されます。
さらに、ミックスやPA処理の面でも特筆すべき点があります。 儀間氏のギターは、左右への定位よりも中央寄りでミックスされることが多く、これはボーカルとの一体感を重視した設計です。 特にクリーンパートやアルペジオでは、リバーブやディレイが適度に付加され、アンサンブル全体の「間」を演出する役割を担っています。
レコーディングにおいては、マイク取りよりもライン録音やリアンプ処理を行う可能性もあり、パワーアンプの出音を忠実に再現するような空間作りが行われていると推測されます。
なお、スタジオ音源とライブ音源ではセッティングが大きく異なることもあり、ライブではやや中域を抑え、ハイを上げた“抜け優先”のトーンが使われる傾向が見られます。
まとめると、儀間氏の音作りは「目立たせるのではなく、必要な音域をきちんと埋める」ことに徹しており、そのためのEQ、エフェクト、アンプCHの切り替え、ミックスでの処理が非常に緻密に組み立てられているのです。
比較的安価に音を近づける機材【MONGOL800・儀間崇】
儀間崇氏のサウンドを簡単に模倣するために、手軽に手に入る機材を紹介します。特に初心者向けとして、以下の機材はコストパフォーマンスが良く、サウンドの基本的な要素を把握するのに役立ちます。
総括まとめ【MONGOL800・儀間崇】

儀間崇氏のギターサウンドを一言で表すならば、「自己主張を控えた存在感のある音」。それは決して派手ではないけれど、常にバンド全体の音像の中でしっかりと“そこにある”ことを意識した、職人的な音作りに他なりません。
彼のサウンドの本質は、ハイゲインな破壊力ではなく、中域に焦点を当てた「輪郭の明瞭なクランチ〜クリーン」にあります。Fender系のシングルコイルと高品位なプリアンプ/パワーアンプの組み合わせ、加えて必要最小限の空間系・歪み系ペダルのみで構成されるシンプルなシステムからは、「必要なものを必要なだけ使う」プロフェッショナルとしての矜持が感じられます。
また、ギター自体も、ストラトキャスターに固執することなく、テレキャスターやSadowskyのようなモダンモデルも積極的に取り入れており、演奏する楽曲に対して“最適解”を選ぶ姿勢が強く見られます。つまり、彼にとってギターやエフェクターは「自己表現のための道具」というよりは「楽曲を引き立てるためのツール」であり、そこには職人肌の信念が根付いています。
若手ギタリストが儀間氏のサウンドをコピーする際に忘れてはならないのは、“音色”よりも“意図”を汲み取ること。音数を増やすことではなく、「音を置くべきところに置く」というシンプルさと確実さ。MONGOL800というバンドがもつプリミティブなメッセージ性を支えるギターとして、儀間氏のプレイは常に“バンド全体を成立させる”ことを最優先に設計されています。
だからこそ、ギター単体で聴くとシンプルでも、バンド全体のサウンドに耳を傾けたとき、その存在感が一気に浮き彫りになるのです。まさに、空間を読む力・引き算の美学を体現したギタリストと言えるでしょう。
この記事を通じて、儀間崇氏のサウンドに憧れるプレイヤーが、ただの「音色コピー」にとどまらず、「アンサンブルの中でギターがどう振る舞うべきか」を深く理解するきっかけとなれば幸いです。
今後もMONGOL800の進化と共に変化する儀間氏のギターサウンドから、目と耳が離せません。
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