【常田大希】King Gnu風サウンドの作り方＋ギター機材音作りセッティングのまとめ【エフェクター・アンプ】

始めに（特徴紹介）

King Gnuの常田大希（つねだだいき）は、現代の日本ロックシーンにおいて最も注目されるギタリストの一人として君臨している。彼のサウンドは、クラシックロックの王道を基調としながらも、現代的なアプローチとプロダクションセンスが見事に融合した、独特の音響世界を構築している。

常田のギタートーンの最大の特徴は、その「温かみのあるヴィンテージ感」と「現代的なクリアネス」の絶妙なバランスにある。特に代表曲「白日」では、イントロから響く美しいクリーントーンが印象的で、Marshall系のアンプヘッドから生み出される自然な音圧感とFenderテレキャスターの特有の鋭さが見事に調和している。この音色は多くのギタリストが憧れる「理想的なロックサウンド」として認識されており、楽器店でも「常田サウンド」を目指す若いプレイヤーが後を絶たない。

「Teenager Forever」や「飛行艇」といった楽曲では、よりアグレッシブなディストーションサウンドを披露しており、ここでも彼の音作りのこだわりが顕著に現れている。単純にゲインを上げるのではなく、ミッドレンジを効かせた太いサウンドでありながら、各音が明瞭に聞こえる絶妙なバランス感覚は、長年の経験と機材選びのセンスの賜物といえるだろう。

また、常田のプレイスタイルは技術的な完成度の高さと音楽的な表現力を両立させている点でも評価が高い。リフメイカーとしての才能と、バンドアンサンブルの中での役割を熟知したアレンジ能力により、King Gnuというバンドサウンドの核となる存在感を発揮している。彼の機材選びとセッティングは、このような音楽的なヴィジョンを実現するための手段として、非常に計算されたものとなっている。

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使用アンプ一覧と特徴【King Gnu・常田大希】

常田大希のアンプ選びは、King Gnuの楽曲における多彩な音色変化に対応できる柔軟性と、ライブでの迫力あるサウンドを両立させることを重視している。彼のメインアンプとして最も頻繁に使用されているのがMarshall JCM800シリーズで、特にJCM800 2203（100Wヘッド）は彼のサウンドメイキングの中核を担っている。

JCM800の選択理由は、その独特のミッドレンジの太さと、クリーンからクランチ、ハイゲインまでの幅広いダイナミクスレンジにある。「白日」のようなバラード系楽曲では、JCM800のクリーンチャンネルにリバーブを効かせることで、温かみのある美しいトーンを実現している。一方、「飛行艇」のような激しい楽曲では、同じアンプのオーバードライブチャンネルを使用し、力強いディストーションサウンドを生み出している。

スタジオレコーディングでは、Fender系のアンプも併用することが確認されている。特にFender Twin Reverbは、そのクリアで煌びやかなクリーントーンが重宝されており、アルペジオ系のフレーズや、繊細な表現が求められる楽曲パートで使用されている。Twin Reverbの特徴である豊かなリバーブと、高域の美しい伸びは、常田の感情的な演奏表現を際立たせる重要な要素となっている。

ライブ演奏においては、会場の規模とPA環境に応じてアンプの組み合わせを調整している。大型会場では複数のアンプヘッドを使用し、それぞれ異なるセッティングを施すことで、楽曲中の音色変化をスムーズに行っている。この際、足元のスイッチングシステムによって瞬時にアンプの切り替えが可能になるよう、細心の注意を払ってセッティングされている。

使用ギターの種類と特徴【King Gnu・常田大希】

常田大希のギター選びは、King Gnuの多様な楽曲スタイルに対応するため、非常に戦略的に行われている。彼のメインギターとして最も使用頻度が高いのが、Fender Telecasterシリーズである。特に、ヴィンテージスタイルのTelecasterを愛用しており、その鋭いアタックと明瞭な音抜けは、バンドアンサンブルの中でギターの存在感を際立たせる重要な要素となっている。

Telecasterの選択理由は、その特有のブライトで切れ味鋭いトーンがKing Gnuの楽曲に非常に適しているからだ。「白日」のイントロで聞かれる美しいアルペジオは、Telecasterのフロントピックアップによる温かみのあるトーンで演奏されており、楽曲の印象的な導入部を形作っている。また、リアピックアップに切り替えることで得られる鋭いカッティングトーンは、リズムギターパートにおいて重要な役割を果たしている。

サブギターとして、Gibson Les Paulも頻繁に使用されている。Les Paulの太くて甘いトーンは、バラード系楽曲のソロパートや、よりメロディアスな表現が求められる場面で重宝されている。「Teenager Forever」のようなミドルテンポの楽曲では、Les Paulのハムバッキングピックアップによる太いサスティーンが、楽曲の重厚感を演出している。

ライブ演奏では、楽曲ごとにギターを使い分けることで、音色の変化を明確に表現している。特に大型ライブでは、複数のギターをスタンドに準備し、曲間でスムーズに持ち替えることで、各楽曲の世界観を音色面からもサポートしている。この際、チューニングの安定性とステージでの取り回しやすさも重要な要素として考慮されている。

また、スタジオレコーディングにおいては、楽曲の要求に応じてより幅広いギターを使用している。Fender Stratocasterも使用されており、その5ポジションピックアップセレクターによる多彩な音色バリエーションが、アレンジの幅を広げている。ハーフトーンポジションでのカッティングトーンは、ファンクやR&B的なアプローチが求められる楽曲で効果的に使用されている。

ギター選びにおいて常田が重視しているのは、単純なブランドや価格ではなく、楽曲に対するフィット感と演奏性である。そのため、同じモデルでも個体差を考慮し、実際に弾き込んで選択している。この姿勢は、彼の音楽に対する真摯な取り組みを表しており、結果として説得力のあるサウンドメイキングにつながっている。

使用エフェクターとボード構成【King Gnu・常田大希】

常田大希のエフェクターボード構成は、King Gnuの楽曲における多彩な音色変化と、ライブパフォーマンスでの確実な操作性を両立させるため、慎重に選択されたペダルで構成されている。彼のエフェクターボードの特徴は、シンプルでありながら効果的な機材選択と、それぞれのエフェクターの特性を最大限に活かしたセッティングにある。

オーバードライブ系エフェクターとして、Ibanez Tube Screamerが常田のボードには欠かせない存在となっている。特にTS808は、Marshall JCM800との組み合わせで使用され、アンプの自然なオーバードライブをさらに押し上げる「ブースター」的な役割を果たしている。「飛行艇」のような楽曲では、このセッティングによって得られる力強いミッドレンジが、楽曲の迫力を支えている。Tube Screamerの設定は、Driveを控えめにし、Levelを上げることで、音色を大きく変えることなく音圧とサスティーンを向上させている。

ディストーション系では、Pro Co RAT 2が重要な役割を担っている。RATの特徴である粗削りで攻撃的なディストーションは、よりヘヴィな楽曲パートで効果的に使用されている。常田のRATセッティングは、Distortionを中程度に設定し、Filterを使って高域をコントロールすることで、バンドアンサンブルに埋もれない存在感のあるディストーションサウンドを実現している。

モジュレーション系エフェクターでは、Boss CE-2 Chorusが頻繁に使用されている。特に「白日」のような楽曲では、このコーラスエフェクトによって得られる美しい広がりと奥行きが、楽曲の情感豊かな表現に貢献している。CE-2の設定は、Rateを遅めにし、Depthを適度に効かせることで、自然で上品なコーラス効果を得ている。

ディレイエフェクターは、Boss DD-3 Digital Delayがメインで使用されている。常田のディレイ使用法は、単純なエコー効果だけでなく、リズミカルなディレイタイムを設定することで、楽曲に新たなグルーヴ感を与えている。「Teenager Forever」では、8分音符や16分音符に設定されたディレイが、楽曲の躍動感を演出している。また、フィードバックを高めに設定することで、ソロパートでの壮大な空間表現も可能にしている。

リバーブ系では、Strymon Flintが使用されており、その美しいスプリングリバーブとハーモニックトレモロが、楽曲に独特の味わいを与えている。特にバラード系楽曲では、Flintのヴィンテージライクなリバーブが、ノスタルジックで温かみのある音空間を創出している。

ワウペダルとしては、Dunlop Crybaby GCB-95が使用されており、ファンキーなリフやソロパートでの表現力向上に寄与している。常田のワウ使用法は、完全にワウを効かせるのではなく、中間的なポジションでのフィルター効果を活用することで、独特のトーン変化を得ている。

エフェクターボードの電源供給には、安定性を重視してVoodoo Lab Pedal Power 2 Plusが使用されている。ライブでの確実な動作と、ノイズの少ないクリーンな電源供給により、エフェクターの性能を最大限に引き出している。

ボード構成における信号の流れは、ギター → ワウ → コンプレッサー → オーバードライブ → ディストーション → コーラス → ディレイ → リバーブ → アンプという順序で接続されている。この順序により、各エフェクターの特性が最も効果的に発揮されるよう配慮されている。

音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【King Gnu・常田大希】

常田大希の音作りにおいて最も重要な要素は、楽曲全体のアレンジメントとバンドアンサンブルの中でのギターの役割を明確に定義することから始まっている。彼のEQセッティングは、単純に「良い音」を追求するのではなく、King Gnuという4人編成バンドの中でギターが果たすべき周波数帯域と音圧レベルを戦略的に設計している点で非常に洗練されている。

Marshall JCM800でのベーシックなEQセッティングでは、Bass（低域）を6-7、Middle（中域）を7-8、Treble（高域）を5-6程度に設定している。この設定の特徴は、中域を強調することでギターの存在感を確保しながら、低域と高域のバランスを適切に保つことにある。「白日」のような楽曲では、このベーシックセッティングをベースに、楽曲のダイナミクスに応じてPresence（プレゼンス）を3-4に調整し、高域の鋭さをコントロールしている。

クリーントーンでのセッティングでは、アンプのEQに加えてエフェクターでの音色調整が重要な役割を果たしている。特にコーラスエフェクターのCE-2では、Rate（速度）を2-3、Depth（深さ）を4-5に設定することで、自然で美しい揺らぎを付加している。この設定により、アルペジオフレーズに奥行きと立体感を与え、楽曲の情感表現を豊かにしている。

ディストーションセッティングでは、アンプの歪みとエフェクターの歪みを組み合わせることで、複層的なサウンドキャラクターを構築している。Tube Screamer TS808のセッティングは、Drive 3-4、Tone 6-7、Level 7-8に設定し、アンプの前段でミッドレンジを押し上げることで、バンドアンサンブルに埋もれない明瞭なディストーションサウンドを実現している。この際、Toneコントロールによる高域調整が、楽曲ごとの音色変化において重要な役割を果たしている。

ディレイエフェクターのセッティングでは、楽曲のテンポに同期したディレイタイムの設定が常田のサウンドメイキングの特徴となっている。Boss DD-3では、「Teenager Forever」のような楽曲で8分音符（約300-400ms）のディレイタイムを設定し、Feedback 4-5、Level 3-4に調整することで、楽曲にリズミカルな躍動感を与えている。フィードバックの設定は、ソロパートでの壮大な空間表現と、リズムパートでの適度な残響のバランスを考慮して決定されている。

スタジオレコーディングにおけるミックスでの工夫では、ギタートラックのEQ処理が非常に緻密に行われている。特に80Hz以下のローカットフィルターを適用することで、ベースとドラムの低域との干渉を防ぎ、全体のミックスにおける低域の明瞭性を確保している。また、2-3kHz帯域を軽くブーストすることで、ギターのアタック感と存在感を向上させている。

楽曲ごとの音色使い分けでは、「白日」のイントロ部分でのクリーントーンは、アンプのクリーンチャンネルにリバーブを深めに設定し、さらにコーラスエフェクトを加えることで、幻想的で美しい音空間を演出している。この際のリバーブセッティングは、Decay（減衰時間）を長めに設定し、Mix（ドライ/ウェット比）を30-40%程度に調整することで、楽曲の世界観に適した残響感を実現している。

「飛行艇」のようなアップテンポ楽曲では、アンプのチャンネル切り替えとエフェクターのオン/オフを組み合わせることで、楽曲内でのダイナミクスの変化を表現している。Aメロではクリーン + コーラス、Bメロではクランチ + Tube Screamer、サビではハイゲイン + ディレイという具合に、楽曲の構成に応じた音色設計が行われている。

ライブでのPA系統における音作りでは、会場の音響特性に応じたEQ調整が重要な要素となっている。大型ホールでは高域を抑えめに、ライブハウスでは中域を強調することで、会場に最適化されたギターサウンドを実現している。また、モニタースピーカーからのフィードバックを適切にコントロールするため、ステージでのポジショニングとアンプの向きも細心の注意を払って調整されている。

コンプレッサーの使用では、演奏のダイナミクスを損なわない程度の軽いコンプレッションを適用することで、音の粒立ちを揃えている。特にアルペジオフレーズでは、各音の音量レベルを均一化することで、楽曲の美しいメロディラインを際立たせている。コンプレッサーのセッティングは、Attack（アタック）を遅め、Ratio（比率）を3:1程度に設定し、自然な音圧向上を図っている。

比較的安価に音を近づける機材【King Gnu・常田大希】

常田大希のサウンドに憧れる多くのギタリストにとって、高価なヴィンテージ機材を一度に揃えることは現実的ではない。しかし、適切な機材選択と設定により、比較的安価な機材でも常田サウンドの核となる要素を再現することは十分可能である。ここでは、コストパフォーマンスに優れた機材を中心に、常田サウンドに近づけるための実践的なアプローチを紹介する。

アンプシミュレーターとしては、Boss Katana-50が非常に優秀な選択肢となる。このアンプは、Marshall JCM800系のサウンドを忠実に再現する「Brown」チャンネルを搭載しており、常田のメインアンプであるJCM800の特徴的なミッドレンジの太さと自然な歪みを再現できる。Katana-50の設定では、Brownチャンネルでゲイン6-7、Bass 6、Middle 8、Treble 5程度に設定することで、常田の基本的なクランチサウンドに近いトーンが得られる。また、内蔵エフェクトのコーラスとディレイを組み合わせることで、「白日」のような楽曲の音色再現も可能である。

エフェクターでは、Behringer TO800（Tube Screamerクローン）が優秀な代替品となる。オリジナルのIbanez TS808の1/10程度の価格でありながら、基本的な音色特性は非常に近く、Marshall系アンプのブースターとしての役割を十分に果たす。設定は、Drive 3、Tone 6、Level 8程度にすることで、常田のTS808使用法を再現できる。このエフェクターをKatana-50のBrownチャンネルと組み合わせることで、「飛行艇」のような楽曲の力強いディストーションサウンドに近づけることができる。

ディストーション系では、Boss DS-1が優秀な選択肢となる。RAT 2ほどの攻撃性はないものの、適切なセッティングにより類似したキャラクターを得ることができる。DS-1の設定では、Distortion 6-7、Tone 4-5、Level 6-7に設定し、高域をやや抑えめにすることで、RAT 2的な粗削りなディストーションに近い効果が得られる。

コーラスエフェクターでは、Boss CH-1 Super Chorusが手頃な価格でありながら高品質なコーラス効果を提供する。CE-2ほどのヴィンテージ感はないが、Rate 2、Depth 4、EQ 6、Level 6程度の設定で、常田の使用するコーラス効果に近い美しい広がりを得ることができる。

ディレイエフェクターでは、Boss DD-8 Digital Delayが現代的な機能を持ちながら、DD-3の基本的な音色を継承している。Standard（スタンダード）モードでTime 300ms、Feedback 4、Level 3程度の設定で、常田のディレイ使用法を再現できる。また、Tape（テープ）モードを使用することで、よりヴィンテージライクなディレイサウンドも得られる。

ギターに関しては、Squier Classic Vibe Telecasterが優秀な選択肢となる。本家Fender Telecasterの約1/4の価格でありながら、基本的な音色特性は非常に近く、常田のメインギターであるTelecasterのブライトで切れ味鋭いトーンを十分に再現できる。特にブリッジピックアップでのカッティングトーンと、ネックピックアップでの温かみのあるリードトーンは、価格を考慮すると驚異的なクオリティを持っている。

マルチエフェクターを使用したアプローチでは、Boss GT-1が非常に有効な選択肢となる。このマルチエフェクターには、Marshall系アンプシミュレーターとTube Screamer、コーラス、ディレイなど、常田サウンドに必要な全ての要素が含まれている。プリセットを自分でカスタマイズすることで、楽曲ごとの音色変化も足元のペダル一つで実現できる。GT-1の設定では、「Marshall Stack」アンプタイプに「Overdrive」エフェクトを組み合わせ、さらに「Chorus」と「Delay」を追加することで、常田の基本的なサウンドセットを構築できる。

これらの機材を組み合わせることで、総額10万円以下でも常田大希のサウンドの核となる要素を十分に再現することが可能である。重要なのは、高価な機材を使うことではなく、楽曲に対する理解と適切なセッティングによって、音楽的に説得力のあるサウンドを作り上げることである。

総括まとめ【King Gnu・常田大希】

常田大希の音作りの本質を理解するためには、単純に機材のスペックや設定値を真似るだけでは不十分であり、彼の音楽に対する哲学とアプローチを深く理解することが重要である。常田のサウンドメイキングの根底には、「楽曲に最も適した音色を選択する」という明確な指針があり、この姿勢こそが彼のギターサウンドを特別なものにしている最大の要因といえるだろう。

彼の機材選択を分析すると、決して最新の機材や最高級品を追い求めているわけではなく、むしろクラシックで定評のある機材を中心に、それぞれの特性を深く理解した上で組み合わせていることがわかる。Marshall JCM800とFender Telecasterという組み合わせは、1970年代から続くロックギターの王道セッティングであり、常田はこの伝統的な組み合わせに現代的なセンスを加えることで、独自のサウンドアイデンティティを確立している。

特筆すべきは、エフェクターの使用法における「控えめながら効果的」というアプローチである。多くのギタリストが陥りがちな「エフェクトのかけすぎ」を避け、各エフェクターの特性を最小限の設定で最大限に活かしている点は、長年の経験と音楽的センスの賜物といえる。Tube Screamerをブースターとして使用し、コーラスを自然な広がりのために控えめに設定し、ディレイを楽曲のグルーヴに同期させるといった使用法は、エフェクターを「音楽の一部」として捉える成熟した視点を示している。

常田サウンドを再現しようとする際に最も重要なのは、技術的な側面よりも音楽的な理解である。「白日」のイントロで聞かれる美しいアルペジオは、単純にクリーントーンにコーラスをかけただけではなく、楽曲の持つ情感と世界観を理解した上での表現である。同様に、「飛行艇」での力強いディストーションサウンドも、楽曲のエネルギーとバンドアレンジメントとの調和を考慮した結果である。

また、常田の音作りには「バンドアンサンブルへの配慮」という重要な要素が常に存在している。ベースラインとの棲み分け、ドラムとのリズム的な絡み、ボーカルメロディとの音域的な配慮など、ギター単体で「良い音」を作るのではなく、バンド全体として最適化された音作りを心がけている点は、多くのギタリストが学ぶべき重要な視点である。

音作りのセッティングにおいても、常田は決して複雑な設定を行っているわけではない。むしろ、基本的なEQ設定とシンプルなエフェクターチェーンで、楽曲に必要な音色を的確に作り出している。これは、音作りにおける「引き算の美学」を体現しており、不要な要素を削ぎ落とすことで、本当に必要な音楽的要素を際立たせている。

常田大希のサウンドを目指すギタリストにとって最も重要なアドバイスは、機材やセッティングを真似ることから始めつつも、最終的には自分自身の音楽的表現を見つけることである。常田自身も、多くの先輩ギタリストからの影響を受けながら、最終的には自分らしいサウンドを確立している。彼の音作りのアプローチを理解し、それを自分の音楽的文脈に適用することで、技術的にも音楽的にも成長することができるだろう。

最後に、常田大希の音作りから学べる最も重要な教訓は、「音作りは音楽表現の手段であり、目的ではない」ということである。優れたギタリストになるためには、機材やテクニックの習得だけでなく、音楽に対する深い理解と愛情が不可欠である。常田の音に憧れることは素晴らしいスタート地点だが、そこから自分なりの音楽的な旅路を歩んでいくことこそが、真のギタリストとしての成長につながるのである。