始めに(特徴紹介)
BEAT CRUSADERS(通称ビークル)のフロントマンでありギタリストのヒダカトオルは、90年代オルタナティヴ・ロックやパンクの影響を色濃く反映したギターサウンドを特徴としています。彼のプレイは、パワーコードを主体にしたシンプルながらも骨太なリフ、そしてメロディアスなボーカルを支えるタイトなバッキングにあります。
代表曲である「Hit in the USA」や「Toneless Twilight」などでは、軽快なリズムギターがバンド全体のドライブ感を押し上げ、さらに「DAY AFTER DAY」や「LOVE DISCHORD」などでは、クランチからディストーションまで幅広い歪みの使い分けが光ります。これらの楽曲に共通するのは、荒々しくも抜けの良い中音域を中心とした音作りであり、ライブでも一貫して観客を煽るようなストレートなロックサウンドを貫いてきました。
また、ヒダカのサウンドは「アンプ直結に近いシンプルなセッティング」を好む点も特徴です。エフェクターは必要最小限に抑えられ、ギターとアンプの持つ特性を活かした王道のロックトーンを作り上げています。この潔さこそが、多くのフォロワーや後続のバンドマンに支持される理由の一つと言えるでしょう。
本記事では、BEAT CRUSADERS・ヒダカトオルの音作りを徹底解説し、使用アンプ・ギター・エフェクターを紹介しながら、そのセッティングやミックスの工夫まで掘り下げていきます。最後には「比較的安価に再現できる代替機材」も提示するので、これからヒダカトオル風サウンドを再現したい方はぜひ参考にしてください。
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使用アンプ一覧と特徴【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】
ヒダカトオルのサウンドを支える大きな要素の一つが、ステージ上でのアンプ選びにあります。特に、ENGL社のハイゲインアンプ「Invader 150」は、彼の音作りを語るうえで欠かせません。150Wという大出力ヘッドは、クリーンからハイゲインまで幅広く対応できる4チャンネル仕様を備えています。これにより、楽曲ごとに歪みの質感を切り替えることが可能で、ライブでは「Hit in the USA」のようなパワフルなディストーションから、「Japanese Girl」の軽やかなクランチまで対応する柔軟性を持っています。
さらに、キャビネットには同じENGLの「E 412 Vintage」を使用。こちらはCelestion Vintage 30を搭載した4発キャビネットで、音圧感が非常に高く、特に中音域に粘りのあるサウンドが得られます。ヒダカのコードストロークがバンド全体を引っ張る際、このキャビネットの押し出しの強さが重要な役割を果たしていると考えられます。
なお、ENGLの組み合わせはハイゲインメタル系のギタリストに好まれる傾向がありますが、ヒダカの場合は歪みを過度に深くせず、バンドアンサンブルの中でクリアに抜けるようなセッティングを心掛けていたと推測されます。特に中域の存在感を前に出すことで、ボーカルを兼ねる自身の声とギターの音がバッティングしないバランスを保っていたと考えられます。
また、スタジオやリハーサル環境ではMarshallやFenderなどのアンプも使用していた可能性が一部インタビューで語られており、録音や練習においては必ずしもENGL一択ではなかったと見られます。ただし、ライブや大規模ツアーにおいてはENGL Invader+E412の組み合わせが長らくメインであり、ビークルサウンドを象徴するセットアップであったことは間違いありません。
このように、ヒダカトオルは「ハイゲインアンプをあえてロック的な中域重視の音に調整する」というアプローチで独自のサウンドを確立していたと想定されます。
使用ギターの種類と特徴【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】
ヒダカトオルがステージで愛用していたメインギターは、王道ロックの象徴ともいえる「Gibson SG」です。SGは軽量で取り回しやすく、ミドルに特徴のあるサウンドを持つため、BEAT CRUSADERSのテンポ感のある楽曲にマッチしています。特に、荒削りでパンキッシュなリフを刻む際に、SG独特の中域の押し出しと軽快なレスポンスが効果的に作用していました。ライブ映像や雑誌インタビューでもSGを抱えている姿が多く確認できることから、長年にわたってメインの一本であったことは確かです。
一方で、ナチュラルカラーが特徴の「YAMAHA SG-45」も使用していたことが知られています。YAMAHA SGシリーズは日本製ならではの作りの良さと、太くて粘りのあるサウンドで評価されています。SG-45は比較的古いモデルながら、ミドルレンジが豊かで、コードストロークや単音リフにも独特の厚みを与えます。BEAT CRUSADERSの楽曲では、特に少し温かみを加えたい場面や、レコーディングで音のバリエーションを広げたい時に活用されていたと考えられます。
これらのギターの共通点は、いずれも「バンドサウンドに埋もれず、しっかりと中域を確保できる」という点です。ヒダカのギターは歌と同時に鳴っていても輪郭がぼやけることがなく、リズムギターとしてもリードとしても十分な存在感を持っていました。これは彼のプレイスタイル(主にパワーコードを主体とし、時折カッティングを交える)に非常に適した選択だったといえます。
また、90年代後半〜2000年代にかけてのインディーズ期では、他のストラト系やレスポール系を試していた時期があった可能性も一部で語られています。しかし、BEAT CRUSADERSがブレイクした以降は、ほぼGibson SGとYAMAHA SG-45に落ち着いていたと推測されます。
つまり、ヒダカトオルのギター選びは「軽快さ」と「中域の芯」を重視したものであり、バンド全体のポップパンク的サウンドを下支えする重要な役割を果たしていた、と想定されます。
使用エフェクターとボード構成【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】
ヒダカトオルのエフェクトボードは、BEAT CRUSADERSのシンプルでストレートなロックサウンドを反映しており、基本的には必要最小限の構成で組まれていました。彼の音作りの核はアンプ直系のサウンドであり、過度なエフェクト処理を避けることで、パワフルかつ生々しいギターの響きを前面に出しています。
実際に確認されている機材の一つが、Ibanez LU30です。これはシンプルなペダル型チューナーで、ライブ時のセットアップに必須のツール。彼は複雑なエフェクトチェインを組むスタイルではないため、ボードの入口には必ずこのチューナーが配置され、安定したピッチを保ちながら演奏していたと考えられます。
もう一つ欠かせないのが、BOSS FV-300H。これはハイインピーダンス仕様のボリュームペダルで、ライブ中に曲調やアレンジに合わせてダイナミクスをコントロールする役割を担っていました。例えば、イントロでボリュームを絞ってクリーン寄りのトーンを出し、サビで一気に解放することでメリハリのあるサウンドを演出していたと考えられます。
歪み系のエフェクターに関しては、基本的にアンプのゲインを活用しており、外部のオーバードライブやディストーションを常時使用していた記録は見られません。ただし、スタジオ録音や特定の楽曲では補助的にBOSS DS-1やOD-3といったペダルを試していた可能性も一部の音楽誌で言及されています。この場合、音の立ち上がりやサステインを補強する目的で使用されたと考えられます。
また、空間系(ディレイやリバーブ)についても、アンプ側のリバーブを活かす程度で、外部ペダルはほぼ導入されていなかったようです。これは、BEAT CRUSADERSのタイトで疾走感のある楽曲に「濁り」を持ち込まないための判断だったと想定されます。
総じて、ヒダカトオルのエフェクターボードは「チューナー+ボリュームペダル+最低限の歪み補助」という極めてシンプルな構成であり、その潔さこそがバンドのサウンドを象徴するものだったといえるでしょう。多くのギタリストが複雑なエフェクトチェインを組む中で、彼は「直球勝負の音作り」に徹していたと想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Ibanez LU30(チューナー) | Ibanez | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | チューナー | ライブセットで常用。シンプルで視認性の高いチューナー。 |
BOSS FV-300H(ボリュームペダル) | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | ボリュームペダル | 曲中の音量コントロールや表現力の幅を広げるために使用。 |
BOSS DS-1(ディストーション)※推定 | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | ディストーション | 補助的に使用した可能性あり。立ち上がりの速さを加える目的。 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】
ヒダカトオルの音作りにおいて特徴的なのは、「シンプルながらも中域を強調し、楽曲全体を引っ張る存在感を持たせる」点です。彼はギターだけでなくボーカルも担当していたため、声とギターの周波数帯が重ならないように調整されていたと考えられます。結果的に、ギターのサウンドはローを抑え、中域〜高域を前に出すことで、バンド全体にドライブ感を与えつつもボーカルを邪魔しないクリアなトーンに仕上がっていました。
アンプ設定の基本としては、ENGL Invader 150のクリーンチャンネルを基盤に、ゲインチャンネルを切り替えることで歪みを作り出していたと考えられます。ゲインはフルに上げず、6〜7割程度で留め、中域を強調するEQ調整が施されていた可能性が高いです。トレブルはやや控えめ、ベースも過度に持ち上げず、ミドルを厚めに設定することで「軽快さ」と「芯のある抜け」を同居させていました。
例えば「Hit in the USA」では、コードストロークが疾走感を生み出すため、歪みを深くせずタイトに保つことが求められます。逆に「DAY AFTER DAY」や「Love Dischord」では、ややコンプレッションを効かせたドライブトーンが特徴的で、演奏の勢いを前に押し出す効果を狙っていたと考えられます。
EQの工夫としては、録音時にベースギターと重ならないよう、ローを250Hz以下で整理し、500Hz〜1kHz付近を強調していると推測されます。これにより、アンサンブルの中でギターがしっかり前に出ると同時に、バンド全体の厚みを損なわないサウンドを実現しています。また、ライブPAではギターの存在感を増すために、2kHz付近を軽くブーストする処理も行われていた可能性があります。
曲ごとの使い分けも重要で、アップテンポなナンバーではアンプ直系に近いクランチ設定を採用し、バラード寄りの曲やグルーヴを意識した曲ではボリュームペダルを活用して音量を微調整。サビで一気に音圧を上げる演出は、BEAT CRUSADERSらしいアレンジの一部となっています。ボリュームペダル(BOSS FV-300H)の存在は、このようなダイナミックレンジの演出に欠かせなかったでしょう。
ミックス面の工夫では、2本のギターがいるバンドと違い、ヒダカのギターは「唯一のギターパート」であることが多いため、左右にステレオで広げすぎず、センター寄りに定位される傾向がありました。これは、バンドのシンセやエレクトロニカ要素を活かしつつ、ギターが埋もれないようにする意図があったと考えられます。加えて、リバーブやディレイの処理は極めて薄く、ドライでパンチのある質感が中心となっています。
まとめると、ヒダカトオルの音作りは「中域を軸にした直球ロックサウンド」であり、楽曲に応じて歪みの深さやダイナミクスをコントロールしながら、PAやミックスで最小限の処理を施すことで完成されていました。シンプルでありながら、バンド全体を支える強靭なギターサウンドは、こうした徹底したEQバランスと演奏スタイルによって実現されていたと想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】
ヒダカトオルのサウンドを忠実に再現するには、ENGLの大型アンプやGibson SGなどが理想的ですが、いずれも高額で初心者にはハードルが高いのも事実です。ここでは、より安価に導入でき、かつヒダカの「中域を強調したストレートなロックサウンド」を再現できる市販の機材を紹介します。価格帯は1〜5万円程度を目安とし、入門者やコピーバンド志向のプレイヤーにおすすめの代替案をまとめました。
まず、ギターについてはEpiphone SG Standardが最適な選択肢です。EpiphoneはGibsonの兄弟ブランドで、Gibson SGに比べて価格は抑えられていますが、中域の押し出し感や軽快なストローク感はしっかりと再現可能です。これ一本で「Hit in the USA」風のサウンドを再現できるため、最初の一本としても非常に優れています。
アンプについては、ハイゲインからクランチまで幅広く対応できるBOSS Katana 100 MkIIがおすすめです。BOSS独自のモデリング技術により、ENGLに近いハイゲイントーンからクランチ系までを網羅でき、EQで中域を押し出す設定をすれば、ヒダカ特有の「歪ませすぎないタイトなロックサウンド」を実現できます。価格も10万円以下と比較的手頃で、ライブにも対応可能です。
エフェクターに関しては、最低限BOSS FV-30H(ボリュームペダル)を導入すると良いでしょう。ヒダカが多用したダイナミクスのコントロールをシンプルに再現できます。さらに、歪み系を補助的に導入したい場合は、定番のBOSS DS-1が有効です。価格は手頃ながらも、立ち上がりが早くカラッとしたディストーションが得られるため、アンプの歪みに少し加えるだけで、ヒダカ特有の硬質感を再現しやすくなります。
空間系については必須ではありませんが、ライブ感を演出したい場合はBOSS RV-6(リバーブ)を軽くかける程度で十分です。ヒダカのサウンドは基本的にドライですが、環境に応じて少量のリバーブを使うと、より自然にバンドサウンドへ溶け込みます。
総じて、これらの代替機材を組み合わせることで、10万円前後の予算でもBEAT CRUSADERS風サウンドをかなり忠実に再現可能です。特に「Epiphone SG+BOSS Katana+BOSS FV-30H」の組み合わせは、初心者でもすぐにヒダカトオルの直球ロックサウンドを体感できる再現度の高いセットアップだといえるでしょう。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
ギター | Epiphone SG Standard | Epiphone | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | Gibson SGの廉価版。中域の押し出し感が強く、ストローク向き。 |
アンプ | BOSS Katana 100 MkII | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | モデリングアンプ。ENGLに近いハイゲイントーンも再現可能。 |
ボリュームペダル | BOSS FV-30H | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | ダイナミクス表現用。FV-300Hの後継モデルでコンパクト。 |
歪みペダル | BOSS DS-1 | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | 補助的に歪みを加えるために有効。安価かつ定番。 |
リバーブ | BOSS RV-6 | BOSS | Amazonで探す | BEAT CRUSADERS | ヒダカトオル | 必要に応じて空間を加える用途。深くかけすぎないのがポイント。 |
総括まとめ【BEAT CRUSADERS・ヒダカトオル】

ヒダカトオルのギターサウンドを改めて振り返ると、その本質は「シンプルさ」と「中域の存在感」に集約されます。彼はエフェクターを多用するのではなく、ギターとアンプの持つ本来のキャラクターを活かし、直球でロックを鳴らすスタイルを貫いていました。結果として、疾走感のあるポップパンク的な楽曲から、重心の低いオルタナティブな楽曲まで、幅広い表現を支えることができたのです。
使用機材を見ても明らかなように、メインはGibson SGとYAMAHA SG-45という「中域がしっかり出るギター」、アンプはENGL Invader+E412 Vintageという「高出力でレンジが広く、かつ粘りのある中域を演出できるセットアップ」。これらの組み合わせにより、荒々しいコードストロークでも音が埋もれず、バンド全体を支配するような迫力を実現していました。エフェクターについても、チューナーとボリュームペダルを中心に、必要最低限の構成で運用されており、「削ぎ落とした潔さ」がサウンドの強みとなっていたのは間違いありません。
音作りの観点から言えば、ポイントは中域を厚めにするEQ処理と、歪ませすぎないクランチ〜ディストーションの使い分けにあります。さらにボリュームペダルを用いたダイナミクスのコントロールは、ヒダカのライブならではの臨場感を支える重要な要素でした。ミックス面でもリバーブやディレイを控えめにし、ドライでタイトな音を前に押し出すことで「シンプルでありながら抜群にバンドに映える音」を確立していたといえるでしょう。
総じて、ヒダカトオルの音作りは「派手なテクニック」や「複雑な機材構成」に頼らず、基本のギター+アンプを徹底的に活かすことに重きを置いたものでした。これは、ギター初心者にとっても非常に参考になるスタンスです。多くの機材を揃える前に、まず「中域を意識した音作り」「演奏ダイナミクスを工夫する」ことこそが、バンドサウンドで存在感を発揮するための近道であると教えてくれるのです。
もし読者が「BEAT CRUSADERSの音を再現したい」と考えているなら、必ずしも高価な機材を揃える必要はありません。Epiphone SGやBOSS Katanaのような比較的手頃な機材を用い、中域を厚めに設定し、ボリュームペダルで曲中の強弱をつけるだけでも、十分にヒダカトオルの直球ロックサウンドを体感できます。重要なのは機材の値段ではなく、その使い方と「音に対する姿勢」なのだといえるでしょう。
最後にまとめると、ヒダカトオルの音作りを再現するために意識すべきキーワードは「中域」「シンプル」「ダイナミクス」。この三点を軸にすれば、きっとあなたのギターもBEAT CRUSADERSのように軽快で力強いロックを鳴らすことができるはずです。
下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
ギター
Gibson SG
メインギターとして長年使用。中音域が特徴的で、軽やかなロックサウンドを支える。
YAMAHA SG-45(ナチュラルカラー)
温かみと粘りのあるサウンドを持つモデル。
アンプ
ENGL Invader 150(アンプヘッド)
多彩なゲインチャンネルと高い音圧を誇るハイゲインアンプ。
ENGL E 412 Vintage(キャビネット)
4×12インチスピーカー搭載、ビンテージ志向の音色。
エフェクター・周辺機器
Ibanez LU30(チューナー)
シンプルなペダル型チューナー。
BOSS FV-300H(ボリュームペダル)
ハイインピーダンス仕様。音量調整やエフェクトコントロールに使用。
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