① はじめに(Satchelのサウンドとプレイスタイル)
Steel Pantherのギタリスト、Satchel(サッチェル)は、80年代LAメタルの文脈を現代に極端なまでにデフォルメして再構築した存在です。プレイ自体は非常に正統派で、VAN HALEN〜Ratt〜Whitesnake直系のレガート、ワイドビブラート、Floyd Roseを前提としたアーミングが基礎にあります。
一方で、音作りは「過剰なほどに分かりやすい」。低域は締まりすぎず、ミドルは太く、ハイは痛くならないギリギリまで持ち上げる。結果として、PAを通した際に”いかにも80sメタルのギターが前に出てくる”レンジに常に収まるのが特徴です。
代表曲である「Death to All but Metal」「Community Property」「Fat Girl」などでは、歪み量自体は意外と控えめで、ピッキングニュアンスとアタックで押し切るスタイルが確認できます。モダンメタル的な超ハイゲインではなく、あくまでクラシックな5150〜Marshall系の延長線上にある音です。
Satchelの音が注目される理由は、”ネタバンド”という外皮を剥がすと、極めて計算された王道ロックギターの教科書が中にある点にあります。音作りもその例外ではありません。
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② 使用アンプ一覧と特徴【Steel Panther・Satchel】
Satchelのアンプ遍歴は、LAメタルの歴史そのものといっても過言ではありません。初期〜中期にかけては、EVH 5150 IIIやMarshall JCM800/JCM2000といった定番スタックアンプを中心に使用してきました。
EVH 5150 III(100W Head)は、レコーディングにおいて現在もリズムトラックの中核を担っているとされます。5150特有のタイトな低域と、ミドルに密度のある歪みは、Steel Pantherの”分厚いが抜ける”リフサウンドの基礎です。特にBlue/Redチャンネルの中間的な歪み設定が多用されていると考えられます。
Marshall JCM800やJCM2000 TSLは、ツアー先でのレンタル機材としても頻繁に使用され、どの国でも同じレンジ感を出せる信頼性が理由です。ミドル主体で、プレゼンスを上げすぎない設定がSatchel流です。
近年の大きな変化として、Atomic Amplifire 3の導入があります。小型モデラーながら「5051」モデル(歪み)、「D-Lux」モデル(クリーン)を使い分け、ツアーの再現性と設営効率を重視しています。また、Neural DSP Archetype: Gojiraプラグインも近年のアルバムでリード用途に使用されており、デジタル環境でもSatchelらしい中域の太さを維持しています。
以上から、スタジオでは真空管、ライブではモデラーというハイブリッド運用が行われていると、想定されます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | メルカリ | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Amplifire 3 | Atomic | 検索 | 検索 | 近年のライブメイン。5051/D-Luxモデル使用 |
| 5150 III 100W | EVH | 検索 | 検索 | レコーディングの核 |
| JCM800 / JCM2000 | Marshall | 検索 | 検索 | ツアー・レンタル機材 |
| Archetype: Gojira | Neural DSP | 検索 | 検索 | 近年アルバムのリードで使用 |
③ 使用ギターの種類と特徴【Steel Panther・Satchel】

Satchelの代名詞といえるのが、現在のメインギターであるCharvel Satchel Signature Pro-Mod DK22 HH FR Mです。80年代メタルを象徴する派手なベンガル柄と、モダンな演奏性を両立したモデルです。
ピックアップにはFishman Fluence Classic Humbucker(PRF-CHB)を搭載し、プッシュ/プルでボイシング切替が可能。これにより、クラシックPAF寄りの太さと、よりモダンで押し出しの強いサウンドを使い分けています。Floyd Rose 1000 Seriesにより、激しいアーミングでも安定したチューニングを維持します。
Charvel以前は、Kramer Pacerをメインとして使用しており、ヒョウ柄やチーター柄など、後のビジュアル路線の原型がすでに見られました。Seymour Duncan JB/’59の王道構成で、よりクラシックなLAメタルサウンドを担っていました。
また、アコースティックパートではGretsch G5022CWFE-12 Rancher Falcon Jumbo(12弦)を使用。初期MVではB.C. Rich Virginも確認されており、初期衝動的なハードロック色が強い時期の象徴といえます。
これらの使用実績から、派手な見た目と実用性を最優先した選択が一貫していると、想定されます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | メルカリ | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| Satchel Signature DK22 | Charvel | 検索 | 検索 | エレキギター | 現行メイン |
| Pacer | Kramer | 検索 | 検索 | エレキギター | Charvel以前のメイン |
| G5022CWFE-12 | Gretsch | 検索 | 検索 | エレアコ | 12弦アコースティック |
| Virgin | B.C. Rich | 検索 | 検索 | エレキギター | 初期MVで使用 |
④ 使用エフェクターとボード構成【Steel Panther・Satchel】

Satchelのエフェクト構成は非常にシンプルです。基本はアンプ(またはモデラー)の歪みを主軸に、必要最低限のペダルで色付けするスタイルです。
特徴的なのが、All PedalsからリリースされたSteel Panther 1987(Distortion & Delay)や、Pussy Melter / Butthole Burnerといったバンド名義のシグネチャーペダル群です。これらは実用性とネタ性を両立していますが、回路自体は王道ディストーション〜オーバードライブ設計で、実際にソロブーストやキャラクター付けに使われています。
Way Huge Smalls Conspiracy Theoryは、TS系を現代的にブラッシュアップしたオーバードライブで、5150系アンプのフロントブーストとして非常に理にかなった選択です。
空間系ではMXR Carbon Copy Brightを使用し、ソロ時の奥行きを付加。MXR Phase 95は80sメタル文脈では定番で、クリーン〜軽歪みでの揺れ演出に使用されます。チューナーはTC Polytune 3 Noir、旧リグではBoss TU-3も確認されています。
全体として、音作りの中心はアンプ側にあり、エフェクターは補助的役割に徹していると、想定されます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | メルカリ | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| Steel Panther 1987 | All Pedals | 検索 | 検索 | ディストーション | シグネチャー |
| Pussy Melter | Steel Panther | 検索 | 検索 | ディストーション | バンドオリジナル |
| Conspiracy Theory | Way Huge | 検索 | 検索 | オーバードライブ | ブースト用途 |
| Phase 95 | MXR | 検索 | 検索 | フェイザー | 80s的揺れ |
| Carbon Copy Bright | MXR | 検索 | 検索 | ディレイ | ソロ用 |
| Polytune 3 Noir | TC Electronic | 検索 | 検索 | チューナー | 現行 |
| TU-3 | Boss | 検索 | 検索 | チューナー | 旧リグ |
| SD-1 | Boss | 検索 | 検索 | オーバードライブ | ブースト用 |
⑤ 音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Steel Panther・Satchel】
Satchelの音作りを理解する上で重要なのは、「歪ませすぎない」という一点です。5150系やMarshall系というとハイゲインの印象がありますが、実際のセッティングは意外なほどゲインを抑えています。これは速いレガートやタッピングでも音像が潰れないようにするためです。
アンプEQの基本思想は、Bassは締めすぎず3〜4、Middleは6〜7、Trebleは5前後、Presenceは上げすぎない、という80s王道設定です。低域を削りすぎないことで、PA側でハイパスしても芯が残ります。
Atomic Amplifire 3使用時も同様で、5051モデルではGainを50%未満に抑え、EQはミドル主体。キャビIRもV30系ではなく、やや丸い80s系を選ぶことで、過度な現代感を避けています。
曲ごとの使い分けとして、リフ主体曲では歪みを抑え、ソロ曲ではSD-1やConspiracy Theoryで軽くブースト。ディレイはCarbon Copy Brightで、Delay Timeは300ms前後、Mixは控えめに設定されることが多いです。
ミックス面では、ギター単体で “いい音” を狙わず、ボーカル帯域(2〜4kHz)を少し避け、1.2〜1.8kHzを太くすることで、Steel Panther特有の分厚いアンサンブルが成立していると考えられます。
結果として、派手だが破綻しない音作りが徹底されていると、想定されます。
⑥ 比較的安価に音を近づける機材【Steel Panther・Satchel】
Satchelサウンドを再現する上で重要なのは、高価なシグネチャー機材ではなく「ミドルが太く、歪みすぎないハイゲイン」です。その観点で、比較的安価かつ再現性の高い機材を紹介します。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | メルカリ | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| アンプシミュレーター | IR-2 | Boss | 検索 | 検索 | 5150系IRで再現性が高い |
| マルチエフェクター | GT-1000 Core | Boss | 検索 | 検索 | ライブ即戦力 |
| ディストーション | DS-1X | Boss | 検索 | 検索 | 80s寄りの歪み |
| オーバードライブ | OD-3 | Boss | 検索 | 検索 | ブースト用途 |
これらを使い、ゲインを抑えめに設定することが最短ルートです。
⑦ 総括まとめ【Steel Panther・Satchel】

Satchelの音作りの本質は、「80年代メタルの理想像を、現代の環境で破綻なく再現すること」にあります。派手な見た目とは裏腹に、機材選びもセッティングも極めて合理的です。
重要なのは、歪み量を抑え、ミドルを太くし、PAやミックスで完成させる前提で音を作ること。これは自宅練習では地味に感じるかもしれませんが、バンド音像では圧倒的な説得力を持ちます。
また、真空管アンプとモデラーを使い分ける姿勢からも分かる通り、機材は目的に応じて選ぶものだという哲学が一貫しています。
Steel Pantherのギターサウンドを再現する鍵は、「ネタに見えて、実は王道」。この視点を持つことが、Satchelサウンドへの最短距離だといえるでしょう。

・Steel_Panther(スティール・パンサー)】風サウンドの作り方+ギター機材音作りセッティングのまとめ【エフェクター・アンプ】-120x68.jpg)