始めに(特徴紹介)
Adrian Smith(エイドリアン・スミス)は、Iron Maidenの看板ギタリストとして知られる存在ですが、バンドUFOとも強い関連を持ち、そのサウンドはブリティッシュ・ハードロックを象徴する存在のひとりです。彼の音作りはメロディックでありながら攻撃的で、ツインギター編成の中でも鮮烈に耳に残るリードワークが特徴です。
彼のギタースタイルは、ブルースベースのフレーズを高速かつメタル的なアタックで弾きこなす点にあります。代表曲「Wasted Years」や「The Trooper」などで聴けるサウンドは、粒立ちのよいディストーションと伸びやかなサスティーンが融合し、ソロとリフの両面で高い完成度を誇っています。
また、1980年代から最新のツアーに至るまで、彼は常に進化した機材を導入しつつも、基本的な音の芯は変わらず「太く、切れ味があり、歌心を持つ」という哲学を貫いています。そのため、使用するギターやアンプ、エフェクターの変遷を辿ることは、彼の音楽観を理解するうえで重要です。
本記事では、Adrian Smith(UFO/Iron Maiden)の音作りに迫り、実際の使用機材やアンプセッティング、エフェクターボード構成などを詳細に解説していきます。読者の方が自身の環境で彼のサウンドを再現できるよう、具体的な代替機材の紹介や安価な再現方法も掲載していきます。
まずは、彼の公式MVやライブ映像をチェックしながら、そのサウンドを耳で確認してみましょう。
使用アンプ一覧と特徴【UFO・Adrian Smith】
Adrian Smithのサウンドの根幹を支えているのがアンプです。彼はキャリアを通してMarshallを中心に据えつつ、時代ごとに小型アンプやラックシステムを組み合わせるなど、非常に幅広いアンプセッティングを試してきました。ここでは実際に確認できる使用アンプを中心に紹介していきます。
1983年の「World Piece」ツアーでは、伝統のMarshall Super Lead(1959 Plexi 100W)を使用。初期は50Wモデルも導入していましたが、より大きな会場での出力確保のために100Wへと移行しています。クラシックMarshallらしい荒々しい歪みとミッドの強さは、当時のAdrianのタイトなリフと鮮烈なソロを際立たせました。
一方で、1986年から1988年にかけては異色のGallien-Krueger 250MLを使用。小型ながら100W出力を誇り、内蔵のコーラスとエコーが『Somewhere in Time』や『Seventh Son of a Seventh Son』期の近未来的なシンセサウンドに適していました。これは当時のアイアン・メイデンの音作りを象徴する要素ともなっています。
メイデン復帰後はラックシステムの構築が進み、Marshall JMP-1 MIDIプリアンプを中心に構成。これにMarshall 9200 Dual Monoblock Power AmpやRandall Isolation Cabsを組み合わせることで、安定した音作りと効率的なステージ運用を実現しました。『En Vivo!』ツアーなどでもこのシステムが確認されています。
その後はMarshall JVM410HやJCM2000 DSL100など、4チャンネル仕様で多彩なサウンドを切り替え可能なヘッドを採用。特にJCM2000ではEQ設定が細かく記録されており、ライブごとに微調整を加えるほどのこだわりを見せています。さらに2010年代以降はBlackstar HT-5やBlackstar Series One(100Wモデル)も導入。『The Final Frontier』『The Book of Souls』のレコーディングに使われ、より現代的なハイゲイン・トーンを実現しました。
これらを踏まえると、Adrian Smithのアンプ選びは「クラシックMarshallの骨太サウンド」をベースにしながらも、時代や楽曲に応じて最新機材を柔軟に取り入れるスタイルであると言えます。ライブ規模や楽曲のサウンドスケープに合わせてアンプを選んできたことが、彼の音の説得力につながっていると考えられます。
以下の表に、使用が確認されたアンプをまとめます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
Marshall Super Lead 1959 Plexi 100W | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 1983年World Pieceツアーで使用。クラシックなブリティッシュサウンド。 |
Gallien-Krueger 250ML | Gallien-Krueger | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 1986〜1988年に使用。内蔵コーラスとエコーでシンセ的サウンドを実現。 |
Marshall JMP-1 MIDI Preamp | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | メイデン復帰後〜2010年頃まで使用。ラック中心のセットアップ。 |
Marshall JVM410H | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | JMP-1の後に導入。4チャンネル仕様で多彩な音作り。 |
Marshall JCM2000 DSL100 | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 2010年頃のツアーで使用。EQ設定が雑誌等に記録。 |
Marshall 6100LM 30th Anniversary | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 100Wオールチューブ、2台使用。 |
Blackstar HT-5 | Blackstar | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 『The Final Frontier』『The Book of Souls』で使用。 |
Blackstar Series One (100W 1046L6 / 104EL34) | Blackstar | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 同上アルバムで使用。現代的なハイゲイン。 |
Marshall 1960A/B キャビネット | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | Celestion G12-T75搭載、4×12仕様。クラシックな組み合わせ。 |
Randall Isolation Cabs | Randall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | SM57マイキング用。『En Vivo!』ツアーで使用。 |
Marshall 9200 Dual Monoblock Power Amp | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ラックシステムのパワー部として使用。 |
このように、Adrian Smithはキャリアの各時期で最適なアンプを使い分け、進化し続けるIron MaidenやUFOのサウンドに対応してきました。クラシックMarshallに根ざしつつも最新のテクノロジーを取り入れる柔軟なスタンスが、彼の音作りの大きな特徴と想定されます。
使用ギターの種類と特徴【UFO・Adrian Smith】
Adrian Smithの音作りを語る上で欠かせないのが多彩なギター群です。彼はアイアン・メイデンやUFOでの活動を通じて、常にシーンや楽曲に合わせた最適なギターを使い分けてきました。その中でも特に有名なのがJacksonのシグネチャーモデルで、2007年以降はこれをメインに据えることで、彼独自のサウンドアイデンティティを確立しています。
初期の代表的ギターは、1971年製Gibson Les Paul Deluxe(Goldtop)。これは彼にとって初めての本格的なギターであり、ブリッジピックアップをDiMarzio Super Distortionに換装して愛用しました。Smith本人も「最高のギター」と評しており、現在もライブで使用されることがあるほど特別な存在です。
1980年代前半には、赤いIbanez Destroyerをメインに使用。「Run to the Hills」のMVや『Number of the Beast』の録音でも確認され、メタリックなリフに適した力強いトーンを実現しました。その後、Dean Baby MLやLado Earthなど、個性的なシェイプのギターも多く取り入れ、ツアーごとにサウンドの幅を広げています。
1986年頃には、Jackson Custom Prototype(ホワイト)が製作され、のちのシグネチャーモデルの原型となりました。このギターにはFloyd RoseトレモロとDiMarzioピックアップ、ノイズレス仕様のPUが搭載されており、テクニカルな演奏に適した仕様でした。同時期に使用されたCharvel San Dimas(ブラック)も「Wasted Years」のMVでお馴染みです。
2000年代に入ると、Gibson Les Paul Custom(ブラック)やGibson SG Standard(ウォルナット)を導入。SGは特に「The Number of the Beast」演奏時のドロップDチューニング専用機として活躍し、ピースマークのステッカーも印象的です。さらに、2007年以降はJackson Adrian Smith Signature San Dimas Dinky(ホワイト)が登場し、以降のメイン機材となりました。2017年には上位機種のJackson USA Signature Adrian Smith San Dimas SDQM(グリーンバースト)が登場し、ブリッジにSeymour Duncan JB-4を搭載するなど、より現代的な仕様に進化しています。
このように、Smithのギター選びは「クラシックなトーンを持つレスポール系」と「テクニカルな演奏に耐えうるモダンなストラト系」を軸に、時代ごとのニーズに合わせてアップデートされてきました。結果として、彼の音は常にメロディックかつ攻撃的でありながらも楽曲に寄り添うバランスを実現しています。以下の表に代表的な使用ギターをまとめます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Fender American Standard Stratocaster (Sunburst) | Fender | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ストラトキャスター | 1999年以降メイン。DiMarzio Super Distortion搭載例あり。 |
Gibson Les Paul Deluxe (Goldtop, 1971年製) | Gibson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | レスポール | 初めての本格ギター。「最高のギター」と本人が発言。 |
Jackson Adrian Smith Signature San Dimas Dinky (White) | Jackson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | スーパーST系 | 2007年登場。シグネチャー。以降のメインギター。 |
Jackson USA Signature Adrian Smith San Dimas SDQM (Green Burst) | Jackson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | スーパーST系 | 2017年以降使用。ブリッジにSeymour Duncan JB-4。 |
Ibanez Destroyer (Red) | Ibanez | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | エクスプローラー系 | 1980年代前半使用。「Run to the Hills」MVで確認。 |
Gibson Les Paul Custom (Black) | Gibson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | レスポール | 2000年頃から使用。『The Wicker Man』MVに登場。 |
Dean Baby ML (Cherry Burst) | Dean | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | MLシェイプ | 1983〜1999年に使用。ブルース・ディッキンソンソロでも登場。 |
Jackson Custom Adrian Smith Prototype (1986, White) | Jackson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | スーパーST系 | シグネチャーの原型。『Somewhere in Time』期に登場。 |
Gibson SG Standard (1970年代, Walnut) | Gibson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | SG | ドロップD専用。「The Number of the Beast」で使用。 |
Charvel San Dimas (Black) | Charvel | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | スーパーST系 | 1986年「Wasted Years」MVで使用。 |
Lado Earth (Silver Burst) | Lado | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | エクスプローラー系 | 1984〜1988年に使用。ブリッジをDiMarzioに交換。 |
Jackson King V | Jackson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | フライングV系 | ブルース・ディッキンソンソロや特定ツアーで使用。 |
Gibson Flying V | Gibson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | フライングV | 詳細不明ながらキャリア通じて使用歴あり。 |
Gibson Explorer | Gibson | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | エクスプローラー | キャリア全体で断続的に使用。詳細不明。 |
このようにAdrian Smithのギター遍歴は非常に多彩で、レスポール系の温かみとストラト系の切れ味を自在に使い分けることで、常に楽曲に最適なサウンドを提示してきました。その選択と活用法こそが、彼の音楽的個性を強く支えていると想定されます。
使用エフェクターとボード構成【UFO・Adrian Smith】
Adrian Smithのサウンドを支えるもう一つの大きな要素がエフェクターです。彼はMarshallアンプの力強い歪みに加え、ブースターやディレイ、コーラスといった空間系エフェクトを巧みに使い分けることで、メロディックかつ立体感のあるギタートーンを生み出しています。使用機材を見ていくと、基本はシンプルながらも、時代ごとのサウンド要求に応じて追加機材を導入してきたことが分かります。
まず必須とも言えるのが、Ibanez TS808やTS9 Tube Screamerです。2006年以降のライブではメインのブースターとして常に使用され、Marshallの歪みにさらにミッドを押し出す役割を果たしました。これにより、ソロ時にはリードが前に抜け出し、クラシックなメイデンサウンドをより強調しています。
また、ディレイはBOSS DD-2やDD-3といった定番モデルを長年にわたって使用。『Powerslave』期から現在に至るまで、リードプレイの余韻を演出する重要な役割を担っています。1980年代前半はIbanez Digital DelayやYamaha Analog Delayを併用していた記録もあり、ツアーごとに柔軟にセットを変えていたことがうかがえます。
コーラスについてはBOSS CE-3やCH-1 Super Chorusが代表的で、特に『Somewhere in Time』期のシンセライクなギターサウンドを支えました。復帰後のライブでもCH-1が確認されており、クリーントーンの広がりを出す場面で多用されています。さらに、Dunlop Cry Baby Wahは1982年以降の定番で、多くのソロに独特のニュアンスを与えています。
近年のレコーディングではDigiTech Eric Clapton CrossroadsやDigiTech Whammyを導入するなど、最新のデジタルエフェクトも柔軟に活用。さらにRoland GR-20 Guitar Synthesizerを導入し、シンセ的なリフや効果音を取り入れることで、より多彩な表現を実現しています。ラック機材としてはTC Electronic 2290やLexicon MX200、DBX 160X Compressorなども確認され、ライブでもMIDIコントローラーを駆使して複雑なセッティングを制御してきました。
このようにAdrian Smithのエフェクトボードは、「基本はシンプル+必要に応じてラックやデジタル機材を追加」というスタイルで一貫しています。常に自分のサウンドを支える核を崩さず、新しい要素を取り入れる柔軟さが彼の魅力です。以下に代表的な使用エフェクターをまとめます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Ibanez TS808 / TS9 Tube Screamer | Ibanez | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | オーバードライブ / ブースター | 2006年以降メインのブースターとして使用。 |
Dunlop Cry Baby Wah | Dunlop | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ワウペダル | 1982年以降の定番。ソロで頻繁に使用。 |
BOSS DD-2 / DD-3 Digital Delay | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ディレイ | 『Powerslave』期から現在まで使用。 |
BOSS CH-1 Super Chorus / CE-3 | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | コーラス | シンセ的サウンド演出。復帰後も愛用。 |
BOSS CS-3 Compression Sustainer | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | コンプレッサー / サスティナー | 『The Book of Souls』レコーディング頃から使用。 |
DigiTech Eric Clapton Crossroads | DigiTech | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | マルチエフェクター | 『The Book of Souls』録音で使用。 |
DigiTech Whammy | DigiTech | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ピッチシフター | コード対応のピッチシフトを活用。 |
Roland GR-20 Guitar Synthesizer | Roland | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ギターシンセサイザー | シンセ的なリフや効果音を追加。 |
TC Electronic 2290 Dynamic Digital Delay | TC Electronic | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ディレイ | ラックシステムで使用。 |
Lexicon MX200 | Lexicon | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 空間系マルチエフェクター | MIDI制御で使用。コーラス&ディレイ。 |
DBX 160X Compressor | DBX | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | コンプレッサー | ラックシステム内で使用。 |
Old Yamaha Flanger | Yamaha | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | フランジャー | 1980年代に使用。モジュレーション効果を追加。 |
このように、Adrian Smithのエフェクト構成は非常にバランスが取れており、基本を押さえながらも必要に応じて最新技術を導入する柔軟さが特徴的です。結果として、クラシックロックからモダンメタルまで対応可能な広い表現力を獲得していると想定されます。
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【UFO・Adrian Smith】
Adrian Smithの音作りは、クラシックなブリティッシュ・ハードロックの基盤を持ちつつ、近代的なメタルサウンドに対応できる柔軟さが魅力です。彼のサウンドを分析すると、アンプの基本設定、エフェクターの活用法、さらにはミックスでの処理まで一貫した考え方が見えてきます。
まずアンプのEQ設定ですが、Marshall系のヘッドを使う際にはミドルを厚めに残しつつ、トレブルをやや強めに設定するのが特徴です。これはIron MaidenやUFOのツインギター編成の中で、他のギター(Dave Murrayなど)の滑らかなサウンドと対比させるためでもあります。バンド全体でのサウンドの棲み分けを意識しており、Smithの音はより粒立ちがはっきりしていて、リフやソロで前に出てくる印象です。
具体的には、
Bass(低音域):4〜5
Middle(中音域):6〜7
Treble(高音域):7〜8
Presence:5〜6
Gain:6〜7
といった設定がライブやレコーディングでの基本値とされています。このようにローを絞り気味にすることで、バンド全体が低域で埋もれないように調整しています。
ブースターとして使用するIbanez Tube Screamerは、Driveを0〜2程度に抑え、Levelを7〜8まで上げる設定が多いと考えられます。これによりMarshallの歪みを押し出しつつ、輪郭を整えたタイトなミッドが得られます。特にソロでは、これが抜群の効果を発揮します。
ディレイについては、BOSS DD-3を用いたセッティングが代表的です。リピートは2〜3回程度、ディレイタイムは約350ms前後に設定され、リードソロに適度な残響を加えています。過度にディレイをかけるのではなく、「音の後ろに広がりを持たせる」程度にとどめるのがSmith流です。また、『Somewhere in Time』期ではコーラスとディレイを組み合わせ、シンセのような厚みをギターで表現していました。
ワウペダルはソロ時に積極的に使用されますが、フルスイープで派手にかけるのではなく、ニュアンスを付けるような中域寄りのコントロールが多いのが特徴です。これは彼のフレーズの歌心をさらに強調する役割を果たしています。
録音時の工夫としては、Randall Isolation CabやSM57マイクを使ったアイソレーション録りが確認されています。これにより、ライブの爆音でも安定したマイキング音質を確保し、ミックスでの再現性を高めています。さらに、ラックシステムの導入によってエフェクトをMIDIで制御し、曲ごとに異なるセッティングを瞬時に切り替えることが可能となりました。
エンジニア視点で言えば、Smithの音は「真ん中で存在感を持ちながら、バンド全体の低域と高域を侵食しない」ことが最大の特徴です。例えばIron Maidenの3ギター体制でも、彼の音はしっかりと判別可能で、これはEQバランスと演奏タッチの両面によるものです。録音時にはコンプレッションを強くかけすぎず、ダイナミクスを残してミックスに余裕を持たせる傾向も確認できます。
まとめると、Adrian Smithのセッティングの本質は「ミドルを生かしたタイトなMarshallトーン+ブーストによる輪郭強化+空間系の控えめな活用」にあります。これにより、リフの重さとソロの歌心を両立させることが可能になります。アマチュアが真似する際も、このバランスを意識することで、Smithらしいサウンドに近づけると想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【UFO・Adrian Smith】
Adrian Smithのサウンドは、Marshallアンプ+ブースター+空間系エフェクトという王道的な構成で作られています。そのため、必ずしも高額なシグネチャーモデルやヴィンテージ機材を揃える必要はなく、市販されている比較的安価な機材でも十分に近い音を再現することが可能です。ここでは、初心者〜中級者でも手に入れやすい価格帯(1〜10万円程度)の機材を紹介します。
まずアンプですが、Marshall DSLシリーズやCODEシリーズはおすすめです。特にDSL20やDSL40は、Adrianが使用していたJCM2000 DSL100の系譜にあたるため、似たようなミドルの押し出し感とタイトなディストーションが得られます。自宅練習用ならMarshall CODE25のようなモデリングアンプも良い選択肢で、内蔵エフェクトも活用できるため便利です。
ブースターにはBOSS SD-1やIbanez TS9 Tube Screamerが最適です。Adrian本人が長年使ってきたTube Screamerの系統は外せませんが、価格を抑えたいならBOSS SD-1でも十分に再現可能です。いずれもミッドレンジを強調してソロを前に出す効果があります。
ディレイはBOSS DD-3やDD-7が定番。シンプルなセッティングでも即戦力になり、ソロプレイ時に適度な奥行きを加えられます。空間系を強くかけすぎないのがポイントで、350ms前後のタイムに設定するとSmithらしい残響になります。
ワウペダルについては、Dunlop Cry Baby Standard(GCB-95)が最も定番です。Adrianのソロニュアンスを再現するには必須と言えます。細かいニュアンスはプレイ次第ですが、機材的にはスタンダードモデルで十分です。
さらにモダンな環境では、マルチエフェクターを導入するのも現実的な選択です。BOSS GT-1000 COREやLine 6 HX Stompは1台でアンプシミュレーションから空間系まで幅広く対応可能で、Adrian Smithのラック的な運用を簡易的に再現できます。
以下の表に、比較的安価に手に入れられる代替機材をまとめます。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
アンプ | Marshall DSL20 / DSL40 | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | JCM2000 DSL100の系譜で、近いサウンドを再現可能。 |
アンプ(モデリング) | Marshall CODE25 | Marshall | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 自宅練習用に最適。内蔵エフェクトも豊富。 |
オーバードライブ | BOSS SD-1 Super OverDrive | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | Tube Screamer系サウンドを安価に再現可能。 |
オーバードライブ | Ibanez TS9 Tube Screamer | Ibanez | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 本人愛用機材。ミッドを強調しソロを際立たせる。 |
ディレイ | BOSS DD-3T Digital Delay | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 定番ディレイ。350ms設定でソロに奥行きを追加。 |
ワウペダル | Dunlop Cry Baby Standard GCB-95 | Dunlop | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | 最も基本的なワウ。本人のサウンドに直結。 |
マルチエフェクター | Line 6 HX Stomp | Line 6 | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | ラック的な複雑な音作りを小型で再現可能。 |
マルチエフェクター | BOSS GT-1000 CORE | BOSS | Amazonで探す | UFO | Adrian Smith | アンプシミュから空間系まで万能。ライブでも活躍。 |
これらの代替機材を組み合わせれば、予算を抑えつつもAdrian Smithらしいタイトでメロディックなギターサウンドを実現できます。重要なのは「アンプのミドルを活かし、ブースターで輪郭を整え、ディレイとワウでニュアンスを加える」という基本の考え方を守ることです。そうすれば、初心者でも比較的簡単に彼の音に近づけると想定されます。
総括まとめ【UFO・Adrian Smith】

Adrian Smith(エイドリアン・スミス)の音作りを振り返ると、その本質は「クラシックなロックサウンドを基盤にしつつ、常に進化を続ける柔軟性」にあります。UFOやIron Maidenでの活動を通して彼が示してきたのは、単にギターのトーンを追求するだけでなく、バンド全体の音像の中で自分の役割を明確に位置付けるという姿勢でした。
ギター面では、1971年製のGibson Les Paul Deluxeから始まり、1980年代にはIbanez DestroyerやDean Baby MLといった個性的なモデルを経て、最終的にはJacksonのシグネチャーモデルに落ち着いていきました。これらの流れは、彼が「クラシックな太い音」と「モダンな演奏性」の両立を常に追い求めてきたことを示しています。
アンプに関しては、Marshall PlexiやJCM2000といった伝統的なモデルを軸に据えながらも、Gallien-KruegerやBlackstarといった異色の選択肢も導入。結果として、クラシックなブリティッシュ・サウンドに加えて、近未来的なシンセライクなサウンドや現代的なハイゲイントーンまで、幅広く対応できる柔軟性を獲得しました。
エフェクターでは、基本はシンプルながらも、必要に応じてラックシステムやマルチエフェクターを導入。特にTube Screamer、ディレイ、ワウという「三種の神器」を軸に据えつつ、時代ごとの要求に応じてシンセやピッチシフターを追加していきました。この「シンプルな核+柔軟な拡張」の哲学が、彼のサウンドを唯一無二のものにしています。
音作りにおいて最も重要なのはEQのバランスです。Adrian Smithは常にミドルを活かすことを重視し、ツインやトリプルギター体制の中でも自分の音が埋もれないように工夫しています。低音域を抑えてタイトにまとめ、高音域で粒立ちを出すことで、リフの迫力とソロの歌心を両立させているのです。
これらを総合すると、Adrian Smithの音作りを再現するために必要なのは「豪華な機材」そのものではなく、サウンドの方向性を理解し、自分の環境でバランスを取る工夫だと言えます。安価なアンプやエフェクターでも十分に近いサウンドは作れますし、重要なのは演奏のタッチと音作りの哲学を意識することです。
最後に強調したいのは、Adrian Smithの音の魅力は「テクニックの速さ」ではなく、「楽曲に寄り添うメロディックな表現力」にあるということ。読者の皆さんも、彼の使用機材やEQの工夫を参考にしつつ、自分自身の演奏スタイルに落とし込んでみてください。それこそが、Adrian Smith流の音作りを再現するための最短ルートだと想定されます。
下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
🎸 ギター
Fender American Standard Stratocaster (Sunburst)
1999年以降メイン。フロイドローズ、ブリッジにDiMarzio Super Distortion、ネック&ミドルにSRV Texas Special。Fishman TriplePlay搭載例あり。
Gibson Les Paul Deluxe (Goldtop, 1971年製)
初めての本格ギター。ブリッジPUをDiMarzio Super Distortionに交換。現在も使用、「最高のギター」と評する。
Jackson Adrian Smith Signature San Dimas Dinky (White)
2007年登場のシグネチャー。Floyd Rose、ブリッジDiMarzio、ネック&ミドルにFender Samarium Cobalt Noiseless。以降のメイン機。
Jackson USA Signature Adrian Smith San Dimas SDQM (Green Burst)
2017年以降使用。ブリッジSeymour Duncan JB-4、ネック&ミドルSamarium Cobalt。フレイムメイプルトップ。
Ibanez Destroyer (Red)
1980年代前半のメイン。『Number of the Beast』録音、「Run to the Hills」MVなどで使用。ピックアップはDiMarzio系。後にJacksonが「X-Stroyer」として再現。
Gibson Les Paul Custom (Black)
2000年頃から使用。『The Wicker Man』MVで登場。PAF系PU搭載。
Dean Baby ML (Cherry Burst)
1983〜1999年。World Pieceツアー、ブルース・ディッキンソンソロでも使用。
Jackson Custom Adrian Smith Prototype (1986, White)
『Somewhere in Time』ツアー前に製作。Floyd Rose、ブリッジDiMarzio、ノイズレスPU。現シグネチャーの原型。
Gibson SG Standard (1970年代, Walnut)
1983年以降使用。現在はDrop-Dチューニングで「The Number of the Beast」用。ピースマークのステッカー付き。
Charvel San Dimas (Black)
1986年「Wasted Years」MVで使用。1ハムPU+Floyd Rose。
Lado Earth (Silver Burst)
1984〜1988年。Powerslaveツアーで使用。ブリッジをDiMarzio Super Distortionに交換。Explorer系シェイプ。
Jackson King V
ブルース・ディッキンソンのソロや特定ツアーで使用。Dチューニング設定。
Gibson Flying V
メイデン以外でも使用歴あり。詳細は不明。
Gibson Explorer
キャリアを通して使用。詳細不明。
🔊 アンプ
Marshall Super Lead(1959 Plexi, 100W)
1983年World Pieceツアーで使用。初期は50W、その後100Wへ。
Gallien-Krueger 250ML
1986〜1988年に使用。小型ながら100W出力、内蔵コーラス&エコー。『Somewhere in Time』『Seventh Son』期。
Marshall JMP-1(MIDIプリアンプ)
メイデン復帰後に導入。2010年頃まで使用。
Marshall JVM410H
JMP-1の後に採用。4チャンネル、幅広いサウンド。
Marshall JCM2000 DSL100
2010年頃のツアーで使用。具体的なEQセッティング記録あり。
Marshall 6100LM 30th Anniversary
100Wオールチューブ、2台使用。
Blackstar HT-5
『The Final Frontier』『The Book of Souls』録音で使用。
Blackstar Series One(100W 1046L6 / 104EL34)
同上アルバムで使用。
Marshall 1960A/B キャビネット
Celestion G12-T75搭載、4×12仕様。
Randall Isolation Cabs
SM57マイキング。『En Vivo!』ツアーなどで使用。
Marshall 9200 Dual Monoblock Power Amp
ラックシステムで使用。
🎛️ エフェクター
Ibanez TS808 / TS9 Tube Screamer
2006年以降メインのブースター。ラックマウント2台体制。
Dunlop Cry Baby Wah
1982年以降の定番。多数楽曲のソロで使用。
Boss DD-2 / DD-3 Digital Delay
『Powerslave』期〜現在まで使用。リード時中心。
Ibanez Digital Delay / Yamaha Analog Delay
1980年代前半ツアーで使用。
Boss CH-1 Super Chorus / CE-3
シンセ的サウンドを演出。CH-1は復帰後も使用。
Boss CS-3 Compression Sustainer
『The Book of Souls』レコーディング頃から使用。
DigiTech Eric Clapton Crossroads
『The Book of Souls』録音で使用。
DigiTech Whammy
ピッチシフター、コード対応。
Roland GR-20 Guitar Synthesizer
シンセサウンド用。80年代〜。
Dunlop Uni-Vibe Wah Controller
ワウコントロール用。
Boss, Yamaha, Korg 各種MIDIコントローラー
複雑なライブセッティング制御用。
TC Electronic 2290 Dynamic Digital Delay
ラックで使用。
Lexicon MX200
コーラス&ディレイ。MIDI制御。
DBX 160X Compressor
ラックシステム内で使用。
ADA MP-1 MIDI Preamp
ラック使用。
Shure U4 Wireless Receiver
ワイヤレスシステム。
Whirlwind Multi-Selector 4ch
ギター切替用。
Mike Hill B.I.S. Isolation Box
アイソレーション用。
Old Yamaha Flanger
1980年代使用。
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