始めに(特徴紹介)
サザンオールスターズのフロントマンとして、作詞・作曲・ボーカルを務める桑田佳祐さんは、その多才さゆえにギタープレイヤーとしての側面が注目されがちではありませんが、実はサザンのサウンドの核を担う重要なギタリストでもあります。
彼のギターサウンドの特徴は「楽曲ごとの世界観を的確に演出する柔軟性と選択力」にあります。エレキからアコースティック、ストラトからフルアコ、テレキャスからレスポールまで、あらゆるギターをシーンごとに使い分けるスタイルは、ギタリストというよりアレンジャー的なセンスに近く、リズムのキレやコードワークの奥深さが光ります。
例えば「希望の轍」のような爽やかな楽曲では、ローポジション中心のカッティングとナチュラルなストラト系サウンドを活かし、一方で「ROCK AND ROLL HERO」ではギブソンSGやレスポールを用いたパワフルな歪みトーンが登場するなど、場面ごとに見事なまでの使い分けを見せています。
サザンのライブでは、アンコールや演出重視のナンバーでPRS S2や赤テレキャスなども登場し、楽曲の雰囲気に合わせたビジュアル演出の一環としても機材を選んでいます。
また、アコースティックギターに関しても、Martin HD-28VやK.ヤイリ BL-150SPなど、音響的にもビジュアル的にもこだわりを感じさせるモデルが多数登場しており、弾き語り用とバンド演奏用で明確に使い分けがされています。
ギターの音色そのものに過度な個性を求めるのではなく、「曲を完成させるための音作り」として徹底して機材を選び、活かすスタンスこそが桑田佳祐さんのギターサウンドの真骨頂です。
このような「引きの美学」とも言える姿勢が、サザンの膨大な楽曲群を支える屋台骨になっているのです。
使用アンプ一覧と特徴【サザンオールスターズ・桑田佳祐】
桑田佳祐さんのギターアンプに関する情報は、他の著名ギタリストと比較して表に出にくいものの、ライブやMV、スタジオセッションでの映像から複数のアンプ使用が確認されています。
特に近年では「ライン録音やマイク録りのバランス」を重視した、場面ごとに最適なアンプを選択する傾向が見られ、ギターそのもののキャラクターを前面に出しすぎないフラットでニュートラルなアンプを軸にしていると考えられます。
代表的なアンプの一つが、Roland JC-120です。クリーントーンの代表格として知られるこのアンプは、桑田さんのような多ジャンルを横断する楽曲構成にぴったりで、「波乗りジョニー」「TSUNAMI」などのクリスタルクリーンなアルペジオやストロークには不可欠な存在です。ライブでもクリーントーンの基本セットアップとして長年使用されてきました。
歪みやドライブ感を必要とする曲では、Fender Twin Reverbや、VOX AC30の使用も一部で確認されています。いずれも伝統的な真空管アンプで、コンプ感のある中域と反応性の良さから、桑田さんのコードワークに非常にマッチします。
また、近年の無観客ライブなどでは、ステージ音圧のコントロールと音質の安定性を考慮し、KemperやLine 6 Helixといったモデリングアンプ/アンプシミュレーターの導入も示唆されており、特にSchecter使用時などに歪み系サウンドを安定して再現するために併用していると推測されます。
桑田さんのアンプセレクトには「派手さ」よりも「実用性」「再現性」「整合性」が重視されており、ギターごとの特性を引き立てる役割をアンプに担わせているのが特徴です。
使用ギターの種類と特徴【サザンオールスターズ・桑田佳祐】

桑田佳祐さんのギターコレクションは非常に幅広く、ジャンルレスな楽曲群に合わせて多彩なギターを使い分けるスタイルが特徴です。
エレキギターでは、特に「ROCK AND ROLL HERO」や「希望の轍」など、時代ごと・楽曲ごとにギターを使い分けており、Fender、Gibson、PRS、PGM、Schecter、Rickenbackerなど、メーカーも実に多様です。
まず初期からの使用で確認されているのが、Paul Reed Smith Standard 24。1996年の『ザ・ガールズ万座ビーチ』での使用が確認されており、モダンで滑らかなサウンドが特徴です。また、PRS S2 Singlecutは2011年MV「それ行けベイビー!!」や「100万年の幸せ!!」でも登場し、サザンのアンコールでの使用率が高い一本です。
Fender系では、Stratocasterを中心に、Custom Shop製の1960モデルや、Telecaster Paisley Red(1968)、Telecaster Custom、Fender CS製のテレキャスまで幅広く使い分けられています。派手な見た目のテレキャスはステージ映えを意識した選択であり、演出重視の楽曲に登場します。
中でもファンに人気が高いのが、PGM製のTelecaster Customタイプで、黄色のボディに黒のピックガードが特徴。「希望の轍」などローポジ中心のコードバッキングに多用され、ナチュラルなストラト系のサウンドが持ち味です。
一方、ラウドなパワーコード系の楽曲では、Schecter AC-KK/SIG(プロトタイプ)が登場。「CRY 哀 CRY」「力道山」などのヘヴィ寄りの楽曲で使用され、ラメ入りピックガードと青いボディが印象的なモデルです。
また、Gibson Les Paul Standard / Custom、SG、ES-330 / ES-335、Epiphone Casinoなど、Gibson系のギターも多くのスタジオレコーディングやライブで登場。特にCasinoやES系は、暖かくて奥行きのあるトーンを生かした演奏に活用されており、サザンのレイドバックな楽曲でその真価を発揮しています。
アコースティックでは、Martin HD-28Vが弾き語りの定番として多くのライブに登場。その他、Gibson J-200、J-160E、Dove、Hummingbird、ヤイリ、Guildなど、多彩なアコギを楽曲ごとに使い分けています。
「東京VICTORY」や「明日晴れるかな」では、Gibson DoveやHummingbirdの登場が印象的で、温かみのあるコード感とサザンらしいポップ感を同時に演出しています。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
PRS S2 Singlecut Standard Satin | PRS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | エレキギター | MV「それ行けベイビー!!」などで登場。ステージでの登場頻度高め |
Telecaster Custom | Fender | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | エレキギター | 「ROCK AND ROLL HERO」録音で使用。ダブルハム構成 |
AC-KK/SIG | Schecter | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | エレキギター | ヘヴィサウンド用プロトタイプ。歪み系サウンドで登場 |
Martin HD-28V | Martin | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | アコースティックギター | 「東京VICTORY」「栄光の男」などの弾き語りで使用 |
Dove | Gibson | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | アコースティックギター | ジャケット写真でも頻出。温かみのあるコード感が魅力 |
使用エフェクターとボード構成【サザンオールスターズ・桑田佳祐】
桑田佳祐さんのライブやレコーディングでの音作りにおいて、エフェクターの役割は非常に重要です。ただし彼のスタイルはテクニカルなソロプレイヤーとは異なり、「曲全体の雰囲気を支える」ためのセッティングが中心。そのため、エフェクターボードも音作りの要素としてはシンプルかつ実用性重視の構成となっているのが特徴です。
まずディレイやリバーブなどの空間系は欠かせません。代表的な使用モデルとしてはBOSS DDシリーズ(デジタルディレイ)やTC Electronic Hall of Fame(リバーブ)が挙げられます。これらはコードワークの際に空間的な広がりを持たせ、バッキングの質感を強調するために使用されるケースが多いと考えられます。
また、ソロやパワーコードの歪み系サウンドにおいては、オーバードライブ系の定番であるIbanez TS9やBOSS OD-3などが使用された可能性があります。特にSchecterの歪み強めのギターとの相性を考えると、ピッキングニュアンスを活かせるオーバードライブは自然な選択です。
一方、PGM製テレキャスなどクリーン〜軽めのクランチで鳴らしたい場合には、ブースターやEQ系ペダルを併用することで、低出力PUの特性を補正していると考えられます。BOSS GE-7(グラフィックEQ)なども候補に入るでしょう。
ステージ演出で頻出するコーラスやモジュレーション系としては、MXR Phase90やElectro-Harmonix Small Cloneなどが想定されます。とくに「Ya Ya(あの時代を忘れない)」などでのスローなコード進行にうっすらかける空間系は、サザンの魅力のひとつです。
そのほか、アンプシミュレーター系の使用も近年では考えられ、Line6 HX StompやBOSS GTシリーズといったマルチエフェクターも導入されている可能性があります。特に2020年以降の無観客ライブなどではデジタル機材の使用率が増えており、宅録にも対応したセッティングになってきています。
桑田さんの場合、足元のボードは「必要最小限で最大効果」を意識した堅実な選択肢が多く、彼の音楽性と非常にマッチした構成と言えるでしょう。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
DD-8 Digital Delay | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | ディレイ | バッキングの奥行き感を演出するための定番ディレイ |
OD-3 OverDrive | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | オーバードライブ | ナチュラルな歪みでコードバッキングにも最適 |
GE-7 Equalizer | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | イコライザー | PUの出力補正や音作りの微調整用に活用 |
Small Clone | Electro-Harmonix | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | コーラス | スローバラードや雰囲気重視の楽曲で使用される想定 |
HX Stomp | Line 6 | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | マルチエフェクター | 無観客ライブ・宅録環境での使用が想定される |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【サザンオールスターズ・桑田佳祐】

桑田佳祐さんの音作りの真髄は、「歌の邪魔をせず、かつ個性を際立たせる」という、極めて音楽全体に配慮したギタープレイにあります。ギターサウンド単体で派手に目立つことよりも、楽曲の中で溶け込むように機能する音色作りが徹底されており、PAやミックスエンジニアの観点から見ても非常にバランスのとれたセッティングです。
まず、EQに関しては中域重視のナチュラルなトーンが基本です。特にライブではボーカルとぶつからないよう、3〜5kHz付近の帯域を抑え、代わりに500Hz〜1.5kHzを程よく持ち上げるセッティングが理想的とされます。これにより、ギターが「後ろから支える」役割を果たしながらも、存在感を保つことができます。
使用アンプがクリーン志向である場合、ギター側のトーンコントロールは6〜7程度で調整されることが多く、さらにピックアップのセレクターによってサウンドキャラクターを大きく変化させています。特にFender Telecaster Custom系を使用する際は、フロントPUの甘さとリアPUの切れ味を曲によって巧みに使い分けている印象です。
たとえば、「希望の轍」ではナチュラルなクリーンサウンドを軸に、ローポジションでのコードストロークを活かすため、若干コンプレッション感を出すようなマイルドなブーストが加えられていると考えられます。一方、「CRY 哀 CRY」のようなパワーコード主体の楽曲では、Schecterのラウドな出力にマッチするよう、ミッドを中心に歪みと厚みを出すセッティングがなされています。
また、エフェクト処理としては、コーラスやスローなディレイをうっすらかけることで、「懐かしさ」「優しさ」「ノスタルジー」を演出。ミックス段階では、空間系エフェクトはセンド/リターンでかけられ、メインボーカルとの距離感を意識した処理が施されていることが多いです。
アンプのチャンネル設定については、クリーンチャンネル+ブースターで必要な歪みを得る手法が主流で、Gainを上げ過ぎずに弾き方でニュアンスを出すことが重視されています。特に無観客ライブやテレビ収録などでは、Line録り・モデリング機器を駆使しており、EQ設定のプリセットを複数用意して曲ごとに切り替える運用がされている可能性が高いです。
ミックスにおいては、左右パンの使い方も非常に計算されており、桑田さん自身がセンターのボーカルを務める中で、ギターはLRいずれかに振られて定位の分離が保たれています。また、ギターに過度なコンプレッションをかけることは少なく、自然なアタック感を残す方向で処理されている傾向です。
このように、桑田佳祐さんのギター音作りは、演奏者としてだけでなく「作曲家・プロデューサー」としての視点が反映された、非常に音楽全体志向の高いセッティングといえます。
比較的安価に音を近づける機材【サザンオールスターズ・桑田佳祐】
桑田佳祐さんの音色を再現したいと考えるギタリストにとって、ポイントとなるのは「万能性の高いクリーン〜クランチサウンド」「場面に応じたギターのキャラクター切り替え」「さりげない空間系の使い方」です。以下では、比較的入手しやすく、かつ再現度の高い機材をピックアップして紹介します。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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ギター | PACIFICA112V | YAMAHA | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | コイルタップ付きのSSH構成で多彩なサウンドを再現可能。ストラトやテレキャス系の音もカバーでき、コスパ抜群。 |
ギター | TE-200 | ESP LTD | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | テレキャスタータイプで、PGM Telecasterの代替候補に。ダブルハム搭載で歪み系楽曲にも対応。 |
アコースティックギター | FG830 | YAMAHA | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | 音の厚みとバランスに優れたドレッドノートタイプ。Martin HD-28Vのような芯のあるサウンドを再現しやすい。 |
プリアンプ/アンプシミュレーター | Zoom G3Xn | Zoom | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | 豊富なアンプ/キャビネットモデルで、テレキャス~ストラト、SG系の音も柔軟に再現可能。ライブ・宅録向け。 |
リバーブ | RV-6 | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | 複数モードで曲の雰囲気に合わせたリバーブ演出が可能。空間系の基本機材として最適。 |
オーバードライブ | BD-2 | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | ナチュラルなドライブ感で「CRY 哀 CRY」などラウド系の歪みに近い質感を演出。ゲイン設定次第で幅広く使える。 |
ディレイ | DD-3T | BOSS | リンク | サザンオールスターズ | 桑田佳祐 | 繊細なタップテンポ対応で、軽いディレイを加えるサザンのサウンドにぴったり。 |
これらの機材を組み合わせることで、10万円以下の予算でも桑田佳祐さんの「楽曲ごとに変化するギターサウンド」をかなり近い形で再現可能です。特にBOSS製品はクセが少なく、ライブや宅録どちらにも対応しやすいので初心者にもおすすめです。
総括まとめ【サザンオールスターズ・桑田佳祐】

桑田佳祐さんのギタープレイは、歌モノを最大限に引き立てるという意味で非常に奥深く、緻密に設計された音作りが光ります。決してテクニカルなソロや派手なリフで目立つスタイルではなく、楽曲全体の世界観を壊さずに、それでいてしっかりとギターの存在感を残す──そんなバランスの巧みさが、サザンオールスターズの長年の人気を支えている重要な要素です。
彼の音作りを再現する際に最も重要なのは、「シンプルかつ場面ごとに的確な音色選択」を行うこと。テレキャスやストラトを中心に、時にはセミアコ、時にはフルアコやジャズギターも織り交ぜる選択眼は、ジャンルレスで多彩なサザンの楽曲に寄り添った結果です。
また、エフェクターの使い方も非常に抑制が効いており、空間系は必要最低限、歪みは軽く押さえることでボーカルの前に出すぎない音像を常にキープしています。これはまさに「引き算の美学」とも言えるアプローチで、ギターをただ“鳴らす”のではなく“歌の中で活かす”ための美意識が随所に表れています。
ライブにおいては、演出性も大きな要素。赤いテレキャスターのように視覚的な印象重視のギターを用いたり、MVや楽曲コンセプトに合わせて機材を使い分ける柔軟さも、サザンならではの多彩な演出に繋がっています。
音作りを志す読者にとっては、「何のためにこの音を選ぶのか」という視点を学ぶ絶好の教材になるでしょう。桑田佳祐さんのプレイスタイルを真似ることは、単なるコピーではなく、表現者としての姿勢を学ぶことでもあります。
機材を通じて音を作る際は、「この楽曲にはどんな響きが合うか?」「どの帯域を出せば歌を引き立てられるか?」というように、彼が意識していたであろう細部への気配りを想像しながらセッティングすると、より本質に近づけるでしょう。
シンプルながらも表情豊かなトーン、楽曲全体を俯瞰したミックス意識、それこそが桑田佳祐というギタリストの真髄なのです。
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