始めに(概要と目的)
バンド練習やライブの現場でエレキギターで「アコースティックな響きがほしい」と思ったことはありませんか?そんなときに活躍するのが、エレキギターでアコースティックギター風の音を出すための「アコースティックシミュレーター」です。
本記事では、BOSSの AC-3 などのエフェクターを使った方法はもちろん、近年人気の Kemper Profiler を使ったアプローチまで幅広く解説します。
「Kemperでアコギの音って作れるの?」「ライブでアコギを持ち替えずに済む方法は?」といった疑問を持つギタリストに向けて、実践的な機材情報や音作りのテクニックを紹介していきます。
本記事では、以下のようなポイントを解説します:
- アコースティックシミュレーターの概要とおすすめ機材
- Kemperを活用したアコースティックサウンドの構築方法
- EQやキャビネット設定のコツ
- 初心者〜中級者向けの代替手段やセッティング例
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アコースティックシミュレーターとは
アコースティックシミュレーターとは、エレキギターのサウンドをアコースティックギターのように加工するためのエフェクターです。エレキのピックアップから得られる信号にEQやフィルター処理を加えることで、煌びやかで自然なアコースティック風の音に近づけることができます。
代表的な製品としては BOSS AC-3 があり、ストロークプレイやアルペジオにも適した自然な鳴りが得られるため、多くのギタリストに愛用されています。スイッチひとつでクリーントーンからアコースティックサウンドへと即座に切り替えられるのが最大の魅力です。
シングルコイルピックアップを搭載したギターとの相性が良く、特にフロントポジションでの演奏時により自然なアコースティック感を演出できます。逆にハムバッカーではややこもった印象になるため、EQやピックアップセレクターの調整がカギとなります。
また近年では、アコースティックシミュレーターの機能をマルチエフェクターやアンプシミュレーターに内蔵している機種も多く、Kemper のようなデジタルプロファイラーにもアコギモデリング機能が追加されています。
アコースティックギターのサウンドメイクは、単にエフェクトをかけるだけでは再現できない奥深さがありますが、適切なツールを用いることでバンドアンサンブルや弾き語りシーンにおいて十分に通用する音色を作ることができます。
おすすめのアコースティックシミュレーター機材

ここでは、エレキギターでアコースティックサウンドを再現するために有用な、おすすめのアコースティックシミュレーター機材を紹介します。いずれもライブ・レコーディングを問わず、多くのプレイヤーに支持されている信頼性の高い製品です。
BOSS AC-3 Acoustic Simulator
BOSS AC-3 は、アコースティックシミュレーターの代表的なモデルです。「Standard」「Jumbo」「Enhance」「Piezo」など4種類のサウンドモードを搭載し、ギターの特性や用途に応じて設定可能です。コンパクトペダルとしては異例のステレオ出力に対応しており、空間系エフェクトとの相性も抜群です。
Zoom A1X Four〈使用未確認/推定〉
Zoom A1X Four はアコースティック楽器に特化したマルチエフェクターで、ギター以外にもバイオリンやサックス用のプリセットを搭載しています。アコギ向けの自然なEQカーブと空間系エフェクトが豊富で、コストパフォーマンスにも優れています。
Line6 Helix / HX Stomp〈使用未確認/推定〉
高性能マルチエフェクターである HX Stomp や Helix には、アコースティックモデリングプリセットが存在します。複数のエフェクトを同時に駆使しながら、精細な音作りが可能で、シーンに応じた柔軟なセッティングを構築できます。
Kemper Profiler(アコースティックシミュ内蔵)
詳細は後述しますが、Kemper ProfilerにもOS 7.5以降でアコースティックシミュレーターが標準搭載されました。Pickup・Body・Bronze・Sparkleといった4つのパラメータを駆使し、リアルなアコギ風サウンドを再現できます。外部IRを使わず、単体で実用レベルのアコースティックモデリングが可能なのが魅力です。
このように、選択肢は広く、予算・用途・セッティングの柔軟性などに応じて選ぶことができます。次のセクションでは、Kemperを使ったアコースティックサウンドの作り方にフォーカスして解説します。
Kemperを使ったアコースティックサウンドの作り方

Kemper Profiler はプロ仕様のアンププロファイラーとして有名ですが、OSバージョン7.5以降には「Acoustic Simulator」という専用エフェクトも追加されています。この機能を使えば、エレキギターでもアコースティック風サウンドを構築可能です。
アコースティックシミュレーターはEQカテゴリーに属しており、パラメータは「Pickup」「Body」「Bronze」「Sparkle」の4つに分かれています。これらはそれぞれボリューム、低音域、中音域、高音域に近い役割を果たします。設定次第でシングルコイルにもハムバッカーにも対応できますが、基本的にはシングルコイルのほうが自然な響きになります。
具体的な使い方は以下の通りです:
- エフェクトスロットの1つに「Acoustic Simulator」を挿入
- 「Pickup」は10に設定し、アタック感を強調
- 「Body」は5〜7で太さを調整
- 「Bronze」は低音域の丸み、「Sparkle」は高音域のきらびやかさを調整
サウンドの元になるアンプとキャビネットの設定にも注意が必要です。アコースティック感を出したい場合は、キャビネットセクションを「OFF」にして、よりクリアなトーンを狙うのがポイントです。コンプレッサーを前段に配置することで、ピッキングのニュアンスを整えるのも効果的です。
また、Kemperでは「Parallel Path」や「Parallel Mix」機能を使うことで、アコースティック処理後の音と元の音をブレンド可能です。これにより、不自然さを避けながらリアルなサウンドを構築できます。設定値の例としては、「Parallel Mix」を-4dB程度にしてバランスをとると良い結果が得られます。
アコギ風サウンドの使用シーンとしては、アコースティックセクションが短時間しか登場しないライブセットなどに最適です。わざわざアコギを持ち替える手間を省きつつ、十分なクオリティで対応できます。
Kemperの設定例とセッティングポイント

Kemper Profilerでアコースティックサウンドを追求するうえで重要なのが、具体的なセッティングです。このセクションでは、筆者が実際に試してみて効果的だった設定例と、各パラメータのポイントを紹介します。
【エフェクトスロット設定】
- Stomp A: Compressor(アタックを均一化)
- Stomp B: Acoustic Simulator
- EQ: Graphic EQ で800Hzカット、4kHzブースト
- Delay / Reverb: Roomリバーブを軽めに設定(Mix 20%程度)
【Acoustic Simulatorのパラメータ例】
- Pickup:9.5(ピッキングのアタック感を出す)
- Body:6.0(低域の膨らみを適度に加える)
- Bronze:4.5(アコースティックの芯を調整)
- Sparkle:5.5(高域の抜け感を調整)
この設定では、煌びやかで明るい印象を持たせつつ、低域の薄さを補うことができます。Pickupの値はピックアップのタイプによって調整が必要で、シングルコイルでは控えめに、ハムバッカーでは最大に近づけるのがコツです。
また、Cabinetは基本的にOFFに設定して、アコースティックの原音を邪魔しないようにします。さらに、Ampセクションも「Clean Sense」を高めに設定し、歪みが発生しないように注意してください。
Parallel Pathを利用する場合、「Mix」パラメータを-3.5〜-5.0dBに設定し、アコギ音と原音をバランスよくミックスすることで、よりリアルなダイナミクスを実現できます。
これらの設定はあくまで一例ですが、アンサンブルの中でしっかりと抜けてくるナチュラルなアコギサウンドを作りたい方には大変おすすめです。Kemperならではの柔軟な編集機能を活かしながら、自分に合った音作りを追求してみてください。
ライブやレコーディングでの活用方法
アコースティックシミュレーターやKemperによるアコギ風音作りは、ライブやレコーディングといった現場で非常に役立ちます。特に「ライブで1曲だけアコギが必要」「宅録でアコギを用意できない」といったシチュエーションでは、その手軽さと実用性が光ります。
ライブでの活用
ライブでは、Kemperにあらかじめ設定を組んでおき、セットリストの中でアコギ的なサウンドが必要な場面でフットスイッチ一発で切り替えるだけ。実機アコースティックギターへの持ち替えが不要になるため、セッティングの手間やステージ上の動線も最小限に抑えられます。
アコースティックセクションのある曲が数曲しかないバンドでは、この方法が最も効率的です。特にBOSS AC-3やKemperといった安定した機材であれば、ノイズや不具合の心配も少なく、本番でも安心して使えます。
レコーディングでの活用
自宅録音やプリプロでは、アコギを持っていない、あるいは環境的にマイク録りができないケースもあるでしょう。そういった場合、Kemperやプラグイン型のアコースティックシミュレーター(例:Re-Guitarなど)を使えば、DI収録のエレキ信号をアコギ風に加工することができます。
また、マイク録音のようなルーム感や空気感が必要な場合には、EQやリバーブを工夫してリアルさを補う方法もあります。具体的には、800Hzを少し削り、4kHzあたりを軽くブーストすることで、ピエゾピックアップのようなエッジの効いた質感を再現できます。
さらに、レコーディングでは複数のトラックを重ねることができるため、「アコースティックシミュレーターのトーン」+「エレキの生音をマイクで拾ったもの」をブレンドすることで、より立体的なサウンドが得られます。
このように、シミュレーターやKemperのアコースティック機能は「ライブの簡略化」と「宅録の幅を広げる」という2つの大きなメリットを提供してくれます。状況に応じて柔軟に活用していきましょう。
まとめ(再現ポイントと実践のヒント)

エレキギターでアコースティックギターのサウンドを再現する方法は多岐にわたりますが、最も手軽で効果的なのはアコースティックシミュレーターやマルチエフェクターの活用です。特に BOSS AC-3 や Kemper を使用することで、演奏スタイルを変えることなく自然なアコギ風サウンドを得ることができます。
Kemperの場合は、Acoustic Simulatorを適切に設定し、キャビネットやアンプの処理を最適化することで、非常にリアルな音像が得られます。Pickup・Body・Bronze・Sparkleの4パラメータは繊細に調整する必要がありますが、その分サウンドの自由度が高く、幅広いプレイスタイルに対応可能です。
また、ライブではギターの持ち替え不要という点で大きなメリットがあり、レコーディングでは宅録環境でも高品位なアコギサウンドが実現できるため、非常に実用的です。
以下に、本記事で紹介した再現ポイントを簡単に整理します:
- アコースティックシミュレーターはEQと空間系が鍵
- KemperではAcoustic Simulator + Cabinet OFF + Parallel Mixが重要
- シングルコイルの方がアコギっぽさを出しやすい
- ライブでは切り替えやすさ、録音では後処理のしやすさがポイント
アコースティックギターのような煌びやかな音色を必要とする楽曲に、エレキギターで対応したいと考えている方は、今回紹介した機材やセッティングをぜひ一度試してみてください。予算や環境に合わせて、自分に最適な音作りを見つけていきましょう。
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