始めに(特徴紹介)
橋本絵莉子(はしもと えりこ)は、ガールズロックバンド「チャットモンチー」のギターボーカルとして唯一無二の存在感を放ったギタリストです。彼女のギターサウンドは、ストレートなロックと繊細なメロディの融合が特徴で、ガレージ的な粗さの中に、実は非常に計算された音作りが施されています。
チャットモンチーの代表曲「シャングリラ」「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」「世界が終わる夜に」などでは、橋本の手による鋭くもメロディアスなカッティングと、時に轟音すら生むディストーションが印象的です。特に、Divided by 13アンプのクリーンにProvidenceのオーバードライブを組み合わせた後期の音作りは、洗練されたトーンの中に彼女らしい粗さと色気が共存しており、多くのファンを魅了しました。
また、初期のRAT2やBD-2(Keeley MOD)を用いた激しい歪みや、RE-20などのディレイを駆使した浮遊感ある音も忘れがたく、シンプルな編成の中で音の幅を広げる創造力に長けたギタリストであることがよく分かります。
この記事では、橋本絵莉子の音作りを構成する機材とセッティングについて、実際のライブやレコーディングでの使用例をもとに、アンプ・ギター・エフェクターの視点から詳しく解説していきます。
使用アンプ一覧と特徴【チャットモンチー・橋本絵莉子】
橋本絵莉子のアンプ選びは、彼女のサウンドの進化とともに変遷を遂げてきました。初期にはMATCHLESS DC-30を愛用し、バンド初期のラウドでエッジの効いたガレージロックサウンドを支えていました。このアンプはカスタムされており、フロントパネルに「CHATMONCHY」と文字が施されたオリジナル仕様であることが確認されています。
その後、2008年以降はDivided by 13 JRT 9/15がメインアンプとして定着。クリーンからクランチまで滑らかなトーンを持ち、Providence SOV-1との組み合わせでチャットモンチー後期の核となるサウンドを作り上げています。Divided by 13のキャビネットはオープンバックで、空気感のあるサウンドが特徴です。
ライブや録音においてはRoland JC-120やVOX AC15C1の併用も確認されています。特にJC-120はクリーントーンのベースとして用いられ、AC15は原音の太さや中域補強の役割を果たしていました。2人体制に移行して以降、サウンドの厚みを補うためにループ出力で複数アンプを使い分けるスプリットセッティングが採用されたのも、橋本ならではの工夫といえるでしょう。
その他、Fender Hot Rod Deville 410やMarshall JCM800も一部ライブ・レコーディングで使用された形跡があります。特にJCM800は、曲によってはよりハードなサウンドが求められる際に導入されていたようです。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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JRT 9/15 | Divided by 13 | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 2008年以降のメインアンプ。オープンバックキャビとの組み合わせが特徴 |
JC-120 | Roland | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | クリーントーン用。ループ出力併用で2人体制以降に活躍 |
AC15C1 | VOX | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 中域補強とクランチ用。JC-120との併用あり |
DC-30 | MATCHLESS | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 初期メインアンプ。カスタム仕様 |
Hot Rod Deville 410 | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 補助アンプとして導入。詳細用途不明 |
JCM800 | Marshall | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | レコーディング用。ハードな楽曲で活躍 |
使用ギターの種類と特徴【チャットモンチー・橋本絵莉子】

橋本絵莉子のギターサウンドの核心には、Fender製のTelecasterが大きく関与しています。3人体制時代はFender American Telecaster(3-Color Sunburst)やStandard Telecaster(1983年製)を中心に使用しており、歯切れの良いカッティングと攻撃的なコードストロークに最適な選択でした。太く張りのある音が魅力で、当時の代表曲「シャングリラ」「恋愛スピリッツ」などでもそのテレキャスターサウンドが堪能できます。
2人体制に移行してからは、Fender Telecaster Thinline(ブラック・ハムバッカー仕様)がメインに。このモデルはセミホロウ構造により中低域が豊かで、Divided by 13のナチュラルなクリーン/クランチトーンと組み合わせることで、ソリッドかつ温かみのあるギターサウンドを実現しています。さらにFender Road Worn ’50s Telecaster(2008年製)など、使い込まれた風合いのモデルも選択しており、ヴィンテージ志向が感じられます。
高級機種としてFender Custom Shop製のゴールドテレキャスもライブで使用され、サウンドだけでなくルックス面でも魅せる意識が見られます。また、Psychederhythm製のStandard-TやJourneyman STV-AMLといった個性派モデルも時折導入されており、橋本のギター選びが「音とビジュアルの両立」であることがうかがえます。
そのほか、Fender Duo-Sonic(1957年製)やGibson Les Paul Special/Custom、Tom HolmesのBG Standardなども特定用途で使用されました。とくにDuo-Sonicは半音下げチューニング用とされ、録音曲「風吹けば恋」や「染まるよ」など、アレンジ上のニュアンスに応じて使い分けられていました。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
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Telecaster Thinline | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | ブラックボディ・ハムバッカー2基・2人体制以降のメイン |
American Telecaster | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | 3-Color Sunburst・3人体制時の主力 |
Standard Telecaster(1983年製) | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | 太くハリのある音色。ライブで多用 |
Road Worn ’50s Telecaster | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | 使い込まれた風合い。2人体制移行期 |
Telecaster Custom Shop | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | 高級仕様・ライブでも登場 |
Duo-Sonic | Fender | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | 1957年製。半音下げチューニング用 |
Les Paul Custom | Gibson | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | イエローカラー。中期まで使用 |
BG Standard | Tom Holmes | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エレキギター | シルバースパークル。詳細不明ながら派手な外観 |
使用エフェクターとボード構成【チャットモンチー・橋本絵莉子】
橋本絵莉子のエフェクトボードは、時期によって構成が大きく異なりますが、彼女の音作りにおけるキモは「歪み」「空間系」「スイッチング」といった要素のシンプルかつ的確な組み合わせにあります。初期はPro Co RAT2やBOSS BD-2など、ガレージ感のある激しいディストーションやオーバードライブを中心に構成されており、楽曲「恋愛スピリッツ」「東京ハチミツオーケストラ」などの鋭く攻撃的なトーンにその影響が見られます。
中期以降はProvidence製のSOV-1 / SOV-2(オーバードライブ)がメインとなり、ナチュラルな歪みとクリーンアンプ(Divided by 13やJC-120)との組み合わせによる艶やかで立体的な音像が印象的です。また、ディストーションとしてはHBLやその後継機HBL-4も用いられており、主にリードパートやエモーショナルなバースに使用されました。
空間系では、SIB! MR ECHO、BOSS DD-5やRE-20、そしてLine6 DL4といった複数のディレイ・エコーを時期によって使い分けています。RE-20はテンポ同期可能で、代表曲「真夜中遊園地」などリズムと同期した残響が重要な場面で多用されました。
特殊効果や曲ごとの演出として、Death By Audio Supersonic Fuzz Gun(ファズ)やBOSS BF-3(フランジャー)、VOX製ワウペダルなども組み込まれており、エモーショナルな表現の幅を広げています。Human Gear VIVACEやKeeley Mod版BD-2などマニアックな選択肢も含まれており、音に対するこだわりの深さが伺えます。
さらに、FREE THE TONE製のシグナルスプリッターやProvidence PEC-2などのスイッチャー/ルーティング系エフェクトも導入されており、複数アンプを使い分ける複雑なセッティングにも対応。ライブでも安定して再現性の高いサウンドを保てる工夫が施されています。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
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SOV-2 | Providence | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | オーバードライブ | Divided by 13との組み合わせで後期サウンドの核 |
HBL-4 | Providence | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ディストーション | リードトーンやサビの強調に使用 |
MR ECHO | SIB! | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | エコー | 温かみのあるアナログ系エコー |
DD-5 | BOSS | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ディレイ | 定番デジタルディレイ。中期まで使用 |
RE-20 | BOSS | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ディレイ | テンポ同期で空間演出に貢献 |
Supersonic Fuzz Gun | Death By Audio | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ファズ | ノイジーで個性的な表現が可能 |
RAT2 | Pro Co | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ディストーション | 初期代表サウンドの中心 |
RC Booster | Xotic | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ブースター | 初期からの常用。音抜け補強にも |
PEC-2 | Providence | リンク | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | スイッチングシステム | ライブ時の安定操作に貢献 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【チャットモンチー・橋本絵莉子】

橋本絵莉子の音作りの特徴は、時期ごとのアンサンブル構造の変化にあわせて、ギターの役割を的確に調整している点にあります。3人体制時代はベース・ドラムとの掛け合いがメインだったため、ロー〜ミッドの太さを強調したセッティングが基本であり、エフェクターもRAT2やBD-2(Keeley MOD含む)など、飽和感のある歪みを選んでいました。
初期に用いていたMATCHLESS DC-30やJC-120は、中域に張りがありつつも明瞭度が高く、過剰に歪ませなくてもしっかり前に出るギターサウンドが得られるため、彼女のシャープなコードカッティングに適しています。アンプのEQ設定は、ベース5、ミドル7、トレブル6程度で、ミドルをやや強調した粘りある音像が基準でした。
中期に差しかかると、Divided by 13 JRT9/15が導入され、エッジの立ったクリーン〜クランチ寄りの音作りへとシフト。ここではProvidence SOV-1/SOV-2のナチュラルなオーバードライブが主力となり、ミッドの密度を確保しつつも空間を意識した抜けの良さが感じられます。EQはアンプ側でトレブルを上げ、ギターのトーンノブは6〜7程度で調整されていたと推察されます。
後期(2人体制)では、曲の構成上ギターがすべての音の土台となる場面が多く、FREE THE TONEのスプリッターを使ってJC-120とVOX AC15の2台出しを基本とすることで、クリーンとクランチの両極の要素を同時に出力。これによりベースレスの編成でも厚みのあるサウンドが確保されました。
ディレイ/エコーの設定においては、RE-20などテンポ同期可能なモデルを使い、BPMに合わせたセッティングで楽曲全体のグルーヴと一体化する設計がされていました。曲によってはMR ECHOのアナログ的なフィードバックを活用し、幻想的な残響を持たせるなど、細かな演出も印象的です。
ミックスにおける工夫としては、ギター単体の音圧ではなく、ドラムやボーカルとの関係性で存在感を出す設計が多く見られ、レコーディングではアンプ出力をスピーカーで拾うマイキング+ライン収録のミックスも試みられていたようです。曲によってギターの定位をセンターにするかLRに振るかを変え、リズムやメロディの役割に応じた立体的な音場が構築されています。
こうした音作りは、決して派手なエフェクトやテクニカルな演奏に頼らず、構成・空間・ニュアンスで魅せるという点において、橋本絵莉子ならではのサウンドメイクと言えるでしょう。
比較的安価に音を近づける機材【チャットモンチー・橋本絵莉子】
橋本絵莉子の音作りは一見シンプルに見えつつ、空間やアンサンブルとの調和を非常に大切にしており、再現するには「透明感と芯のある歪み」や「自然な残響」「タイトなアンサンブル感」が求められます。とはいえ、すべてのプロ機材を揃えるのは現実的ではないため、ここでは初心者〜中級者でも導入しやすく、比較的安価で橋本絵莉子風サウンドに近づける製品を紹介します。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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オーバードライブ | BOSS BD-2 Blues Driver | BOSS | https://www.amazon.co.jp/s?k=BD-2+BOSS&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 初期に愛用。クランチ〜リードまで幅広く対応。歪みの質感が似ており再現度高い。 |
オーバードライブ | JHS 3 Series Overdrive | JHS Pedals | https://www.amazon.co.jp/s?k=JHS+3+Series+Overdrive&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | ナチュラルな中域と程よいゲイン感がProvidence SOVに似ており、価格も手頃。 |
ディレイ | NUX Time Core Deluxe | NUX | https://www.amazon.co.jp/s?k=NUX+Time+Core+Deluxe&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | マルチディレイ対応でRE-20のような設定も可能。コストパフォーマンス抜群。 |
クリーンアンプ | Roland JC-22 | Roland | https://www.amazon.co.jp/s?k=Roland+JC-22&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | JC-120の弟分。クリーントーンの透明感とステレオコーラスはそのままに、コンパクトな構成。 |
ギター(風合い近似) | Squier Classic Vibe Telecaster Thinline | Squier | https://www.amazon.co.jp/s?k=Squier+Classic+Vibe+Telecaster+Thinline&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | Fender Telecaster Thinlineの廉価版。軽量・セミホロウ構造で、見た目・音質ともに近い。 |
ブースター | Xotic EP Booster | Xotic | https://www.amazon.co.jp/s?k=Xotic+EP+Booster&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 橋本のような立ち上がりの良いコードストロークに最適。音抜けと煌びやかさが向上。 |
マルチエフェクター | Zoom G3n | Zoom | https://www.amazon.co.jp/s?k=Zoom+G3n&tag=aki1446-22 | チャットモンチー | 橋本絵莉子 | 空間系、歪み系、チューナーなどを一括で扱えるマルチ。音質も良く、予算に優れる。 |
これらの機材を活用することで、比較的手頃な価格帯でも橋本絵莉子の「芯のある透明感」や「アンサンブルを支える存在感」を再現することができます。特にTelecaster系のギターとクリーン〜ナチュラルなオーバードライブ、空間系ディレイの組み合わせは、チャットモンチーサウンドの核心ともいえるので、初心者にもおすすめです。
総括まとめ【チャットモンチー・橋本絵莉子】

チャットモンチーのサウンドを支え続けた橋本絵莉子のギタープレイは、決して派手すぎず、過剰に装飾されることもありません。だからこそ、彼女の音はバンド全体の世界観と完璧に調和し、聴き手の感情にストレートに届くのです。
彼女のギター音作りの本質は「シンプルだけど芯がある」こと。特に中期以降に見られるProvidence SOVシリーズを使ったナチュラルなドライブサウンド、Divided by 13アンプによる立体感のあるクリーントーン、空間を活かしたディレイの活用は、橋本サウンドの完成度を高めています。
また、3人体制時代から2人編成へと移行する過程で、音の厚みや空間の広がりを補うためにファズやオクターバー、複数アンプの分岐など多彩なアプローチが試みられました。そこにあるのは“足りないものを埋めるための創意工夫”ではなく、“バンドの形に合わせた最良の選択”という確かな意志です。
ギター自体もTelecaster系を軸に、状況に応じてThinlineやビンテージ個体、レアなJourneymanモデルを使い分けるなど、個体の個性を見極めた使い方が印象的でした。フェンダー系の音にこだわりつつも、時にはGibsonやTom Holmesといった太めのサウンドを取り入れる柔軟性もあり、それが楽曲ごとの多様な表情を生み出しています。
読者の皆さんがもし橋本絵莉子の音に近づきたいと考えるなら、まずは「不要な飾りを取り払って本質に集中すること」から始めてみてください。そして、自分の中で「どのような音が気持ち良いのか」「どんな空間を作りたいのか」を突き詰めていけば、きっと彼女のような“シンプルで深い”ギタープレイに近づけるはずです。
そして何より大事なのは、音楽に対する姿勢。橋本絵莉子のギターからは、歌に寄り添い、リスナーに届く音を届けたいという純粋な想いが感じられます。機材にこだわることも大切ですが、その根底にある“音楽を愛する気持ち”こそが、彼女の音作りの核心なのかもしれません。
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