① 始めに(特徴紹介)
プログレッシブ・ロックの雄、Kansas(カンサス)に1980年代半ばに加入し、バンドに新たな息吹を吹き込んだ天才ギタリスト、Steve Morse(スティーヴ・モーズ)。彼のサウンドは、それまでのカンサスが持っていたシンフォニックな壮大さに加え、フュージョン仕込みの精緻なピッキング、カントリー的なチキン・ピッキング、そしてハードロックの力強さが完璧に融合したものでした。
スティーヴ・モーズのサウンド最大の特徴は、その「圧倒的な音の分離感」と「豊かなサステイン」の両立にあります。特にカンサス在籍時のアルバム『Power』や『In the Spirit of Things』では、非常にクリアでありながら太いディストーションサウンドを聴くことができ、複雑なコードヴォイシングでも一音一音が鮮明に響いています。また、ギターシンセサイザーを駆使してオーケストラのような質感をギター一本で表現する独創性も、この時期の彼の大きな功績と言えるでしょう。
彼が注目される理由は、その超絶技巧を支える徹底的に計算された機材セットアップにあります。複数のピックアップを瞬時に切り替え、複数のディレイを足元のボリュームペダルでリアルタイムにミックスする手法は、現代のギタリストにとっても非常に示唆に富むものです。今回は、カンサス時代のスティーヴ・モーズを支えた伝説的な機材群を徹底解説します。
②使用アンプ一覧と特徴【Kansas・Steve Morse】
カンサス時代のスティーヴ・モーズは、単一のアンプで音を作るのではなく、複数のアンプを組み合わせて層の厚いサウンドを構築していました。彼のサウンドの核となっていたのは、意外にもハイゲインアンプではなく、クリーンからクランチにかけてのレンジが広いアンプをエフェクターやピッキングでドライブさせる手法です。
メインヘッドとして君臨していたのはAmpeg V4でした。このアンプは非常にヘッドルームが広く、スティーヴの高速なフルピッキングに対しても音が潰れずに追従するスピード感を持っていました。また、80年代後半にはPeavey VTM 120も導入されています。これはPeavey版のJCM800とも言えるモデルで、よりモダンなハードロック・ゲインを補うために使用されました。さらに、1987年以降はMarshallのJubileeシリーズも導入され、リード時の滑らかな中音域を獲得しています。これらをセレクターやミキサーを介して制御し、楽曲のダイナミクスに合わせて使い分けていたのがこの時期の特徴です。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| V4 | Ampeg | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | カンサス時代のメインヘッド。圧倒的なヘッドルームを誇る。 |
| VTM 120 | Peavey | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 80年代後半に使用。真空管の粘りのあるドライブサウンドを提供。 |
| Marshall Jubilee | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 1987年以降のツアーで導入。リード時の艶やかなトーンが特徴。 |
| 165 | Acoustic Control Corporation | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | コンボアンプとして、またはサブのプリアンプ的に活用。 |
と、当時のライブ機材やインタビューから想定されます。
③使用ギターの種類と特徴【Kansas・Steve Morse】
スティーヴ・モーズのギターといえば、一目見たら忘れられない多機能なピックアップ配列が象徴的です。カンサス加入当初は、Dixie Dregs時代から愛用していた通称「フランケン・テレ」をメインに使用していました。これはテレキャスターボディにストラトネックを継ぎ接ぎし、複数のピックアップを強引に搭載した自作機で、彼のサウンドの多様性を支える唯一無二の道具でした。
しかし、カンサスでの活動中期から、ついにアーニーボール・ミュージックマンとの共同開発によるシグネチャーモデルが登場します。これが現在も続く「Music Man Steve Morse Signature」のプロトタイプおよび初期型です。ポプラボディに4つのピックアップ(HSSH構成)を搭載し、複雑なトグルスイッチでそれらを切り替える仕様は、カンサスの緻密な楽曲展開において、バッキングからソロまで即座に音色を変化させるために必要不可欠でした。
さらに特筆すべきは、ギターシンセサイザーの導入です。360 SystemsのSpectreを駆動させるためのヘキサフォニック・ピックアップをフランケン・テレにマウントし、楽曲の背景で鳴るストリングスやホーンのサウンドをギターで補完していました。これはバイオリン奏者がいるカンサスの編成において、より厚みのあるアンサンブルを作るための戦略的な選択でした。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Custom “Franken-Tele” | Custom (Fender base) | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 自作コンポジットギター | 初期のメイン。HSSH構成、12弦用のテイルピースを流用。 |
| Steve Morse Signature | Ernie Ball Music Man | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドエレキギター | カンサス後半のメイン。究極の汎用性を誇る自身のシグネチャー。 |
| Fender Lead III | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドエレキギター | 80年代前半の広告等で使用。コンパクトなボディが特徴。 |
と、当時のライブ映像や資料に基づき想定されます。
④使用エフェクターとボード構成【Kansas・Steve Morse】
スティーヴ・モーズのエフェクト・システムは、当時のギタリストの中でも極めて個性的で、現在の「ウェット/ドライ」セッティングの先駆けともいえるものでした。彼が最も重視したのは「ディレイ成分のコントロール」です。ラック式のLexicon PCM41や、アナログのMemory Manを使用し、その残響音のみを複数のアーニーボール・ボリュームペダルで操作していました。
これにより、リフを弾く時は完全にドライな音、ロングトーンやソロでは足元でディレイを徐々に足していくという、ミキシング・エンジニアのような操作を演奏中に行っていました。また、カンサス特有の分厚いオーケストレーションを再現するために、Roland GR-700や360 Systemsのギターシンセサイザーをフル活用。さらにBoss OC-2(オクターバー)を隠し味として使い、単音のリードにパイプオルガンのような重厚さを加えていたのも見逃せないポイントです。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PCM41 | Lexicon | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | メインのデジタルディレイ。クリアな残響音をボリュームペダルで操作。 |
| Deluxe Memory Man | Electro-Harmonix | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | アナログ独特の温かい減衰音を求め、デジタルと併用。 |
| Volume Pedals | Ernie Ball | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ボリュームペダル | 複数台を並べ、ディレイのミックス量を足元で制御。 |
| GR-700 / Spectre | Roland / 360 Systems | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ギターシンセサイザー | カンサスのオーケストラサウンドを補完するための重要機材。 |
| OC-2 | Boss | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オクターブ | 単音リードの厚み出しに使用。アナログの太さが肝。 |
と、想定されます。
⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Kansas・Steve Morse】
スティーヴ・モーズのカンサス時代における音作りの真髄は、「歪みのレイヤー」と「空間の動的な制御」に集約されます。まず、アンプ自体の歪みは意外と控えめ(クランチ程度)に設定されており、足りないゲインをピッキングの強弱と複数のピックアップの組み合わせで補っています。彼のメインの歪みサウンドは、中域(800Hz〜1.5kHz付近)が非常に豊かで、低域はタイトにカットされています。これにより、シンセサイザーやバイオリンが多用されるカンサスのミックスの中でも、ギターの音が埋もれずに抜けてくるよう設計されています。
EQセッティングの秘訣としては、ハイエンドの「痛い」部分を抑えつつ、プレゼンスを強調することで、フルピッキングの「カチッ」というアタック音を際立たせている点です。これは彼が長年練習してきた正確無比なピッキングを聴かせるためのセッティングでもあります。ライブでのミックスにおいては、ギターシンセサイザーの音はDIを通じてPAへ直接送り、生のアンプ音とパラレルで鳴らすことで、解像度の高いハイブリッド・サウンドを実現していました。
また、曲ごとの使い分けも非常に緻密です。アルペジオのセクションではセンターのシングルコイルを使用し、エッジの効いたリードではブリッジ側のハムバッカー、そしてメロウなソロではフロントのハムバッカーをセレクト。これに加えて、前述のボリュームペダルによる「ディレイ飛ばし(フレーズの語尾だけディレイを強くかける等)」を駆使することで、スタジオ盤のような奥行きをライブで再現していました。PAエンジニアに対しても、ドライな音とウェットな音を別々に送ることで、会場の音響特性に合わせた最適なミックスを可能にしていたと考えられます。
と、当時の機材構成および本人のインタビュー内容から想定されます。
⑥比較的安価に音を近づける機材【Kansas・Steve Morse】
スティーヴ・モーズの複雑なシステムを完全に再現するのは至難の業ですが、現代の機材を賢く選べば、そのエッセンスを安価に手に入れることが可能です。鍵となるのは「HSSHに近い多彩なピックアップ配列」と「ディレイの高度なコントロール」です。
まずギターですが、Music ManのセカンドブランドであるSterlingから、彼のシグネチャーモデルが手頃な価格で発売されています。ピックアップ構成やスイッチングの柔軟性は本家を継承しており、これ一本でスティーヴ・サウンドの多様性をカバーできます。エフェクターについては、BOSSのマルチエフェクター「GT-1」や「ME-90」が非常に有効です。これらには高品質なアンプシミュレーターに加え、スティーヴが愛用するOC-2のモデリングや、複数のディレイをアサインできる機能が備わっています。特に、内蔵のエクスプレッションペダルに「ディレイのフィードバックやレベル」を割り当てることで、彼がボリュームペダルで行っていたトリッキーな空間操作を一台で再現できるのは大きなメリットです。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| エレキギター | Steve Morse SM400 | Sterling by Music Man | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | コストパフォーマンスに優れたシグネチャー。独特のピックアップ配置を再現。 |
| ギター用マルチエフェクター | ME-90 | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ペダル操作でディレイの深さを変えられるため、スティーヴの奏法に近い再現が可能。 |
| ディレイ | Flashback 2 | tc electronic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | MASH機能により、フットスイッチを押し込むだけでディレイ量を可変できる。 |
⑦総括まとめ【Kansas・Steve Morse】
カンサス時代のスティーヴ・モーズの音作りの本質は、「論理的な構築美」にあります。彼は単に機材を並べるのではなく、バンドアンサンブルの中で自分のギターがどのような役割(オーケストラの一部なのか、主役のソリストなのか)を果たすべきかを常に逆算して機材を選定していました。その特徴は、極めて高い解像度を持つドライブサウンドと、足元で自在に操る空間演出に凝縮されています。
このサウンドを再現するために最も必要な視点は、「音の整理整頓」です。歪みを深くしすぎず、中音域の密度を高めること。そして、エフェクトをかけっぱなしにするのではなく、フレーズのニュアンスに合わせて「動的に変化させる」意識を持つことです。スティーヴ・モーズの奏法がそうであるように、機材もまた、演奏者の意志に即座に応える「楽器の一部」として機能していなければなりません。
彼のスタイルは非常にストイックですが、そこから得られる「どんなに速く弾いても一音一音が歌う」サウンドは、ジャンルを問わず全てのギタリストにとっての理想郷の一つと言えるでしょう。まずは、自身のピッキングとピックアップ特性、そしてディレイのミックス量に向き合うことから始めてみてください。その先に、あの知的でパワフルなカンサス・サウンドの扉が開かれるはずです。

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