① 始めに(特徴紹介)
現代最高峰のテクニシャンとして、世界中のギタリストから「ギターの神様」の一人と目されるガスリー・ゴーヴァン(Guthrie Govan)。
彼がブライアン・ベラー(ベース)、マルコ・ミンネマン(ドラム)と結成したパワー・トリオ「The Aristocrats(ジ・アリストクラッツ)」では、ロック、ジャズ、フュージョン、カントリー、さらにはメタルまでを飲み込んだ、変幻自在のサウンドを聴くことができます。
ガスリーのサウンド最大の特徴は、驚異的なピッキング精度とレガートを支える「極めて解像度が高く、かつオーガニックなトーン」にあります。
歪んでいても一音一音がはっきりと分離し、ピッキングの強弱やギターのボリューム操作だけで、クリーンから激しいリードトーンまでをシームレスに行き来します。
「Erotic Cakes」時代の超絶フュージョンサウンドから、近年のデジタル環境への移行を経た完成されたトーンまで、彼の音作りは常に「表現の自由度」を最優先に設計されています。
The Aristocratsの楽曲、例えば「Bad Asteroid」や「The Ballad of Bonnie and Clyde」などで聴けるトーンは、一見複雑そうに見えて、実は非常にストレートなレスポンスを追求した結果です。
彼がなぜ、あえてデジタル機材(Fractal Audio)へとシフトしたのか、そしてその中にある「アナログ的なこだわり」は何なのか。
本記事では、ガスリーの最新のライブシステムから、かつての伝説的な機材までを徹底的に解説します。
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②使用アンプ一覧と特徴【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリー・ゴーヴァンのアンプ選択における変遷は、現代ギターシーンの技術的進化を象徴しています。
かつてはSuhrやVictory Amplificationといったハイエンドな真空管アンプのフラッグシップモデルを使用し、その芳醇な倍音とレスポンスを武器にしてきました。
特にVictory Amplificationにおいては、開発段階から深く関わったシグネチャーモデル「V30 The Countess」が有名です。
しかし、近年のThe Aristocratsの活動においては、世界ツアーの利便性と、どの会場でも寸分狂わぬ「自分の音」を再現することを重視し、Fractal Audio Systemsのデジタル・モデリング環境へ完全に移行しました。
ガスリー本人は「ツアーで借りるアンプのコンディションに一喜一憂するよりも、自分のプリセットを持ち運ぶほうがクリエイティブになれる」と語っています。
デジタル移行後も、彼が好んで使用するアンプモデルはFriedman BE-100などの「ブリティッシュ・ホットロッド」系であり、豊かなミッドレンジと滑らかな高域が特徴です。
ステージ上でのモニタリングには、LaneyのFRFRキャビネットを使用。
これはアンプの音色に色付けをせず、Fractalで作り込んだサウンドをそのままの解像度で出力するための選択です。
これにより、大音量でも音が潰れず、ガスリー特有の高速フレーズが埋もれないクリアな外音を実現しています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Axe-Fx III / FM9 | Fractal Audio Systems | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 現在のメインシステム。Friedman等のハイエンドアンプを再現。 |
| LFR-212 / LFR-112 | Laney | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | FRFRキャビネット。Fractalの音を正確に出力するために使用。 |
| V30 The Countess | Victory Amplification | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ガスリーのために設計された真空管アンプ。デジタル移行前までメイン。 |
最新のツアー機材を考慮すると、Fractal Audioを中心としたデジタルシステムが現在の正解であると想定されます。
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③使用ギターの種類と特徴【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリー・ゴーヴァンのギターといえば、長年愛用しているCharvel(シャーベル)のシグネチャーモデルがその代名詞です。
このギターは、彼の膨大な語彙力を一本で表現するために、徹底的に作り込まれた「究極の汎用機」と言えます。
特徴的なのは、ボディやネックに施された「キャラメル加工(加熱処理)」です。
これにより、木材の水分が飛ばされ、ヴィンテージギターのような枯れたレスポンスと、ツアー中の気候変化に耐えうる高い剛性を両立しています。
ピックアップ構成はHSH(ハムバッカー-シングル-ハムバッカー)で、これに5wayスイッチと「シングルコイル・シミュレーション」を行うミニスイッチを組み合わせることで、
ストラトキャスターのような繊細なクランチから、レスポールのような太いリードトーンまでを自在に操ります。
さらに、ブリッジには「Tremol-No」システムを搭載。
フローティング状態、ダウンのみ、固定(ハードテイル)の3つのモードを瞬時に切り替えられるこの機構は、複雑なチューニングや奏法を駆使するガスリーにとって不可欠な要素です。
また、彼は「楽曲が必要とする音」に対して非常に柔軟です。
一部の楽曲で見られる、フレットレスギター(Vigier製)によるバイオリンのような滑らかなスライド奏法や、
ヘヴィな楽曲で投入されるStrandbergの8弦ギターなど、その選択は常に音楽的必然性に基づいています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Guthrie Govan Signature MJ San Dimas SD24 CM | Charvel | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッド(HSH) | メインギター。ロースト木材とTremol-Noが最大の特徴。 |
| Excalibur Surfreter | Vigier | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | フレットレス | 特定の楽曲で使用されるフレットレスギター。 |
| Boden Metal NX 8 | Strandberg | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 8弦ギター | 多弦が必要な楽曲で使用。ヘヴィなローエンドに対応。 |
Charvelのシグネチャーモデルを軸に、曲によって特殊な仕様のギターを使い分けるのがガスリー・スタイルであると想定されます。
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④使用エフェクターとボード構成【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリーのエフェクター環境は、現在「完全統合型」へと進化を遂げています。
かつては、XoticやFree The Tone、TC Electronicといったこだわりのペダルが敷き詰められた巨大なペダルボードを使用していましたが、現在はそのほとんどの役割がFractal Audio SystemsのAxe-Fx IIIまたはFM9へと集約されました。
ガスリーがFractal内でも多用するのは、滑らかなディレイと透明感のあるリバーブです。
彼のリードトーンには、常に「音が途切れない」ような絶妙な深さの空間系がかかっており、これが彼の流麗なレガート奏法をより強調させています。
また、ボリュームペダル(Fractal EV-1/EV-2)の操作は彼の演奏の肝であり、バイオリンのようなスウェル奏法や、歪み量の微調整を足元で常に行っています。
アナログ時代の名残として、また特定のニュアンスを出すために、DunlopのワウペダルやTC Electronicのルーパーを使用することもありますが、基本的な「音」はすべてデジタル内で完結。
これにより、複雑なルーティングやエフェクトの瞬時な切り替えが可能になり、The Aristocratsの予測不能な楽曲展開を支えています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Axe-Fx III / FM9 | Fractal Audio Systems | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ギター用マルチエフェクター | すべての歪み・空間系・モジュレーションを統合。 |
| EV-1 / EV-2 | Fractal Audio | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | エクスプレッションペダル | ボリューム、ワウ、ピッチ変化などに多用。 |
| Jerry Cantrell Signature Wah | Dunlop | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ワウペダル | アナログ環境時および特定のツアーで使用。 |
| Ditto Looper / X2 | TC Electronic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ルーパー | ソロパフォーマンスやアンサンブルの厚み付けに使用。 |
現在はFractal Audio内ですべてを完結させ、最小限の外部ペダルで運用するスタイルが定着していると想定されます。
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⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリー・ゴーヴァンの音作りを紐解く鍵は、「ダイナミック・レンジ」と「中音域の密度」にあります。
彼のセッティングは、一見するとハイゲインで弾きやすそうに聞こえますが、実際には非常に繊細なタッチを要求する「クリーンに近いリードトーン」です。
具体的には、アンプのGainを上げすぎず、ミッドレンジ(特に500Hz〜800Hz付近)を強調することで、音が太く、かつ速いパッセージでも一音一音が潰れないように設定されています。
【EQセッティングのポイント】
ガスリー風のトーンを作る際、EQは「Bassを控えめに、Middleを厚く、Trebleは耳に痛くない程度に抑える」のが基本です。
特に低域はベースのブライアン・ベラーの音域を邪魔しないよう、デジタルプロセッサー側でハイパスフィルター(100Hz以下をカット)をかけ、タイトにまとめています。
高域に関しては、Charvelギターの抜けの良さを活かしつつ、Fractal内のキャビネットシミュレーターで「ヴィンテージのCelestion V30」系のキャラクターを選ぶことで、耳当たりの良い滑らかなトーンに仕上げています。
【ギター本体での操作】
ガスリーはエフェクターを切り替えるよりも、ギターのボリュームノブと5wayスイッチを頻繁に操作して音色を変えます。
例えば、フロントPUでボリュームを7程度に絞れば、温かみのあるジャジーなクリーンになり、そこからリアPUに切り替えて全開にすれば一気にハードなリードへと移行します。
この「手元でのミックス」こそが、彼の演奏が非常に有機的で、生々しく聴こえる最大の理由です。
【ミックス・エンジニア目線の工夫】
The Aristocratsのような変拍子や激しいダイナミクスがあるバンドでは、ギターが主張しすぎるとアンサンブルが崩れます。
ガスリーの音は、ステレオ・ディレイを薄くかけることで左右に広がりを持たせつつ、センターの音芯をしっかりと残す処理がなされています。
また、レコーディング時はあえて複数のマイクシミュレーションを混ぜず、一つの優れたキャビネットモデルに絞ることで、位相の問題を避け、音の立ち上がり(アタック)の速さを最優先していると想定されます。
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⑥比較的安価に音を近づける機材【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリーの「何でもこなせる極上トーン」を、限られた予算で再現するには、現代の高性能なマルチエフェクターや、彼のシグネチャーサウンドに近い特性を持つコンパクトペダルを選ぶのが近道です。
本人のFractal環境を模倣するには、同じアルゴリズムを安価に手に入れられる製品や、ミッドレンジが豊かなドライブペダルが鍵となります。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| マルチ | POD Go | Line 6 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | Fractalに近いルーティングと高品位なアンプモデルを安価に実現。 |
| ドライブ | SL Drive | Xotic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ガスリーが好むブリティッシュ・プレキシ系の音を再現可能。 |
| ギター | Guthrie Govan Signature (LTD etc.) | Charvel | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | MJシリーズなどの普及版でも、本人のスペックを色濃く継承。 |
【なぜこれらの機材が似ているのか】
Line 6のPOD Goは、ガスリーが使用するFractal同様に「アンプ+キャビネット+エフェクト」を自在に組めるため、Friedman系のアンプモデルを選択すれば驚くほど本人のニュアンスに近づけます。
また、Xotic SL Driveは、ガスリーがVictoryアンプで出していたような「芯のある歪み」をクリーンアンプに追加するのに最適です。
ギターに関しては、本人のシグネチャーモデルの廉価版を選ぶのが最も近道ですが、HSH構成でメイプル指板のギターであれば、手元での操作次第で十分にあのサウンドの片鱗を掴むことができると想定されます。
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⑦総括まとめ【The Aristocrats・Guthrie Govan】
ガスリー・ゴーヴァンの音作りの本質とは、一言で言えば「楽器との対話を妨げない透明性」にあります。
彼が超絶技巧を駆使しながらも、常に音楽的で耳心地の良いトーンを維持できるのは、機材を「自分の身体の延長」として完全にコントロールしているからです。
デジタル移行後もその哲学は変わらず、むしろデジタルという精密なキャンバスを得たことで、彼の表現力はさらに研ぎ澄まされました。
私たちが彼のサウンドを再現するために最も必要なのは、単に同じ機材を揃えることではなく、「ピッキングの一打、ボリュームの一目盛りに対する意識」を研ぎ澄ますことです。
ガスリーの音は、ギター本体のHSH構成を活かした多彩なトーンバリエーションと、Fractalのような高品位な空間系、そして何より「中音域を活かした解像度の高い歪み」で構成されています。
まずは、自分のギターのボリューム操作だけでどこまで音色を変えられるか試してみてください。
そして、ミッドレンジを意識したアンプセッティングを心がけることで、ガスリーのような「歌うようなリードトーン」への第一歩が踏み出せるはずです。
彼のような「万能なギタリスト」を目指す道は険しいものですが、その音作りのプロセスを追いかけることは、ギタリストとしての成長において大きな糧となるでしょう。
究極の汎用性と表現力を兼ね備えたガスリー・サウンド、ぜひあなたのシステムでも追求してみてください。
