始めに(特徴紹介)
The Strokes(ザ・ストロークス)のギタリスト、Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)は、その鋭いミッドレンジのトーンとリバーブレスなドライサウンドで、多くのリスナーを魅了してきました。特にデビューアルバム『Is This It』で聴けるカッティングやリフは、2000年代初頭のガレージロック・リバイバルを象徴する存在といえます。
彼のプレイスタイルは、シンプルながらもフックのあるフレーズを刻むことに特徴があります。バンド全体のサウンドに溶け込みながらも、常に存在感を放つギター。リズムギターとリードの中間を担うポジションであり、Albert Hammond Jr.との絡みがThe Strokesのツインギターの醍醐味です。
代表的なサウンドの例としては「Last Nite」や「Someday」でのミッドレンジの効いたカッティング、「Hard to Explain」でのEpiphone Casinoによるザラついたクランチサウンド、そして近年ではシンセサウンド的なアプローチを取り入れた「At The Door」などが挙げられます。シンプルな機材構成ながら、プレイとセッティングの工夫で独自性を打ち出している点が彼の魅力です。
さらにNick Valensiは、ライブでは常にFenderアンプとEpiphone Rivieraを中心としたセッティングで、力強くストレートなトーンを届けています。リバーブをほぼ使わず、コンプレッサーやディストーションを駆使してエッジを効かせることで、バンド全体に切れ味を与えているのです。
使用アンプ一覧と特徴【The Strokes・Nick Valensi】
Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)の音作りにおいて、アンプは非常に重要な要素です。The Strokesのサウンドは、リバーブをほとんど使わないドライで前に出るトーンが特徴的であり、その再現にはアンプの選択とセッティングが直結しています。彼の代表的なアンプとして、まずはFender Hot Rod DeVille 212が挙げられます。これは初期レコーディング時のメインアンプとして知られ、本人はセッティングを「すべて7」にすることが多かったと語られています。この大胆なセッティングにより、クリーン寄りながらエッジの立ったサウンドが生まれ、The Strokes初期の代名詞的トーンを支えました。
また、Fender Super-Sonicもライブやレコーディングで確認されており、より幅広いトーンメイキングに対応していると考えられます。Fender 4×12″キャビネットと組み合わせることで、リフやバッキングに厚みを与え、ツインギターとの掛け合いでも抜けの良いサウンドを実現しました。
さらに、Carr Slant 6V comboやCarr Ramblerといったブティック系アンプも使用。これらはスタジオでのレコーディングに多用されたとされ、より繊細でダイナミックレンジの広いサウンドを追求する際に選ばれています。クリーンからクランチまでのニュアンスを細かく表現できるため、Nickのギタープレイのニュアンスを忠実に反映することが可能です。
一方で、Vox AC30は「Hard to Explain」でのサウンド再現に推奨されており、特有のチャイミーなトーンがストロークスの楽曲に馴染んでいます。さらに小型のVox AC4TVも「You’re So Right」のソロなどで使われており、独特の歪み感と軽快なキャラクターを付与しています。これによりライブとレコーディングで役割を分けつつ、サウンドの幅を広げていることが分かります。
こうしたアンプの選択は、Nickの求める「リバーブレスで前に出るロックサウンド」を具現化するためのものであり、時期によって使い分けられてきました。全体としてはFenderを基軸に、VoxやCarrを必要に応じて補完するスタイルで、The Strokes特有のタイトかつドライなサウンドを生み出していると想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
Fender Hot Rod DeVille 212 | Fender | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | 初期レコーディングのメインアンプ。「全て7」のセッティングが有名。 |
Fender Super-Sonic | Fender | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ライブやレコーディングで使用。多彩なトーンを実現。 |
Fender 4×12″ extension cabinets | Fender | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | キャビネットを組み合わせて厚みあるサウンドを実現。 |
Carr Slant 6V combo | Carr | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | スタジオで使用。繊細なクリーンとクランチを再現。 |
Carr Rambler | Carr | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ブティック系アンプ。豊かなダイナミクス表現に適する。 |
Vox AC30 | Vox | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | 「Hard to Explain」で推奨されるチャイミーなトーン。 |
Vox AC4TV | Vox | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | 「You’re So Right」のソロで使用。小型ながら独特の歪み。 |
使用ギターの種類と特徴【The Strokes・Nick Valensi】
Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)のトーンの核となるのは、彼が長年愛用してきたEpiphone Riviera P-94です。これは彼のシグネチャーモデルでもあり、セミアコ構造にP-94(シングルコイルに近い特性を持つP-90系ピックアップ)を搭載。初期のThe Strokesにおける鋭くミッドに寄ったカッティングサウンドは、このギターに大きく依存しています。リズムとリードの中間を支える彼のポジションに最適化された1本であり、ライブでも常にメインとして登場していました。
「Hard to Explain」ではEpiphone Casinoを使用。こちらはフルホロウ構造にP-90を搭載しており、やや荒削りなクランチ感と空気感を含んだサウンドが特徴です。リバーブレスなアンプ設定に相性がよく、音抜けを保ちながらバンドサウンドに奥行きを加える役割を果たしました。
また、Epiphone Dotも使用されており、こちらは2基のP-94を搭載することでRivieraに近いキャラクターを持ちながらも異なるニュアンスを提供します。加えて、Gibson系ギターも数多く使用。例えばGibson Faded Special Double Cutaway(P-90搭載)やGibson Les Paul Custom(ブラック)、さらにLes Paul Junior(TVイエロー復刻)など、よりシンプルで太いトーンを必要とする場面で選択されてきました。
一方で、ヴィンテージ調のトーンが求められる場面では、Gibson Les Paul(タバコバースト/’58プレイントップに似たモデル)やFender Telecaster(カスタムショップ製)も使用。The Strokesの楽曲の中で、アルバムごとに少しずつトーンの幅が広がっていく中で、Nickのギター選びも進化していることが確認されます。さらに、Duesenbergのセミホロウも近年使用が確認されており、よりモダンかつ多彩なトーンを探求していることがうかがえます。
このようにNickのギターコレクションは、初期はEpiphoneを中心に、後期にかけてGibsonやFender、Duesenbergといった幅広いモデルを併用するスタイルへと変化してきました。結果として、シンプルながら奥行きのあるトーンバリエーションを確立し、The Strokesの進化を支える存在となったと想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Epiphone Nick Valensi Riviera P-94 | Epiphone | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | セミアコ | 初期ストロークスのメインギター。鋭いミッドレンジ。 |
Epiphone Casino | Epiphone | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ホロウボディ | 「Hard to Explain」で使用。P-90搭載の荒々しいクランチ。 |
Epiphone Dot | Epiphone | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | セミアコ | P-94を2基搭載し、Rivieraに近いキャラクターを持つ。 |
Gibson Faded Special Double Cutaway | Gibson | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ソリッド | P-90を2基搭載。ラウドで直線的なサウンド。 |
Gibson Les Paul Custom (Black) | Gibson | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ソリッド | ライブで確認されたモデル。厚みと重厚感を補う。 |
Gibson Les Paul (Tobacco Burst) | Gibson | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ソリッド | ’58 Standard Plain Topに似た仕様。ヴィンテージ感あるトーン。 |
Gibson Les Paul Junior (’54 reissue VOS, TV Yellow) | Gibson | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ソリッド | シンプルなP-90サウンド。ロック的な切れ味を持つ。 |
Fender Telecaster (Custom Shop) | Fender | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ソリッド | カスタムショップ製。カッティングと抜けの良いトーンに貢献。 |
Duesenberg semi-hollow | Duesenberg | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | セミアコ | 近年使用。よりモダンで立体感あるトーン。 |
使用エフェクターとボード構成【The Strokes・Nick Valensi】
Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)の音作りにおいて、エフェクターはアンプやギターに比べると少なめながらも非常に戦略的に使用されています。彼のトーンの根幹は、クランチとディストーションを軸にしたドライでエッジの効いたサウンドであり、常にリバーブレスな質感をキープしている点が特徴です。そのため、彼のペダルボード構成はシンプルながらも要所を押さえており、The Strokes全体のタイトなアンサンブルを支える要となっています。
特に重要なのは、Visual Sound Jekyll & Hyde Ultimate Overdrive (V1)。これは彼のディストーションサウンドの中心で、ライブでは常時ONのことが多いとされます。アンプのクリーンを基調に、歪みをこのペダルで作ることで、ザラついた質感を持ちつつも抜けの良いトーンを獲得していました。また、Pro Co RAT DistortionもAlbert Hammond Jr.と並んで使用されており、より粗くエッジの強いドライブを付加する場面で選択されてきました。
さらに、Durham Electronics Sex Driveはスタジオワークでブースター的に使われ、ギターのアタックを自然に強調。Vox Cooltron Bulldog DistortionやVisual Sound Double Troubleといったペダルも確認されており、複数の歪み系を楽曲ごとに使い分けていたことが分かります。2022年にはIbanez No. 59 Standard Fuzz(70年代後期モデル)がボードに組み込まれており、よりサイケデリックで実験的な音作りへの探求も見られました。
オーバードライブ系以外では、Klon Centaurが2019年に2台、2022年に1台と高頻度で確認されています。非常に高価ながらも、ナチュラルなブーストと煌びやかなトーンがNickのリードプレイを際立たせています。空間系としてはElectro-Harmonix Deluxe Memory ManやMaxon AD-9 Proが用いられ、スラップバックや微妙な残響でフレーズに奥行きを追加。さらに、MXR Micro AmpやDyna Compでダイナミクスをコントロールし、リズムをタイトに仕上げる工夫がなされています。
モジュレーション系では、Boss TR-2 TremoloやBoss CE-2 Chorus、BF-2 Flangerなどが用いられ、特に後期楽曲でメロウなテクスチャを与えるのに効果的でした。また「Selfless」ではElectro-Harmonix Octave POGを使用しており、オクターバーサウンドを積極的に導入。「At The Door」ではRoland GR-300ギターシンセが使われ、従来のガレージロック的トーンとは一線を画すサウンドスケープを展開しています。
こうした構成を見ると、Nickは常に「シンプルで前に出るロックトーン」を基本としつつも、アルバムや楽曲に応じて新しいペダルを導入し、時代ごとに進化を遂げていることが分かります。ライブとスタジオでの役割分担も見られ、エフェクトは最小限ながら最大限の効果を発揮するよう設計されていると想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
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Visual Sound Jekyll & Hyde Ultimate Overdrive (V1) | Visual Sound | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ディストーション | サウンドの核。ライブで常時ONが多い。 |
Pro Co RAT Distortion | Pro Co | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ディストーション | Albert Hammond Jr.と共に使用。粗くザラついたドライブ感。 |
Durham Electronics Sex Drive | Durham Electronics | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | オーバードライブ | スタジオで使用。アタックを強調するブースター的役割。 |
Vox Cooltron Bulldog Distortion | Vox | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ディストーション | 真空管を搭載したディストーション。厚みある歪み。 |
Visual Sound Double Trouble | Visual Sound | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | オーバードライブ | 2チャンネル仕様。楽曲ごとに使い分け。 |
Ibanez No. 59 Standard Fuzz (Late ’70s) | Ibanez | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ファズ | 2022年のボードで確認。実験的なサウンドに貢献。 |
Klon Centaur | Klon | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | オーバードライブ | 2019年に2台、2022年に1台確認。透明感のあるブースト。 |
Electro-Harmonix Deluxe Memory Man | Electro-Harmonix | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ディレイ | スラップバックや空間演出に使用。 |
Maxon AD-9 Pro Analog Delay | Maxon | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ディレイ | スタジオで使用。自然なアナログ感。 |
MXR M-133 Micro Amp | MXR | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ブースター | クリーンブーストでアンプを自然にドライブ。 |
MXR Dyna Comp | MXR | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | コンプレッサー | リズムのパンチ感を強調。 |
Boss TR-2 Tremolo | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | トレモロ | シンプルなトレモロ。波形調整可能。 |
Boss CE-2 Chorus | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | コーラス | 後期にメロウなモジュレーションとして使用。 |
Boss BF-2 Flanger | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | フランジャー | コーラス的に使用されることもある。 |
Electro-Harmonix Octave POG | Electro-Harmonix | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | オクターブ | 「Selfless」でオクターブサウンドに使用。 |
Roland GR-300 | Roland | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ギターシンセサイザー | 「At The Door」で使用されたギターシンセ。 |
Demeter TRM-1 Tremulator | Demeter | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | トレモロ | スタジオでの使用例あり。 |
Boss TU-2 Chromatic Tuner | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | チューナー | ステージ必須のクロマチックチューナー。 |
Visual Sound Visual Volume | Visual Sound | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ボリュームペダル | シンプルな音量コントロール用。 |
Death by Audio Micro Harmonic Transformer | Death by Audio | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ノイズ系エフェクター | スタジオで確認された特殊エフェクト。 |
JHS Colour Box V2 | JHS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | プリアンプ/アンプシミュレーター | Neveコンソールを模したペダル。後に外された可能性あり。 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【The Strokes・Nick Valensi】
Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)の音作りは、The Strokesの楽曲におけるバンドサウンドの中核を担っています。彼のギターはシンプルなフレーズを繰り返すことが多いものの、その1音1音がエッジを持ち、楽曲全体を引き締めています。その秘密は、ギターやエフェクターだけでなく、アンプのEQ設定やミックス段階での工夫に隠されています。
まず、アンプの基本設定について。初期に使われたFender Hot Rod DeVille 212では「すべて7」というセッティングが有名です。ゲイン、ベース、ミドル、トレブル、プレゼンスをフラットに上げることで、無駄なカットを避けつつ自然な歪みを得ています。この大胆なセッティングが、リバーブレスでも前に出るタイトなトーンを生み出し、The Strokesのファーストアルバム『Is This It』の音像を決定づけました。
EQバランスの観点から見ると、Nickのサウンドは「ミッドを中心に据えた直線的なトーン」です。ベースは必要最低限で低域を削り、Albert Hammond Jr.のギターとの住み分けを図っています。結果的に、Nickのギターはミックス内で中音域を支配し、ボーカルやドラムスとの干渉を避けながらバンドの「芯」を形成する役割を果たしています。
楽曲ごとの使い分けも見逃せません。「Hard to Explain」ではEpiphone CasinoとVox AC30を組み合わせ、独特のクランチ感を強調。AC30特有のチャイミーさが楽曲の疾走感を引き立てています。一方、「Someday」や「Last Nite」ではRiviera P-94とFenderアンプの組み合わせで、カッティングのキレを最大限に活かしています。さらに「Selfless」ではElectro-Harmonix Octave POGを用いて奥行きのあるオクターブサウンドを導入し、従来のガレージロック的アプローチに新鮮さを加えています。
エフェクターの選び方にも工夫があります。歪みは基本的にVisual Sound Jekyll & Hydeで作り、必要に応じてPro Co RATやKlon Centaurをブースト的に併用。これにより「常に歪んでいるが潰れない」トーンを実現しています。コンプレッサー(MXR Dyna Comp)はカッティングの粒立ちを揃えるために活用され、特にライブではリズムの正確さを補強する役割を担いました。
ミックス面で特徴的なのは「リバーブを排除する」という方針です。通常、ロックギターはリバーブやディレイで奥行きを加えることが多いのですが、The Strokesでは意図的にドライなサウンドを採用。これにより、リズムのタイトさが前面に押し出され、バンドの一体感が際立っています。そのため、ミックスエンジニアはギターに余計な空間処理を施さず、EQとコンプレッションで整理する手法をとっています。
さらに「At The Door」など近年の楽曲では、Roland GR-300ギターシンセや空間系エフェクトを取り入れ、従来とは異なる音響アプローチを試みています。この際も、ミックスではシンセサウンドを厚塗りせず、あくまでギター由来の質感を残すことで、The Strokesらしい「人力感」を保っています。
総じてNick Valensiの音作りは、ミッド重視・リバーブレス・シンプルな歪み構成という3本柱に基づきながら、楽曲ごとに微調整を加えている点が特徴です。エンジニア的視点で見れば「不要な処理を削ぎ落とすことで存在感を最大化する」手法であり、これこそがThe Strokesのギターサウンドを唯一無二のものにしていると想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【The Strokes・Nick Valensi】
Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)の音をそのまま再現しようとすると、Epiphone Riviera P-94やKlon Centaurといった高価かつ入手困難な機材が必要になってしまいます。しかし、初心者や中級者でも比較的安価に、しかも実用的に近いサウンドを出すことは可能です。ここでは1〜5万円程度の予算で導入できる機材を中心に紹介します。
まずギターですが、Epiphone CasinoやEpiphone Dotは入門機としても優秀で、Nickのセミアコ系トーンを再現するのに最適です。CasinoのP-90ピックアップによる荒削りなクランチは「Hard to Explain」に近いサウンドを実現できます。Dotも価格帯が手頃ながら、P-94やハムバッカーを載せ替えることでRiviera的なキャラクターに近づけられます。
アンプについては、Fender Hot Rod DeVille 212は高価ですが、代替としてFender Blues JuniorやBoss Katanaシリーズが有効です。特にKatanaはモデリングアンプとしてディストーションやEQ調整が柔軟で、リバーブをオフにする設定も容易に可能。シンプルな設定でNickの「リバーブレス&ドライ」サウンドを体感できます。
エフェクターに関しては、Visual Sound Jekyll & Hydeが手に入りにくい場合、BOSS DS-1やBOSS BD-2 Blues Driverで代用可能です。DS-1はラウドでザラついたディストーションを、BD-2はクリアで粒立ちの良いクランチを提供します。また、Pro Co RATの代わりに「Mooer Black Secret」などのミニペダルは価格も安く扱いやすいです。さらに、MXR Dyna Compの代わりにBOSS CS-3コンプレッサーを導入すれば、リズムの安定感を強化できます。
空間系では、Electro-Harmonix Memory BoyやBOSS DD-7といったディレイが安価かつ信頼性が高い選択肢です。Nickのようにスラップバック気味に設定すれば、奥行きのあるクランチサウンドを簡単に再現できます。オクターバーサウンドを試したい場合は、Electro-Harmonix Nano POGやBOSS OC-5を選べば、POGの代用として十分な性能を発揮します。
これらを組み合わせることで、低予算でもNick Valensi風の「鋭いミッドレンジとドライなロックトーン」を手に入れることができます。重要なのは「リバーブを切ること」「EQはミッド重視」「歪みは潰れすぎないように設定」というポイントであり、機材の価格よりもセッティングと弾き方で大きく近づけられるのです。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
ギター | Epiphone Casino | Epiphone | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | P-90搭載で荒削りなクランチが再現可能。比較的安価。 |
ギター | Epiphone Dot | Epiphone | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | セミアコのエントリーモデル。改造次第でRiviera的トーン。 |
アンプ | Boss Katana 50 MkII | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | 安価で多機能なモデリングアンプ。リバーブオフ可能。 |
アンプ | Fender Blues Junior IV | Fender | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | 小型で扱いやすく、クランチが得意。家庭練習にも最適。 |
ディストーション | BOSS DS-1 Distortion | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | ザラついた歪みでJekyll & Hyde的なサウンドを代用可能。 |
オーバードライブ | BOSS BD-2 Blues Driver | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | クリアでミッド重視のクランチ。歪みすぎないトーンに最適。 |
ディストーション | Mooer Black Secret | Mooer | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | RAT系のミニペダル。安価で実用的。 |
コンプレッサー | BOSS CS-3 Compression Sustainer | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | Dyna Compの代替。リズムをタイトに補強。 |
ディレイ | Electro-Harmonix Memory Boy | Electro-Harmonix | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | Memory Manの廉価版。スラップバックに最適。 |
オクターブ | BOSS OC-5 Octave | BOSS | Amazonで探す | The Strokes | Nick Valensi | POGの代替として優秀。Selfless風のオクターブサウンド再現可能。 |
総括まとめ【The Strokes・Nick Valensi】

Nick Valensi(ニック・ヴァレンシ)のサウンドは、The Strokesの音楽性を象徴する大きな要素です。彼の音作りの本質は「リバーブレスで前に出る鋭いミッドレンジ」「潰れすぎない自然な歪み」「シンプルかつ的確なエフェクト運用」の3点に集約されます。シンプルなリフやコードワークが中心ながらも、アルバート・ハモンドJr.との絡み合いの中で生まれる立体的なギターレイヤーは、バンドの代名詞となっています。
彼のメイン機材であるEpiphone Riviera P-94は、シングルコイル的な明瞭さとセミアコの厚みを兼ね備え、Fenderアンプに直結して鳴らすことで「乾いたクランチ」を実現しました。この音は『Is This It』から『Room on Fire』といった初期作品を通じて確立し、今なお多くのギタリストが憧れるサウンドとなっています。さらに、時代が進むにつれてCasinoやLes Paul、Duesenbergなどを取り入れることで、サウンドに広がりと実験性を持たせてきたのも特徴です。
エフェクターについても、決して数は多くありませんが、Jekyll & HydeやKlon Centaur、RATなど「核となる歪み」を中心に、必要最低限の空間系を補うスタイル。近年ではPOGやギターシンセを使い、The Strokesがよりシンセサウンドに接近していく中で柔軟に対応しています。とはいえ根底にあるのは常に「シンプルでタイトなロックギター」であり、余分な要素を削ぎ落とす美学が感じられます。
読者が彼のサウンドを再現する際に意識すべきは、高価な機材を揃えることよりも「セッティングと弾き方」にあります。アンプのリバーブを切り、ミッドを前に押し出し、ピッキングを力強く弾くことで、Nickらしいドライで攻撃的な音色に近づけます。さらに、カッティングとリードの中間的な立ち位置を意識し、バンド全体を引き締める役割を担うことで、The Strokesのようなアンサンブルが生まれます。
総括すると、Nick Valensiの音作りは「削ぎ落とすことで際立つ」スタイルです。過剰な装飾を避け、シンプルな機材とセッティングで最大の効果を発揮する姿勢は、多くのギタリストにとって学ぶべきポイントでしょう。彼のプレイは決して派手ではありませんが、そのサウンドはThe Strokesというバンドを世界的に成功へと導いた重要なピースであり、今なお色褪せることのないロックンロールの原点を体現しているのです。
下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
🎸 ギター
Epiphone Nick Valensi Riviera P-94
初期ストロークスのメイン。P-94搭載のセミアコ。特徴的な鋭いミッドレンジトーンを支える。
Epiphone Casino
「Hard to Explain」で使用。P-90搭載ホロウボディ。粗くクランチーなトーン。
Epiphone Dot
2基のP-94搭載。
Gibson Faded Special Double Cutaway
2基のP-90搭載。
Gibson Les Paul Custom (Black)
Gibson Les Paul (Tobacco Burst)
’58 Standard Plain Topに似たモデル。
Gibson Les Paul Junior (’54 reissue VOS, TV Yellow)
Fender Telecaster (Custom Shop)
Duesenberg semi-hollow
🔊 アンプ
Fender Hot Rod DeVille 212
初期レコーディングのメイン。設定は「全て7」にすることが多かったとされる。
Fender Super-Sonic
Fender 4×12″ extension cabinets
Carr Slant 6V combo
Carr Rambler
Vox AC30
「Hard to Explain」のトーン再現に推奨。ストロークス特有のリバーブレスな音作りに合致。
Vox AC4TV
「You’re So Right」のソロなどで使用。
🎛️ エフェクター
Visual Sound Jekyll & Hyde Ultimate Overdrive (V1)
サウンドの中核。ディストーションは常時ONのことが多い。
Pro Co RAT Distortion
アルバート・ハモンドJr.と共に使用。ザラついた集中力あるドライブ。
Durham Electronics Sex Drive
スタジオでオーバードライブ的に使用。
Vox Cooltron Bulldog Distortion
Visual Sound Double Trouble
Ibanez No. 59 Standard Fuzz (Late ’70s)
2022年のボードで確認。
Klon Centaur
2019年は2台、2022年は1台。高価なため注目されたペダル。
Electro-Harmonix Deluxe Memory Man
スラップバックやテクスチャに使用。
Maxon AD-9 Pro Analog Delay
スタジオで使用。
MXR M-133 Micro Amp
クリーンブースト。アンプを自然に歪ませる。
MXR Dyna Comp
リズムのパンチを強調。
Boss TR-2 Tremolo
波形を三角/四角に調整可能な純粋トレモロ。
Boss CE-2 Chorus
後期でメロウなモジュレーション用。
Boss BF-2 Flanger
コーラス的に使われる場合あり。
Electro-Harmonix Octave POG
「Selfless」でオクターバーサウンドに使用。
Roland GR-300 (Guitar Synth)
「At The Door」で使用されたシンセサウンド生成。
Demeter TRM-1 Tremulator
Boss TU-2 Chromatic Tuner
Visual Sound Visual Volume
Death by Audio Micro Harmonic Transformer
スタジオで使用。
JHS Colour Box V2
Neveコンソールを模したスタジオグレードプリアンプ。後に外された可能性あり。
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