始めに(特徴紹介)
NELKEのギタリスト、伊藤雅景は独自の音作りと緻密なプレイスタイルで注目を集めています。 1980年代後半製のストラトキャスターをベースにしたサウンドは、ヴィンテージ感と現代的な切れ味を融合させた独特の質感を持っています。
代表曲「Believe in Breeze」では、サブの1987年製Fender Stratocasterを使用し、ロー〜ローミッドに重心を置いた落ち着いた音色で楽曲の透明感を支えています。 また、Marshall 1987Xを中心に据えたアンプサウンドは、ロックの王道的な存在感を放ちながらも、細部のEQ調整によって繊細さを兼ね備えています。
彼の音作りが注目される理由は、単に機材の豪華さではなく、細部まで調整されたセットアップと「1mmのフローティング」「ピックアップの選択と歪みの役割分担」といったプレイヤー自身の美学に基づいた構築力にあります。 この結果、NELKEの音楽が持つ幻想的かつ力強い世界観をギターが表現できているのです。
伊藤雅景のギターサウンドを深掘りすることで、NELKEの音楽性の根幹に迫ることができます。以下のセクションでは、実際に使用しているアンプ、ギター、エフェクターの構成を詳しく解説していきます。
使用アンプ一覧と特徴【NELKE・伊藤 雅景】
伊藤雅景のサウンドの基盤を支えているのが、Marshall 1987XとMarshall 1960Aキャビネットの組み合わせです。 1987Xは「プレキシ」と呼ばれるヴィンテージ・サウンドを現代に蘇らせたモデルで、彼の演奏においてもクラシカルなロックトーンをベースにしながら、透明感とレンジの広さを両立させています。
入力は「HIGH 1」と「HIGH 2–LOW 1リンク」を使用しており、これによってゲインとレンジをコントロールしています。設定例としてはPresence 3.9/Bass 3/Middle 3/Treble 0/High Treble(Loudness1) 1/Normal(Loudness2) 4という非常に独自のEQバランスが紹介されています。Trebleを0に落としつつPresenceで空気感を補うセッティングは、彼の“耳で聴いて作る”哲学を感じさせるものです。
また、エフェクトループには「なとり音造 Occult Dip Box TYPE RH(バッファー)」と「Shin’s Music Baby Master 2(アッテネーター)」を導入。これによりアンプ本体の音圧やキャラクターを保ちながら、ステージやスタジオでの音量を調整する柔軟性を確保しています。 使用しているキャビネットは渋谷Milkyway所有のMarshall 1960Aで、スピーカーコーンが換装された個体を借用している点も特徴的です。
さらに過去にはHiwatt DR-103やMarshall JCM900も使用経験があり、これは一時的な借用やサウンド模索の中で選ばれていたようです。特にHiwattはクリーントーンの張り出しが魅力的で、NELKEの楽曲に必要なレンジ感を試していた時期もあると考えられます。 しかし、2024年末以降はMarshall 1987Xに集約されており、ライブやレコーディングのメインとして定着していると見られます。
これらの点を踏まえると、伊藤雅景のアンプ選びは「クラシカルなロックサウンドを土台に、繊細なEQと現代的な調整を加える」方向性で統一されているといえます。結果として、太さと繊細さが共存するNELKEの音像を作り出すことに成功していると想定されます。
使用ギターの種類と特徴【NELKE・伊藤 雅景】
伊藤雅景の音作りにおいて最も重要なのが、メインギターである1989 Fender Eric Clapton Stratocasterです。 このモデルは当初からクラプトンのシグネチャーとして高い完成度を誇るストラトですが、伊藤はこれを徹底的に改造し、自身の理想的なトーンへと仕上げています。
まず、ピックアップはLindy Fralin Real ‘54 Setに交換され、フロントとセンターを主体に使用。ヴィンテージライクな高域のきらびやかさと、ローのバランス感が特徴です。内部配線やコンデンサも「なとり音造」でヴィンテージ仕様にモディファイされており、モダンなストラトとは一線を画す深みのある倍音を生み出しています。さらにKTS PR-11チタン・サドルやFreedom CGR Tone Shift Plate、Raw Vintageスプリング×5といったハードウェア面の徹底したチューニングも見逃せません。 チューニングは半音下げ、ブリッジは1mmフローティング、弦はFender Super 250’s (.010–.046)を選択しており、演奏性とサウンドの安定感を両立させています。
サブとして使用されているのは1987年製Fender Stratocaster(日本製・借用個体)です。このモデルはメインと同様のセットアップが施されており、特に「Believe in Breeze」のレコーディングで使用されたことが確認されています。音色の傾向としてはローからローミッドにかけて落ち着きのあるコシを持ち、メインよりも柔らかく温かい印象を与えています。ライブではメインのバックアップ的存在として機能しつつ、場面によってはその落ち着いたサウンドが楽曲に独特の奥行きを与えています。
また、過去にはジャズマスターやSGを使用していたことも確認されています。具体的なモデルは明らかになっていませんが、ジャズマスターは空間系との相性の良さ、SGは中域に寄った力強さを目的に採用していたと考えられます。これらの選択からも、彼が楽曲やアレンジに応じて多彩なキャラクターを試していたことがうかがえます。
総じて伊藤雅景のギター選びは「ストラトキャスターを基盤に、細部を徹底的に調整して自らの理想像を作り込む」という姿勢に貫かれており、その結果としてNELKE特有の幻想的かつ力強いサウンドが生まれていると想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1989 Fender Eric Clapton Stratocaster | Fender | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ストラトキャスター | メインギター。Lindy Fralin PU、チタン・サドルなど大幅改造。 |
1987 Fender Stratocaster(日本製・借用個体) | Fender | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ストラトキャスター | サブギター。「Believe in Breeze」レコーディングで使用。 |
Jazzmaster(モデル不明) | Fender | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ジャズマスター | 過去使用。空間系との相性を意識したと推測。 |
SG(モデル不明) | Gibson | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | SGタイプ | 過去使用。中域寄りの力強さを狙ったと推測。 |
使用エフェクターとボード構成【NELKE・伊藤雅景】
伊藤雅景のサウンドを特徴づける大きな要素が、緻密に組まれた2枚組のエフェクターボードです。ワイヤレスから始まり、プログラマブルスイッチャーでルーティングを整理し、ディレイやモジュレーション、リバーブを自在に操ることで、NELKE特有の幻想的な音像を構築しています。ここでは、その構成を詳しく解説します。
まず入り口にはShure GLXD16+を用いたワイヤレスシステムが配置されています。これによりステージ上で自由に動き回るパフォーマンス性と安定した信号伝送を両立。続いてIbanez WH10 V3がセットされ、ワウペダルによるアタック感や表現力をプラスします。
メインの歪み系はFREE THE TONE ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)を中心に構築され、各ループに割り当てられたペダルが役割を明確化しています。① Eastern Music Device PD-1(オーバードライブ/クランチ)、② ProCo RAT 2(ディストーション/メイン歪み)、③ Demeter Fuzzulator(ファズ/ソロ用)、④ Z.Vex Box of Rock(オーバードライブ/後段ブースト)という順序で、状況に応じて切り替え可能となっています。この構造により、1曲の中で多彩な歪みニュアンスを展開できるのが伊藤の大きな強みです。
空間系ではEventide TimeFactorをMIDIでARC-53Mに連携し、精緻なディレイを構築。Electro-Harmonix Big Muff Piも「破壊用」として導入され、場面によってRam’s Head表記やOP-AMPの違いが語られるほど個体差のある使用歴が確認されています。さらに、ZOOM MS-50Gを「The Vibe」プリセット専用として割り切り、モジュレーションを一点突破で活用するのもユニークな選択です。
また、左ボードにはRed Panda Tensor(ピッチ/ホールド)、Chase Bliss MOOD MKⅡ(リバーブ/ルーパー)が組み込まれ、BOSS EV-5を接続してリアルタイムの音響操作を可能にしています。最後段にはBOSS FV-300L(ボリュームペダル)が配置され、音量表現を直線的なカーブでコントロール。これにより「楽曲における呼吸感」を自在に演出できる設計となっています。
電源系統はVoodoo Lab Pedal Power 2 PlusとVITAL AUDIO VA-08 MkIIで安定供給されており、ライブでもノイズレスかつ安定した駆動を実現。全体として「確実に使い分けられる歪みと、実験的かつ幻想的な空間演出」の二軸で構築されているのが伊藤ボードの真髄です。これにより、NELKEサウンドが持つ浮遊感と迫力を両立していると想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Shure GLXD16+ | Shure | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ダイレクトボックス | ワイヤレス受信機として使用。 |
Ibanez WH10 V3 | Ibanez | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ワウペダル | 定番ワウ。音色に表情付け。 |
FREE THE TONE ARC-53M | FREE THE TONE | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | スイッチングシステム | 歪み系を管理する中心機材。 |
Eastern Music Device PD-1 | Eastern Music Device | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | オーバードライブ | ARCループ①。クランチ担当。 |
ProCo RAT 2 | ProCo | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ディストーション | ARCループ②。メイン歪み。 |
Demeter Fuzzulator | Demeter | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ファズ | ARCループ③。ソロ用に使用。 |
Z.Vex Box of Rock | Z.Vex | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | オーバードライブ | ARCループ④。後段ブーストとして。 |
Eventide TimeFactor | Eventide | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ディレイ | MIDI連携。精緻なディレイ構築。 |
Electro-Harmonix Big Muff Pi | Electro-Harmonix | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ファズ | 破壊的なサウンド用。個体差あり。 |
ZOOM MS-50G | ZOOM | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ギター用マルチエフェクター | 「The Vibe」プリセットを主用。 |
Red Panda Tensor | Red Panda | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ピッチシフター | ホールド・ピッチ演出用。 |
Chase Bliss MOOD MKⅡ | Chase Bliss | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | リバーブ | ルーパー機能も活用。EV-5接続。 |
BOSS EV-5 | BOSS | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | エクスプレッションペダル | MOOD MKⅡのコントロール用。 |
BOSS FV-300L | BOSS | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ボリュームペダル | 直線的カーブ好み。最終段で音量管理。 |
Sonic Research ST-200 | Sonic Research | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | チューナー | 高精度チューニングを実現。 |
Voodoo Lab Pedal Power 2 Plus | Voodoo Lab | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | パワーサプライ | ボードの安定供給電源。 |
VITAL AUDIO VA-08 MkII | VITAL AUDIO | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | パワーサプライ | サブ電源。安定性を補強。 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【NELKE・伊藤雅景】
伊藤雅景の音作りの核心は、細部まで突き詰められたセッティングと、楽曲ごとに最適化されたEQバランスにあります。単に「Marshall 1987X+ストラト」という組み合わせではなく、その中でどうやってレンジ感を整え、バンドサウンドに溶け込ませるかが重要なポイントです。
アンプの設定例では、Presence 3.9/Bass 3/Middle 3/Treble 0/High Treble(Loudness1) 1/Normal(Loudness2) 4と、かなり独特なEQが用いられています。Trebleを完全にカットしながらPresenceで高域の空気感を補い、さらにMiddleとBassをバランス良く整えることで、耳に痛くない中高域を実現しています。これにより、NELKEの幻想的で立体感のあるサウンドの中でもギターが前に出過ぎず、ボーカルやシンセの空間を邪魔しないように配慮されています。
また、歪みのかけ方にも特徴があります。基本的にはフロント〜センターのピックアップを選び、柔らかく粒立ちの良いクランチ〜ディストーションを作り出しています。リアピックアップを使う際はDemeter Fuzzulatorを併用し、高域を整える工夫が施されています。単純なファズサウンドではなく、むしろトーンコントロールの一環として使われている点が非常にユニークです。
空間系の処理も重要な要素です。Eventide TimeFactorを用いたディレイはMIDIでテンポ同期され、楽曲ごとに異なるリピート感を正確に再現。特に「Believe in Breeze」ではサブのストラトキャスターにディレイを深めにかけ、楽曲の浮遊感を支えています。Chase Bliss MOOD MKⅡやRed Panda Tensorといった先鋭的なエフェクターも、ただの実験的な要素ではなく「楽曲の一部として組み込む」意識で使用されており、PAやミックス時には必要に応じてEQカットやリバーブ成分の調整が加えられていると考えられます。
ミックス面では、ギターがローを支配しすぎないように注意されており、特にベースとバスドラムの周波数帯域と被らないよう、アンプ側のBassを3程度に抑えるのがセッティングの鍵となっています。逆に、ライブ会場の規模によってはPAエンジニアが2kHz〜3kHz付近を軽くブーストし、抜けを補正することも多いでしょう。こうした「現場ごとの微調整」によって、安定感のあるギターサウンドが実現されています。
総じて伊藤雅景の音作りは「徹底したカットと微調整によるレンジコントロール」「歪みの役割分担」「空間系をバンドアレンジに溶け込ませる」ことを軸にしています。これらの工夫によって、NELKEのサウンドが力強さと透明感を同時に成立させていると想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【NELKE・伊藤雅景】
伊藤雅景のボード構成は非常に緻密で高価な機材が多いですが、初心者や中級者でも比較的安価に彼のサウンドへ近づける方法は存在します。ここでは、1万円〜5万円程度の市販機材を中心に、再現性の高い選択肢を紹介します。
まず歪み系。伊藤がメインで使用するProCo RAT 2は比較的安価に入手でき、荒々しい中にも芯のあるディストーションを得られます。RATはギターのボリューム操作にも敏感に反応し、クランチから強めの歪みまで幅広くカバーできるため、彼の音作りを模倣するには最適です。また、ソロ用のファズとしてはElectro-Harmonix Big Muff Piが定番で、こちらも入門者でも手を出しやすい価格帯。破壊的なサウンドから厚みのあるサステインまで対応できるので、NELKEの楽曲の雰囲気を手軽に再現できます。
次に空間系。伊藤が使うEventide TimeFactorやChase Bliss MOOD MKⅡは高価ですが、代替としてはBOSS DD-8やZOOM MS-70CDRが有力です。DD-8はシンプルながら多彩なディレイモードを搭載し、テンポ同期や多段リピートで浮遊感を演出可能。MS-70CDRはマルチエフェクターとしてコーラスやリバーブも統合されているため、複数ペダルを揃えなくても1台で「空間的な広がり」を再現できます。
ワウについてはIbanez WH10 V3が定番ですが、こちらも価格帯的に導入しやすい選択肢。より低価格帯であればBOSS VOX V845も候補になります。モジュレーションについてはZOOM MS-50GやBOSS CE-2Wを活用することで、伊藤が使う「The Vibe」系の揺らぎに近づけられます。
最後にアンプ再現。Marshall 1987Xは高額なヴィンテージ系アンプですが、BOSSのアンプシミュレーター(GT-1やIR-200など)や、VOX Pathfinder 10のような小型アンプで「クリーンからクランチに自然に遷移する特性」を味わえます。これらは価格帯こそ抑えめですが、音作り次第で十分に「NELKE的な音の骨格」に近づけることが可能です。
総じて、伊藤雅景の音を完全再現するのは難しいものの、「RAT 2+Big Muff+ディレイ(BOSS DD-8)」という基本セットを揃えるだけで、彼のサウンドの核である「透明感と迫力の両立」にかなり近づけるといえるでしょう。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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ディストーション | ProCo RAT 2 | ProCo | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | メイン歪みの代替。安価で定番。 |
ファズ | Electro-Harmonix Big Muff Pi | Electro-Harmonix | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | ソロや厚みを再現できる入門ファズ。 |
ディレイ | BOSS DD-8 | BOSS | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | 高性能ながら比較的安価。浮遊感再現に有効。 |
マルチエフェクター | ZOOM MS-70CDR | ZOOM | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | 空間系全般を1台で再現可能。 |
ワウペダル | Ibanez WH10 V3 | Ibanez | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | 本人使用モデル。導入しやすい。 |
アンプシミュレーター | BOSS IR-200 | BOSS | Amazonで探す | NELKE | 伊藤雅景 | Marshall系トーンをシミュレート可能。 |
総括まとめ【NELKE・伊藤雅景】

伊藤雅景の音作りを総合的に捉えると、その本質は「クラシカルなロックトーンを基盤にしながら、現代的な繊細さと空間的な広がりを付与すること」にあります。Marshall 1987Xを軸としたアンプサウンドは、ただのヴィンテージ回帰ではなく、PresenceやTrebleの大胆なカットなど独自のEQバランスでバンドサウンドに最適化されています。これにより、NELKEの幻想的な音像の中でギターが埋もれず、かつ主張しすぎない絶妙な立ち位置を獲得しています。
また、ギターに関しては「1989年製Eric Clapton Stratocaster」を徹底的にカスタマイズし、自分の理想的な倍音構造や弦のテンション感を実現している点が特筆すべきポイントです。さらに、サブギターの1987年製日本製ストラトを同様のセットアップで運用し、楽曲やレコーディングの場面に応じて使い分けているのも、音作りの一貫性と柔軟性を両立させています。
エフェクターボードにおいては、徹底したルーティングの整理と「歪みの役割分担」「空間系の実験的な導入」が目立ちます。RAT 2を中心としたディストーションの基盤に、ファズやブーストを重ねて多彩な歪みを展開しつつ、Eventide TimeFactorやMOOD MKⅡで楽曲の世界観を拡張する。これらは単なるエフェクトの追加ではなく、あくまでも「曲に必要な音響をどう配置するか」というプロデューサー的な視点に立ったアプローチであるといえるでしょう。
さらに重要なのは、伊藤雅景の音作りが「現場での再現性」を強く意識していることです。アンプの音量管理をアッテネーターで調整し、ワイヤレスや安定した電源システムでライブ環境でも変化の少ないサウンドを実現している。これはプロフェッショナルとして「どの会場でもNELKEの音を再現する」という強いこだわりを感じさせます。
総じて、伊藤雅景の音作りは「ヴィンテージとモダンの融合」「繊細さと迫力の共存」「徹底的な現場主義」という三本柱に集約されます。読者が彼のサウンドを再現したい場合、機材そのものをコピーするよりも、この「音作りの思想」を理解することが何より重要です。つまり、単に機材を揃えるのではなく、EQの調整や歪みの使い分け、空間系の活かし方を丁寧に学ぶことで、NELKEの音に近づくことができるでしょう。
伊藤雅景の音作りを追いかける過程は、そのまま「自分自身の理想のギターサウンドを見つける旅」でもあります。読者の皆さんもぜひ、彼のサウンド哲学をヒントに、自分だけの音を作り上げてみてください。
“`
下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
ギター
1989 Fender Eric Clapton Stratocaster(メイン)
改造:Lindy Fralin Real ‘54 Set(F-sugar交換)、内部配線&コンデンサを“なとり音造”でヴィンテージ化、KTS PR-11 チタン・サドル、Freedom CGR Tone Shift Plate、Raw Vintageスプリング×5。半音下げ、ブリッジは約1mmフローティング、弦はFender Super 250’s .010–.046。
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1987 Fender Stratocaster(サブ/日本製・借用個体)
音色は“ロー〜ローミッドが落ち着いたコシ”。レコーディングでは「Believe in Breeze」で使用。セットアップ(弦・チューニング・スプリング)はメイン同様。
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(参考:過去使用)ジャズマスター、SG(具体モデル不明)
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アンプ/キャビ
Marshall 1987X(Head)+ Marshall 1960A(Cabinet)
導入は2024年末。入力:HIGH 1、HIGH 2–LOW 1リンク。設定例:Presence 3.9/Bass 3/Middle 3/Treble 0/High Treble(Loudness1) 1/Normal(Loudness2) 4。
センド/リターン:なとり音造 Occult Dip Box TYPE RH(バッファ)→ Shin’s Music Baby Master 2(アッテネーター)。キャビはShibuya Milkyway所有の1960A(スピーカーコーン換装個体)を借用。
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(参考:過去使用)Hiwatt DR-103、Marshall JCM900(一時借用)
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エフェクター(2枚組ボード/ユニーク名で統合)
Shure GLXD16+(ワイヤレス受信機)
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Ibanez WH10 V3(ワウ)
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FREE THE TONE ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
Loop割当:①PD-1、②RAT2、③Fuzzulator、④Box of Rock、⑤未使用。
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Eastern Music Device PD-1(OD/クランチ)
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ProCo RAT 2(Dist/メイン歪み)
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Demeter Fuzzulator(Fuzz/ソロ用)
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+1
Z.Vex Box of Rock(OD/後段ブースト運用)
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Eventide TimeFactor(Delay/MIDIでARC連携)
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Electro-Harmonix Big Muff Pi(“破壊用”に使用)
注:記事のペダル表はRam’s Head表記、本文はOP-AMPと記載—使用個体の表記に揺れあり。
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ZOOM MS-50G(The Vibeプリセットを主用)
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Red Panda Tensor(ピッチ/ホールド演出)
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Chase Bliss MOOD MKⅡ(リバーブ/ルーパー)+ BOSS EV-5(MOOD用EXP)
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BOSS FV-300L(Vol/直線的カーブ好み)
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Sonic Research ST-200(チューナー)
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Voodoo Lab Pedal Power 2 Plus、VITAL AUDIO VA-08 MkII(電源)
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備考(運用・セッティングの要点)
信号経路(要約):GLXD16+ → WH10 → ARC-53M(PD-1/RAT2/Fuzzulator/Box of Rock)→ TimeFactor → Big Muff → MS-50G →(左ボード)Tensor → MOOD MKⅡ → FV-300L → Amp。EV-5はMOODに接続。
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ピックアップ選択と歪み:基本はフロント/センター、リア使用時のみFuzzulatorを併用し高域を整える運用。
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