始めに(特徴紹介)
サカナクションのフロントマンであり、ボーカル兼ギタリストとして活動する山口一郎は、バンドサウンドの中で独特な音作りを展開しています。エレクトロニカやニューウェーブの要素をロックに融合させた楽曲群の中で、彼のギターは「コード感の明瞭さ」と「空間系エフェクトを駆使した広がり」を両立させるのが特徴です。
代表曲である「アイデンティティ」では、歯切れのよいカッティングにディレイを組み合わせ、シンセやリズムと絡み合うタイトなサウンドを表現。一方で「新宝島」では、オクターブ奏法を駆使したリフに厚みのあるリバーブを乗せることで、シンプルながらも耳に残るフレーズを構築しています。さらに「夜の踊り子」や「アルクアラウンド」では、アンビエント的な空気感をギターで生み出し、バンド全体のサウンドスケープに大きく寄与しています。
山口一郎のプレイスタイルは、派手なソロやテクニカルな速弾きではなく「曲全体の空間をデザインすること」に重きを置いています。そのため、ギターは主役でありながらもバンドの音像に溶け込み、聴く人に「一体感」と「没入感」を与える役割を果たしています。
彼の音が注目される理由は、シンプルなフレーズを緻密なエフェクト処理とEQバランスで最大限に活かしている点にあります。特にリバーブ、ディレイ、モジュレーションの使い方は邦楽ロックシーンの中でも際立っており、「ギター=リフやソロ」といった固定観念を超え、シンセやベースと対等に渡り合うサウンドを構築していることが特徴です。
また、サカナクションの楽曲制作では山口が自らDTMを駆使してデモを組み立てることも多く、宅録やミックスでのEQ処理がライブのサウンドにも直結しています。そのため、機材の選び方や設定はギタリストという枠を超え「音楽プロデューサー的な視点」に裏打ちされたものといえるでしょう。
こうした点から、彼のギター音作りは「テクニックよりも音のデザイン」に重点があり、これがサカナクションの唯一無二の世界観を支える要素となっています。
以下では、使用アンプ、ギター、エフェクター、音作りのEQやミックスの工夫まで徹底的に解説していきます。
使用アンプ一覧と特徴【サカナクション・山口一郎】
山口一郎の音作りを語る上で欠かせないのがアンプ選びです。彼はライブやレコーディングで複数のアンプを使い分け、楽曲ごとに最適なトーンを作り上げています。サカナクションのサウンドは「空間的な広がり」と「輪郭のあるクリーン〜クランチ」が両立しているのが特徴で、それを支えるのが以下のアンプ群です。
まず代表的なのがMATCHLESS DC-30。クリーンとクランチの中間域を美しく鳴らし、ピッキングニュアンスの再現性が非常に高いモデルです。山口はリフやアルペジオを際立たせるためにDC-30を多用し、音の粒立ちをバンド全体のリズムに同期させています。特に「アルクアラウンド」のようなギターが浮遊する楽曲では、このアンプのクリーン寄りのサウンドが活かされていると考えられます。
一方で、より鋭いアタック感を求める場面ではHIWATT Custom 100が登場します。ブリティッシュアンプらしい立ち上がりの早さと、タイトなローエンドが特徴。シーケンスやシンセと混ざる中で埋もれない存在感を発揮します。ライブでのカッティングや強めのクランチが必要な楽曲で重宝されていると想定されます。
さらにORANGE Rockerverb 50とPPC412キャビネットの組み合わせも確認されています。ORANGE特有の中域に厚みのある歪みを活用し、モダンでありながらも温かみのあるサウンドを実現。ロック寄りの曲調でギターが前面に出るときに、このアンプが選ばれていると推測されます。
また、重厚なサウンドが必要な場合に使用されるのがDiezel Herbert。ハイゲインアンプとして有名で、空間系エフェクトとの相性も良い点から、ディレイやリバーブを多用する山口の音作りにおいて、分離感を保ちながらも迫力のあるトーンを提供しています。
これらのアンプを使い分けることで、サカナクションの楽曲ごとに多彩な音色を再現しています。MATCHLESSによる繊細なクランチ、HIWATTのアタック感、ORANGEの厚み、Diezelのモダンな歪みが組み合わさり、唯一無二のサウンドスケープが構築されているといえるでしょう。
まとめると、山口一郎のアンプ選びは「透明感のあるクリーンとエッジの効いたクランチを両立させること」に重きが置かれており、楽曲やライブシチュエーションごとに巧みに使い分けられている、と想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
MATCHLESS DC-30 | MATCHLESS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | クリーン〜クランチの表現力に優れ、ライブで頻繁に使用。 |
HIWATT Custom 100 | HIWATT | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ブリティッシュ特有のタイトなクリーンとクランチを再現。 |
ORANGE Rockerverb 50(コンボ) | ORANGE | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | 中域に厚みがあり、ロック寄りの楽曲で使用される。 |
ORANGE PPC412 | ORANGE | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | Rockerverbとの組み合わせで使用されるキャビネット。 |
Diezel Herbert | Diezel | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | モダンな歪みと分離感を両立、リバーブやディレイとの相性も良い。 |
使用ギターの種類と特徴【サカナクション・山口一郎】
山口一郎のギター選びは、サカナクションの音楽性に直結しています。彼はヴィンテージギターから最新モデルまで幅広く使用し、それぞれの個性を活かしたサウンドを曲ごとに使い分けています。以下に、実際に確認されたギターとその特徴をまとめます。
代表的なのがRickenbacker 330(Jetglo/ブラック)です。2008年に入手した黒のモデルを愛用し、シャープで明瞭なコード感を特徴としています。特に「アルクアラウンド」や「ネイティブダンサー」などの楽曲で、そのジャキッとしたトーンが楽曲の輪郭を際立たせています。リッケンバッカー特有のP-90系シングルコイルサウンドが、シンセやベースと絡む中で埋もれず、独特な存在感を放ちます。
またRickenbacker 425 V63(Jetglo)は非常に希少なシングルコイル搭載モデルで、よりタイトなサウンドを実現します。ライブや特定の曲で使用されており、330とは異なるレンジ感を提供します。
Fender 1967 Telecasterはヴィンテージの極めて高価な個体で、シンプルかつダイレクトなシングルコイルトーンを持ち、楽曲にクリーンで芯のあるサウンドを加えています。特にリズムカッティングやアルペジオにおいて、存在感を強調する役割を担っています。
さらにFender Stratocasterも使用。ストラト特有のレンジの広さとクリーン〜クランチの扱いやすさから、ライブやレコーディングで万能に対応。シングルコイルならではのブライトなトーンが、シンセと溶け込みつつも抜けの良さを保ちます。
Fender Johnny Marr Jaguarも山口の愛用ギターのひとつです。ブライトな立ち上がりと独特な倍音感を持ち、リフやコードワークを際立たせるのに適しています。ジャガー特有のショートスケールによる弾きやすさも魅力です。
Gibson ES-335はセミアコ構造を持ち、2本所有しているとされています。温かみと抜けの良さを兼ね備え、空間系エフェクトと組み合わせることで、サカナクションのアンビエントな世界観を支える重要な存在です。
Epiphone Casinoはフルアコ構造ならではの軽快なトーンが特徴。ビートルズ的な雰囲気を思わせる音色で、バンドのエレクトロ要素にナチュラルな揺らぎを加えています。
アコースティックギターでは、Gibson 1946 J-45(ヴィンテージ)や1960 J-45を使用。長年の使用による豊かな鳴りが、サカナクションのアコースティック楽曲で重要な役割を果たしています。また、Alvarez Yairi DY1やFender American Acoustasonic Telecaster、K.Yairi JY-45なども導入しており、曲ごとに最適なアコースティックサウンドを実現しています。
これらのギターを使い分けることで、山口はシンセやベース、ビートに負けない存在感を持つギターサウンドを作り上げています。リッケンバッカーによる煌びやかさ、フェンダーによる芯の強さ、ギブソンによる温かみと深み、それぞれが曲ごとに選択され、サカナクションの音楽を支えていると想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Rickenbacker 330(Jetglo) | Rickenbacker | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | セミホロウ | 2008年購入。ライブやPVでメイン使用。 |
Rickenbacker 425 V63(Jetglo) | Rickenbacker | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ソリッド | 希少なシングルコイル搭載モデル。 |
Fender 1967 Telecaster | Fender | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ソリッド | ヴィンテージの高価な個体、リズムやアルペジオに使用。 |
Fender Stratocaster | Fender | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ソリッド | 万能なシングルコイルトーンを提供。 |
Fender Johnny Marr Jaguar | Fender | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ソリッド | ブライトな立ち上がりが特徴、リフ向き。 |
Gibson ES-335 | Gibson | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | セミアコ | 2本所有。温かみと抜けの良さを両立。 |
Epiphone Casino | Epiphone | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | フルアコ | 軽快なトーンでビートルズ的響きを持つ。 |
Gibson 1946 J-45 | Gibson | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | アコースティック | ヴィンテージ特有の深い鳴りを持つ。 |
Gibson 1960 J-45 | Gibson | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | アコースティック | アコースティック楽曲で重要な存在。 |
Alvarez Yairi DY1 | Alvarez Yairi | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | アコースティック | サンバースト仕様。柔らかな鳴り。 |
Fender American Acoustasonic Telecaster | Fender | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | エレアコ | ライブでの即戦力として使用。 |
K.Yairi JY-45 | K.Yairi | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | アコースティック | 日本製の精巧な作りで、安定感が高い。 |
使用エフェクターとボード構成【サカナクション・山口一郎】
山口一郎のギターサウンドを特徴づける大きな要素がエフェクターの選択とボード構成です。彼の音作りは「空間系の広がり」と「コード感の明瞭さ」を両立させることにあり、そのためにリバーブやディレイ、モジュレーション系を多用しています。さらにオーバードライブやファズなどの歪み系も複数取り入れ、曲ごとに質感を調整していることが確認できます。
歪み系ではBOSS BD-2 Keeley MODやMaxon OD820 Overdrive Pro、MXR EVH 5150 Overdriveといった多彩なオーバードライブを使用。特にBD-2 Keeley MODは、ナチュラルで透明感のある歪みを実現し、コードカッティングに最適です。Maxon OD820はブースター的に使用されることも多く、粒立ちを維持しながらサウンドに厚みを加えています。さらに、BIXONIC Expandora IIはファズ的な荒々しさも表現可能で、「ネイティブダンサー」のようなダンサブルなトラックにエッジを加える役割を果たしています。
モジュレーション系ではDigiTech XHP Hyper PhaseやEventide ModFactorを使用。Hyper Phaseはきらびやかなフェイザー効果を生み出し、アルペジオやバッキングを幻想的に彩ります。一方、ModFactorは多機能モジュレーションで、フランジャーやビブラートを含む幅広い効果を実現。ライブにおいても山口の空間演出の要となっています。
リバーブ系はBOSS RV-5とStrymon blueSkyを導入。RV-5は汎用性の高い定番リバーブで、クリーントーンに自然な奥行きを与えます。blueSkyは高解像度でディープなリバーブを可能にし、アンビエント寄りの楽曲で効果的に使用されていると考えられます。
ディレイはBOSS DD-20 Giga DelayやKORG SDD-3000 Pedalをメインに使用。DD-20はステレオ対応で長時間ディレイを実現し、シーケンスと絡むリズミカルなギターに効果的。SDD-3000はU2のThe Edgeでも知られる名機で、透明感のあるディレイを提供し、山口の浮遊感のある音作りに欠かせません。
さらにピッチシフターとしてDigitech WHAMMY5を導入し、楽曲中でオクターブ奏法や大胆な音程変化を演出します。低音補強やライン録音にはMXR M80 Bass D.I.+やCommuneMOD SANSAMP Bass Driver DIも取り入れられており、ギターとベースの中間的な音色を担うことでサウンドの厚みを出しています。
最後に、ボード全体を管理するのがFree The Tone ARC-3(スイッチャー)です。複数のエフェクターを自在に切り替えられるため、曲ごとに瞬時に音色を変えることが可能になっています。山口一郎のライブでの安定感ある音作りを支える縁の下の力持ちといえるでしょう。
以上のように、彼のエフェクターボードは「歪み系+空間系+スイッチャー」による緻密な構成であり、シンプルなフレーズでも豊かな音像を生み出すことを可能にしています。これらを組み合わせることで、サカナクションの独自性の高いサウンドスケープが完成している、と想定されます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
BOSS BD-2 Keeley MOD | BOSS / Keeley | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | オーバードライブ | ナチュラルで透明感のある歪みを実現。 |
Maxon OD820 Overdrive Pro | Maxon | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | オーバードライブ | ブースター的にも使用される定番ペダル。 |
MXR EVH 5150 Overdrive | MXR | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ディストーション | モダンで高出力な歪みを提供。 |
BIXONIC Expandora II | BIXONIC | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ファズ | 荒々しい歪みを生み出す独特なオーバードライブ兼ファズ。 |
DigiTech XHP Hyper Phase | DigiTech | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | フェイザー | 幻想的で揺らぎのある空間演出を可能に。 |
Eventide ModFactor | Eventide | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | モジュレーション系 | フランジャーやビブラートなど多彩な効果を搭載。 |
BOSS RV-5 | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | リバーブ | 汎用性が高く、自然な奥行きを付与。 |
Strymon blueSky | Strymon | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | リバーブ | 深く鮮明なリバーブを提供、アンビエント楽曲向き。 |
BOSS DD-20 Giga Delay | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ディレイ | ステレオ対応で長時間ディレイが可能。 |
KORG SDD-3000 Pedal | KORG | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ディレイ | 透明感のあるディレイ、The Edgeも愛用する名機。 |
Digitech WHAMMY5 | Digitech | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ピッチシフター | オクターブ奏法や大胆な音程変化を可能にする。 |
MXR M80 Bass D.I.+ | MXR | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | ダイレクトボックス | 低音域の補強やライン録音に使用。 |
CommuneMOD SANSAMP Bass Driver DI | Tech21 / CommuneMOD | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | プリアンプ/アンプシミュレーター | ベース的な厚みを補うために使用。 |
Free The Tone ARC-3 | Free The Tone | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | スイッチングシステム | 複数のエフェクトを自在に切替可能な中心的機材。 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【サカナクション・山口一郎】
山口一郎の音作りは、ギター単体の音色だけでなく「ミックス全体を見据えた設計」が大きな特徴です。サカナクションはシンセやベース、打ち込みリズムが複雑に絡み合うため、ギターはその中で埋もれず存在感を保ちながらも空間の一部として機能する必要があります。そのため彼はアンプ設定、エフェクト、EQ調整を緻密に使い分けています。
まずアンプのEQ設定においては、クリーントーンを基本としつつもミッドをしっかり残し、ローを抑え気味にする傾向が強いです。MATCHLESS DC-30やHIWATT Custom 100では、Trebleを50〜60%、Midを60〜70%、Bassを40%前後にセッティングし、タイトで抜けの良いクランチを作り出しています。これによりシンセやベースが主役となる低域を避けつつ、中域でギターの存在感を確保することができます。
リバーブやディレイの使用も重要です。BOSS RV-5やStrymon blueSkyを用いたリバーブは、Decayを短め(20〜30%)に設定し、クリーントーンを濁らせない工夫をしています。一方でアンビエントな楽曲ではDecayを長めに設定し、ギターがシンセのように溶け込む質感を演出。ディレイに関しては、BOSS DD-20やKORG SDD-3000 Pedalを使用し、リズムに同期したディレイタイムを設定するのが特徴です。特に「アルクアラウンド」では、8分音符や16分音符ディレイをリズムトラックと重ね、浮遊感とグルーヴ感を同時に実現しています。
歪みの設定はナチュラルさを重視。BOSS BD-2 Keeley MODやMaxon OD820を軽めにゲイン調整し、ピッキングの強弱でニュアンスをコントロールできる状態にしています。大きな歪みは避け、透明感を残したクランチサウンドを基本とし、必要に応じてMXR EVH 5150 OverdriveやBIXONIC Expandora IIで強い歪みを加えています。これにより、曲中でギターが「前に出る瞬間」と「空間に溶け込む瞬間」を切り替えられるのです。
ミックスにおいてはギターをセンターに置かないことが多く、左右に広げて配置することでシンセやボーカルを際立たせています。ダブルトラッキングやステレオディレイを駆使し、片側に原音、もう片側にウェット信号を配置するなど、空間的な広がりを意識したミックスが特徴です。特に「新宝島」では、左チャンネルにディレイが深めのリード、右チャンネルにクリーンなカッティングを置き、ダンスミュージック的な立体感を演出しています。
また、ライブとレコーディングではセッティングを柔軟に変える傾向もあります。ライブでは中域をやや強調し、輪郭のある音を確保。一方、レコーディングではローエンドをさらに削り、シンセベースとの干渉を避ける工夫を行っています。エンジニアリングの観点でも、ギターの周波数帯を2kHz〜4kHz付近でブーストし、ボーカルを邪魔しない範囲で存在感を出すことが多いと考えられます。
PAやエンジニアとの連携も重要で、会場の響きに応じてリバーブ量やディレイタイムを微調整。野外フェスではリバーブを少なめにして輪郭を重視し、ホールやクラブではリバーブを活かして空間演出を強めるなど、状況に応じた柔軟な対応が行われています。
結論として、山口一郎の音作りは「EQでの帯域整理」「空間系の活用」「歪みのコントロール」によって成り立っています。シンセやベースと共存しながらも存在感を保つため、あくまで全体のバランスを優先する姿勢が見られます。単なるギターサウンドの追求ではなく、バンド全体の音像設計の一環としてギターを活かすことが、彼の音作りの本質であると想定されます。
比較的安価に音を近づける機材【サカナクション・山口一郎】
山口一郎のサウンドは高価なリッケンバッカーやヴィンテージ・ギブソン、ハイエンドアンプによって支えられていますが、初心者や中級者でも「比較的安価な機材」を用いてその雰囲気を再現することは可能です。ポイントは①クリーン〜クランチの表現力 ②空間系エフェクトの活用 ③EQによる帯域整理の3点です。
まずギターに関しては、Rickenbacker 330やTelecasterの代替として、Fender JapanやSquierシリーズのテレキャスターやジャガーがおすすめです。5〜10万円程度の価格帯で入手可能で、ブライトで立ち上がりの早いシングルコイルサウンドが得られます。また、セミアコ的な響きを再現したい場合は、EpiphoneのDotやCasinoが比較的リーズナブルで効果的です。
アンプに関してはMATCHLESSやHIWATTは非常に高価ですが、代替としてRoland JC-40やBOSS Katanaシリーズが有力です。Roland JC-40はクリーンの透明感とコーラスの質感が素晴らしく、エフェクターとの相性も良好。BOSS Katanaは複数のアンプモデリングを搭載しており、クランチやクリーンを柔軟に作り込めます。
エフェクターに関しては、山口が使用する高級なStrymonやEventideに代わり、BOSSやZOOMのマルチエフェクターを活用することで十分再現可能です。例えばBOSS DD-8(ディレイ)やBOSS RV-6(リバーブ)は実売2万円前後で入手可能ながら、プロ仕様に匹敵するクオリティを誇ります。さらに、空間系をまとめて扱いたい場合はZOOM G3Xnなどのマルチエフェクターもおすすめです。
歪み系は、山口のように「透明感のあるオーバードライブ」を意識するならBOSS BD-2が最適です。Keeley MODでなくても十分雰囲気を再現できます。さらに音の厚みを出したい場合はIbanez Tube Screamer(TS9/TS808)もおすすめです。
最後に、初心者が音作りを学びながら再現する手段としては、マルチエフェクターの活用が非常に有効です。LINE6 POD GoやBOSS GT-1などは5万円以下で入手可能で、アンプモデリングや空間系を組み合わせて山口サウンドに近づけることができます。
以上を踏まえると、「テレキャスター系のギター」「Roland JC-40やBOSS Katana系のアンプ」「BOSSやZOOMの空間系エフェクター」を揃えることで、サカナクション風のサウンドを手軽に体験できるといえるでしょう。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
ギター | Squier Classic Vibe Telecaster | Squier (Fender) | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | リッケンバッカーやテレキャスターの代替として最適。 |
ギター | Epiphone Casino | Epiphone | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | フルアコ特有の軽快なトーンを安価で体験可能。 |
アンプ | Roland JC-40 | Roland | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | クリーンの透明感とコーラスで雰囲気を再現可能。 |
アンプ | BOSS Katana-50 MkII | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | モデリングアンプで多彩なサウンドを再現。 |
エフェクター | BOSS BD-2 | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | Keeley MODなしでも十分な透明感を得られる。 |
エフェクター | BOSS DD-8 | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | 手頃な価格で高品質ディレイを実現。 |
エフェクター | BOSS RV-6 | BOSS | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | 自然なリバーブから深めのアンビエントまで対応。 |
マルチエフェクター | ZOOM G3Xn | ZOOM | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | 複数エフェクトを一括管理、空間系を強化可能。 |
マルチエフェクター | LINE6 POD Go | LINE6 | Amazonで探す | サカナクション | 山口一郎 | アンプモデリング+空間系で本格的に近づける。 |
総括まとめ【サカナクション・山口一郎】

山口一郎の音作りを総合的に見ていくと、その本質は「ギターをひとつの楽器としてだけでなく、音楽全体の中での役割をデザインする」という視点にあります。単にリフやソロで主張するのではなく、シンセやベース、打ち込みリズムとの共存を前提とした音作りが徹底されているのです。そのため、彼のギターサウンドは常に空間性とバランスを意識したものになっています。
ギター機材においては、RickenbackerやFenderのシングルコイル系モデルを中心に据えることで、明瞭なコード感と煌びやかなトーンを実現。一方でGibson ES-335やEpiphone Casinoといったセミアコやフルアコを取り入れることで、温かみと奥行きを付与しています。つまり、「鋭さ」と「柔らかさ」を楽曲ごとに巧みに使い分けているのが特徴です。
アンプに関しては、MATCHLESSやHIWATTによるクリーン〜クランチのニュアンス、ORANGEやDiezelによる厚みとモダンな歪みを曲ごとに切り替えることで、ジャンルの幅広さに対応。エフェクターは空間系を中心に選び抜かれており、リバーブやディレイの調整によって、シンプルなフレーズであっても「立体感」と「没入感」をリスナーに与えています。
また、EQやミックスの観点から見ても、ギターが常にバンドの中で適切な位置に収まるよう設計されていることが特徴です。ローエンドを削り、ミドル〜ハイミッドを活かすことで、ベースやシンセと干渉せずに存在感を放ちます。ライブとレコーディングで異なるEQ処理を行う柔軟さも、山口のサウンドを支える大きな要因となっています。
初心者や中級者が山口のサウンドに近づけたい場合、必ずしも高価なリッケンバッカーやMATCHLESSを揃える必要はありません。重要なのは「クリーンとクランチの中間を活かすこと」「空間系エフェクトを適切に使うこと」「全体の中でギターの帯域を整理すること」です。これを意識すれば、SquierやEpiphoneといった廉価モデル、BOSSやZOOMのエフェクターを用いても十分に再現可能です。
最終的に、山口一郎の音作りは「音そのものをデザインする感覚」に根ざしています。ギターを「前に出す」か「空間に溶け込ませる」か、その瞬間瞬間で最適な選択を行うことがサカナクションの世界観を支えているのです。読者の皆さんも、自分の機材や環境で「空間とバランス」を意識しながらセッティングを追求すれば、山口一郎のサウンドに近づくことができるでしょう。
下記恐らく使用(所持)している機材のまとめです。参考までに!
エレキギター
Rickenbacker 330(Jetglo/ブラック)
輪郭のあるコード感が特徴。2008年購入の黒モデルを愛用。
Rickenbacker 425 V63(Jetglo)
希少なシングルコイル搭載モデル。
Fender 1967 Telecaster
ヴィンテージの極めて高価な個体。
Fender Stratocaster
汎用性の高い王道シングルコイルモデル。
Fender Johnny Marr Jaguar
ブライトで立ち上がりの早いシングルコイルサウンド。
Gibson ES-335(2本所有)
セミアコ構造による温かみと抜けのバランス。
Epiphone Casino
フルアコ構造の軽快なトーン。
アコースティックギター
Gibson 1946 J-45(ヴィンテージ)
Gibson 1960 J-45
Alvarez Yairi DY1(Sunburst)
Fender American Acoustasonic Telecaster
K.Yairi JY-45
アンプ・キャビネット
MATCHLESS DC-30(コンボ)
ピッキングニュアンスの反応が良く、クランチが心地よい。
HIWATT Custom 100
クリーン〜クランチの立ち上がりが早い英国アンプ。
ORANGE Rockerverb 50(コンボ)
ORANGE PPC412(キャビネット)
Diezel Herbert
歪みがモダンかつパワフル。
エフェクター
BOSS BD-2 Keeley MOD(オーバードライブ)
Maxon OD820 Overdrive Pro
MXR EVH 5150 Overdrive
BIXONIC Expandora / EXPANDORA II(オーバードライブ〜ファズ)
DigiTech XHP Hyper Phase(フェイザー)
BOSS RV-5(リバーブ)
Strymon blueSky(リバーブ)
BOSS DD-20 Giga Delay
KORG SDD-3000 Pedal(ディレイ)
Eventide ModFactor(モジュレーション)
Free The Tone PA-10A(イコライザー)
Digitech WHAMMY5
MXR M80 Bass D.I.+
CommuneMOD SANSAMP Bass Driver DI
BOSS TU-2 / TU-3(チューナー)
Free The Tone ARC-3(スイッチャー)
キーボード・シンセサイザー
Moog Subsequent 37
Sequential Prophet-6 Module
KORG Kaoss Pad KP3
Farfisa Professional 222(オルガン)
マイク
Sennheiser e935(ライブ用ダイナミックマイク)
TELEFUNKEN ELA M 251E(レコーディング用)
NEUMANN U87ai(レコーディング用)
Logicool G Blue Yeti X(USBマイク)
JZ Microphones Pop Filter / STEDMAN PROSCREEN 100(ポップガード)
ヘッドフォン
Apple AirPods Max
Bowers & Wilkins P5
ULTRASONE edition8
Bose Frames Alto(オーディオサングラス)
DTM・録音機材・DJ機器
Apple iMac Pro / MacBook Pro
IK Multimedia iRig Keys PRO Universal(MIDIキーボード)
Avalon Design V5(プリアンプ)
Lynx Studio Technology HILO TB3 / Aurora 8(オーディオインターフェース)
SPL MixDream(ミキサー)
Retro Instruments Retro 176(コンプレッサー)
NEVE 33609/C(コンプレッサー)
Urei 1176 / 1176LN(コンプレッサー)
Pioneer DJ DJM-800(DJミキサー)
コメント