① 始めに(特徴紹介)
現代のプログレッシブ・メタル、いわゆる「Djent(ジェント)」シーンにおいて、最も象徴的かつテクニカルなギタリストの一人が、Periphery(ペリフェリー)のMark Holcomb(マーク・ホルコム)です。彼のサウンドの最大の特徴は、唸るような低音の重厚さと、それとは対照的なクリスタルのように澄んだクリーン・トーンの共存にあります。
マークのプレイスタイルは、複雑なコードヴォイシング、高速なオルタネイト・ピッキング、そして何よりも「音の分離感」を極限まで追求したリフワークが中心です。Peripheryはトリプルギター編成という特異な形態をとっていますが、その中でもマークはダークでメランコリックなメロディと、パーカッシブなミュート奏法を組み合わせた「独自の質感」をバンドに提供しています。彼の音作りが注目される理由は、多弦ギターやドロップチューニング特有の「音の濁り」を徹底的に排除し、超高速フレーズでも一音一音がハッキリと聴き取れる明瞭さを実現している点にあります。
代表曲「Scarlet」や「Marigold」で見られるような、タッピングと開放弦を織り交ぜた複雑なフレーズを再現するには、単に歪ませるだけでなく、ピックアップの出力特性、ピッキングの強弱、そしてノイズゲートのコントロールが不可欠です。この記事では、マーク・ホルコム本人が愛用する機材から、彼のような鋭いサウンドを手に入れるためのセッティングまで、徹底的に解説していきます。
②使用アンプ一覧と特徴【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコムのサウンドの核となるのは、レスポンスが極めて速く、タイトなローエンドを持つハイゲインアンプです。彼は古くからPeavey 6505+を愛用しており、これはモダンメタルのスタンダードとも言える選択です。6505シリーズ特有の、中低域が塊となって飛んでくるような質感が、Peripheryのヘヴィなリフの土台を支えています。
一方で、近年彼が深く関わっているのがPRSのアンプです。特にシグネチャーモデルに近い位置付けの「Archon」は、彼のクリーントーンからハイゲインまでをカバーする重要な機材です。Archonは、歪ませてもコードの分離が失われず、マークが得意とする複雑なテンションコードを多用するリフでも、全ての弦の音がクリアに響くという特性を持っています。また、自宅練習や小規模なレコーディングでは、Mark TremontiモデルであるMT 15も使用されています。これは小型ながら6L6パワー管を搭載しており、大型スタックアンプに引けを取らないパンチ力を提供します。
ライブの現場においては、AXE-FXやKemperなどのデジタル・モデリング・デバイスを使用することも多いですが、その中身(プロファイリングの元ネタ)として、これら実機のアンプサウンドがベースになっています。マークは「真空管アンプのフィール」を非常に重視しており、デジタル環境下でもいかにアンプらしいダイナミクスを残すかにこだわっています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 6505+ | Peavey | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 初期から使用されているハイゲインの定番。タイトなリフ作りに必須。 |
| Archon | PRS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 高い分離感と美しいクリーンを併せ持つ、マークの主要アンプの一つ。 |
| MT 15 | PRS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | マーク・トレモンティモデルだが、マーク・ホルコムも自宅等で愛用。 |
これら実機アンプの使用は、主にレコーディングや特定のライブイベント、ビデオコンテンツ等で確認されており、現在の彼のサウンドキャラクターを決定づけていると想定されます。
③使用ギターの種類と特徴【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコムのギターと言えば、まず真っ先に挙げられるのがPRS(Paul Reed Smith)のシグネチャーモデルです。彼は長年PRSを愛用しており、自身のシグネチャーモデルをSEシリーズ(廉価版)とUSA Coreシリーズの両方からリリースしています。特筆すべきは、SEシリーズであっても彼自身のこだわりが100%反映されている点です。
彼のメインギターである「PRS SE Mark Holcomb」は、一般的なPRSよりも長い25.5インチスケールを採用しています。これにより、ドロップCやそれ以下のダウンチューニングでも弦のテンションを保ち、低音域の明瞭さを維持しています。さらに、指板にはエボニー、ネック裏はサテンフィニッシュという、滑らかな演奏性を追求した仕様になっています。ピックアップにはSeymour Duncan製の自身のモデル(Alpha & Omega、および最新のScarlet & Scourge)が搭載されており、これが「Djent」特有のコンプレッション感とダイナミクスを両立させています。
また、彼はPRS以外にもモダンなハイエンドギターを多数使用してきました。Mayones Regiusは、その剛性の高いネック構造からくる驚異的な音の立ち上がりの速さで、Peripheryの初期〜中期のテクニカルなリフを支えました。さらに、木材を一切使用しないAristides 070も、環境変化に強くデッドポイントのない完璧なサスティーンを求めて導入されています。これらのギターに共通するのは、「ピッキングに対するレスポンスが極めて速いこと」と「多弦・低音での解像度が非常に高いこと」です。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SE Mark Holcomb | PRS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドギター | 25.5インチスケール採用のメイン機。PUはScarlet & Scourge搭載。 |
| Mark Holcomb Limited Edition (LE) | PRS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドギター | SEモデルのベースとなったUSA製。より押し出しの強い低域が特徴。 |
| Regius | MAYONES | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドギター | スルーネック構造による圧倒的なレスポンス。初期〜中期で多用。 |
| 070 | Aristides | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドギター | 非木材素材「アリウム」による、均一な鳴りとサスティーン。 |
| Custom 24 | PRS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッドギター | PRSの王道モデル。レコーディング等でバランスの良いトーンとして重宝。 |
マークのギター選びは、テクニカルなプレイを妨げない薄いネックシェイプと、ドロップチューニング時のピッチの安定性が最優先されています。これらはいずれもプロフェッショナルな現場での信頼性が高く、彼のシグネチャーサウンドを構成する重要な要素であると想定されます。
④使用エフェクターとボード構成【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコムのエフェクターボードは、極めて機能的かつ現代的です。彼の歪みサウンドの秘密は、アンプの歪みを「整える」ためのオーバードライブにあります。特に彼が中心となって開発されたHorizon Devicesの「Precision Drive」は、Djentサウンドを作る上で欠かせない存在です。このペダルには強力なノイズゲートが内蔵されており、高速なミュートリフの合間に発生する余計なノイズを完全にシャットアウトします。また、アタックの鋭さを調整する「Attack」ノブが、彼のトレードマークであるパーカッシブなトーンを支えています。
また、Seymour Duncanの「805 Overdrive」も愛用されています。これはTS系のサウンドをベースに3バンドEQを搭載したもので、アンプの特性に合わせて細かくミッドの出方を調整するために使用されます。ブースターとしては、同じくDuncanの「Pickup Booster」を使用し、ソロ時やより厚みが必要なセクションでゲインを稼いでいます。
空間系においては、彼のシグネチャー・ディレイ/リバーブである「Dark Sun」が中心です。Peripheryの楽曲で頻繁に登場する、浮遊感のあるアンビエントなパートは、このペダルによって作られています。ダークで暖かみのあるディレイ音と、深く広がるリバーブが混ざり合い、複雑なアルペジオに幻想的な奥行きを与えます。一方で、意外なところではBOSSのMT-2 Metal Zoneもボードに含まれていた時期があります。これはメインの歪みとしてではなく、特定の極端なトーンや、特定の帯域を強調するためのフィルター的な役割、あるいは遊び心のあるエフェクトとして機能しています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Pickup Booster | Seymour Duncan | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ブースター | サウンドに厚みを加え、ソロやリードで存在感を出すために使用。 |
| 805 Overdrive | Seymour Duncan | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | 3バンドEQ搭載で、アンプの歪みを補正・強化する。 |
| MT-2 Metal Zone | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディストーション | 定番メタルペダル。特定のツアーや実験的なサウンドで使用。 |
| Precision Drive | Horizon Devices | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | Djentサウンドの核。内蔵ノイズゲートとAttackノブが重要。 | |
| Dark Sun | Seymour Duncan | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | 自身のシグネチャー空間系。リバーブ一体型で幻想的なトーンを作る。 |
マークのボード構成は、単に歪ませるだけでなく、その「質」をコントロールし、余計なものを削ぎ落とすという現代的なアプローチが反映されていると想定されます。
⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコム風のサウンドを再現するために最も重要なのは、歪みの量(Gain)を上げすぎないことです。Peripheryのような超ハイゲインに聞こえるサウンドでも、実はアンプ自体のゲインは控えめで、その分ピックアップの出力とピッキングの強さで歪み感を稼いでいます。これにより、複雑なコードを弾いた際にも音が潰れず、各弦の明瞭度を保つことができます。
EQの設定に関しては、中域(Middle)を安易に削らない(ドンシャリにしない)ことが鉄則です。Djentサウンドにおいて、リフの「粘り」や「パンチ」は中域に宿ります。マークのセッティングでは、Lowはタイトに絞り、Highはプレゼンス(超高域)でエッジを立たせる一方、Midはしっかりと出すことで、アンサンブルの中で埋もれない芯のある音を作っています。具体的には、アンプのLowを4〜5、Midを6〜7、Highを6、Presenceを7程度にするのが一つの目安です。
さらに重要なのが、オーバードライブ(特にPrecision Drive)による「プレ・プロセッシング」です。アンプに入力される前の信号の低域をカットし、中高域を強調することで、低音がボヤけるのを防ぎます。これにより、ドロップチューニングで太くなった弦の信号が、アンプ内でタイトに変換されます。また、ノイズゲートの設定は非常にタイトに行います。弦を離した瞬間に無音になるように設定することで、Periphery特有の「マシンガン・リフ」のようなキレが生まれます。
レコーディングやミックスにおいては、ギターは通常2〜4トラック重ねられます。この際、全てのトラックを同じ設定にするのではなく、わずかにトーンの違うアンプ(例えばArchonと6505+)を組み合わせることで、ワイドで壁のような厚みを作りつつ、輪郭を失わないサウンドを構築しています。また、100Hz以下の不要な低域はエンジニアリングの段階でカットされ、ベースとキックドラムのスペースを空ける工夫がなされています。マークのサウンドは単体で聴くと少しハイ上がりに聞こえることもありますが、バンド全体で鳴らした時に初めて「完璧な重低音」として完成するように設計されていると想定されます。
⑥比較的安価に音を近づける機材【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコムの本格的な機材を揃えるのは非常に高価ですが、最近のマルチエフェクターや手頃なペダルを組み合わせることで、かなり近い質感を得ることが可能です。特に「Djent」に必要な要素は「タイトな歪み」と「強力なノイズゲート」の2点に集約されるため、これらを意識した機材選びが鍵となります。
まず、ギターについては「PRS SE Mark Holcomb」自体が非常にコストパフォーマンスに優れています。これは廉価版とはいえ本人もステージで使用するクオリティであり、シグネチャーピックアップが最初から載っているため、最も近道な選択肢です。これに代わるものとしては、25.5インチ以上のロングスケールを持つアイバニーズのRGシリーズなども候補に挙がります。
エフェクターで再現する場合、BOSSの「GT-1」や「ME-90」などのマルチエフェクターは非常に優秀です。これらの内蔵アンプモデルにある「5150ドライブ(Peavey 6505の元ネタ)」を使用し、その前に「T-Scream(オーバードライブ)」を配置。オーバードライブのDriveを0、Levelを最大、Toneを上げ気味に設定することで、マークの歪みの質感をシミュレートできます。また、BOSSのノイズサプレッサー設定を極端に強くすることで、あのタイトなキレを再現可能です。
また、ペダルボードを組むなら、Horizon Devicesの代用として「Joyo Rigel Preamp」や「Darkglass」系の歪みも検討の価値があります。これらはモダンメタルに特化したEQ特性を持っており、低価格ながらもエッジの効いたサウンドを作ることができます。また、空間系については、安価なリバーブでも「Shimmer」や「Hall」モードが搭載されているものを選び、ディレイと薄く重ねることで、彼の幻想的なクリーン・パートを模倣することができると想定されます。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| マルチエフェクター | GT-1 | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ハイゲインアンプとゲートの組み合わせが優秀。初心者にも最適。 |
| オーバードライブ | SD-1 Super OverDrive | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 安価だが、ブースターとして使うことでマークに近いタイトさを出せる。 |
⑦総括まとめ【Periphery・Mark Holcomb】
マーク・ホルコムのサウンドの本質は、一言で言えば「計算し尽くされた冷徹さと、情熱的なダイナミクスの同居」にあります。彼の音作りは、単に激しく歪ませるという旧来のメタルアプローチとは一線を画しており、むしろ「いかに余計な音を鳴らさないか」「いかに全帯域の音を整理するか」という、非常に理知的な引き算の美学に基づいています。
彼のようなサウンドを目指す読者の皆さんに最も伝えたいのは、機材を揃えることと同じくらい、「ピッキングの正確さと強弱」に意識を向けることの大切さです。マークのサウンドがあれほどまでに鮮明なのは、彼のピッキングが驚異的に正確であり、一打一打が楽器の最も美味しい帯域を叩き出しているからです。どんなに高級なPRSやPrecision Driveを使っても、ピッキングがルーズであれば、あの鋭い「Djent」の質感は生まれません。
再現するために必要な視点は、まず「低域のタイトさ」を最優先し、次に「中域の押し出し」を確保すること。そして最後に、空間系エフェクトで自分なりの「色」を添えることです。マーク・ホルコムの音作りを紐解くことは、現代のギターシーンにおける「ハイゲインの最適解」を学ぶことと同義です。この記事で紹介した機材やセッティングをヒントに、ぜひあなた自身のプレイスタイルに合わせた、最高のモダン・メタル・トーンを追求してみてください。彼の音は、挑戦しがいのある、一つの完成された芸術なのです。

