【Kim Thayil(キム・サイル)・Soundgarden(サウンドガーデン)】風サウンドの作り方+ギター機材音作りセッティングのまとめ【エフェクター・アンプ】

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① 始めに(特徴紹介)

90年代グランジ・ムーブメントの先駆者であり、シアトル・サウンドの重鎮として君臨するSoundgarden(サウンドガーデン)。そのサウンドの中核を担うのが、唯一無二のギタリスト、キム・サイル(Kim Thayil)です。彼の奏でる音は、パンクの衝動とメタル的な重厚感、そしてサイケデリックな浮遊感が混ざり合った、非常に独創的なものです。

キム・サイルのプレイスタイルを語る上で欠かせないのが、フィードバック奏法と変則チューニング、そして不穏な響きを持つ不協和音の活用です。一般的なブルーススケールに留まらない、不規則でダークな旋律は「グランジ界のリードギター・アンチヒーロー」とも評され、Black Sabbathを彷彿とさせるドゥーミーなリフから、Sonic Youthのようなノイズまでを自在に操ります。

代表曲「Black Hole Sun」での揺らめくようなアルペジオや、「Spoonman」でのアグレッシブなリフ、さらには「Jesus Christ Pose」での高速フィードバックなど、彼の音作りは単なる「歪み」の枠を超え、楽曲の空気感を支配する「音の壁」を作り上げます。なぜ彼の音がこれほどまでにフォロワーを惹きつけるのか、その秘密は使用機材と独特のチューニング理論、そして「不完全さ」を美学とする姿勢にあります。

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② 使用アンプ一覧と特徴【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルのアンプ選びは、時期によって大きな変化を見せますが、一貫しているのは「低音の粘りと中高域のエッジ」です。キャリア初期のSoundgardenサウンドを象徴するのは、意外にも当時安価な部類だったPeavey VTM 120でした。このアンプはJCM800をベースにしながらも、ディップスイッチによる多様な音作りが可能で、初期の荒々しいハイゲイン・サウンドの核となりました。

90年代中盤の全盛期から再結成以降にかけては、Mesa/Boogieがメインとなります。特にDual RectifierやTremoverbは、彼の求める「重厚な壁」を構築するのに不可欠な機材でした。しかし、単に歪ませるだけでなく、Music Manのソリッドステート・プリアンプを搭載したヘッドやFender系のコンボアンプをミックスすることで、歪みの中に芯のあるクリーンな成分を混入させ、独特の解像度を保っています。

ライブでは、複数のMesa/Boogieヘッドを4×12キャビネットで鳴らし、圧倒的な音圧を確保しています。一方で、レコーディングではVibro-KingやSuper ReverbなどのFenderアンプを使用し、あのクリスタルかつダークなクリーン・トーンを丁寧に作り込んでいるのが特徴です。ハイゲインなモダンアンプと、伝統的なビンテージアンプの組み合わせこそが、彼のサウンドの厚みの正体と言えるでしょう。

機材名 メーカー Amazon 楽天 Yahoo! メルカリ 石橋楽器 サウンドハウス 備考
Dual Rectifier Mesa/Boogie 検索 検索 検索 検索 検索 検索 再結成後も含め、ライブサウンドの核となるメイン・ハイゲインヘッド。
VTM 120 Peavey 検索 検索 検索 検索 検索 検索 『Badmotorfinger』期の主力。荒々しくダークなハイゲインが特徴。
Electra Dyne Mesa/Boogie 検索 検索 検索 検索 検索 検索 クラシックなブリティッシュトーンを補完するために導入されたモデル。
Tremoverb Mesa/Boogie 検索 検索 検索 検索 検索 検索 90年代のツアーで多用されたコンボアンプ。重厚な歪みが得られる。
HD130 Music Man 検索 検索 検索 検索 検索 検索 クリーン〜クランチの透明感を確保するためにライブでも併用される。

上記のアンプ群を組み合わせ、ウェットな歪みとドライなアタックを両立させていると想定されます。

③ 使用ギターの種類と特徴【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルのアイデンティティそのものと言えるのが、ギルド(Guild)のS-100 Polaraです。SGシェイプに似ていますが、よりオフセットされたボディと独自のピックアップ特性を持つこのギターを、彼はデビュー前から現在に至るまでメインとして愛用し続けています。本人曰く「弦のテンション感やピックアップの出力が自分のスタイルに完璧にフィットしている」とのことで、70年代のヴィンテージ個体から、近年発売された自身のシグネチャーモデルまで、数多くのS-100がステージに並びます。

S-100以外のギター選びも非常に個性的です。Gibson FirebirdやLes Paul Custom Lite(通常のレスポールよりボディが薄いモデル)など、少しひねりのあるモデルを好みます。特に「Black Hole Sun」などのレコーディングで使用されたGibson Trini Lopez(ES-335に近いセミアコ構造にノンリバース・ヘッド)は、彼のサイケデリックな側面を象徴する機材です。セミアコ構造ゆえのフィードバックの制御のしやすさが、彼の奏法にマッチしていると考えられます。

また、ドロップDチューニングや、Soundgarden特有の「C-G-C-G-G-E」といった変則チューニングを多用するため、それぞれのチューニングに合わせてギターを持ち替えます。Fender TelecasterやJazzmasterは特定の楽曲でエッジの効いたサウンドが必要な際に導入され、Gretsch Duo Jetはより深みのある箱鳴り感が必要な場面で登場します。彼のギター選びは、特定のブランドへのこだわり以上に「その楽曲の不穏な響きを最も表現できるのはどれか」という視点で選ばれているのが分かります。

機材名 メーカー Amazon 楽天 Yahoo! メルカリ 石橋楽器 サウンドハウス ギターの種類 備考
S-100 Polara Guild 検索 検索 検索 検索 検索 検索 ソリッド(SGシェイプ) 不動のメインギター。ピックアップ背後の弦を弾くノイズ奏法にも使用。
Firebird Gibson 検索 検索 検索 検索 検索 検索 ソリッド 独特のタイトな低域と中高域のキレを活かしてライブや録音で使用。
Trini Lopez ES-335 Gibson 検索 検索 検索 検索 検索 検索 セミアコースティック 「Black Hole Sun」のビデオや録音で見られる象徴的な一本。

これらのギターを使い分け、Soundgardenの多層的なギターアンサンブルが構築されていると想定されます。

④ 使用エフェクターとボード構成【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルのエフェクターボードは、グランジ・ギタリストの中でも比較的充実しており、音の「壁」を作るための歪みと、サイケデリックな「揺れ」を作るためのモジュレーション系がバランスよく配置されています。彼の歪みの根幹を支えるのは、Electro-HarmonixのBig Muff Piです。ソロパートや、地を這うようなヘヴィなリフが必要な際、このファズが爆発的な音圧を生み出します。さらに、DOD FX10 Bi-Fet Preampを「常にON」の状態に近い形で使用しており、アンプをプッシュしつつ音に艶と粘りを与えています。

空間系においては、コーラスとフェイザーが重要な役割を果たしています。Boss CE-2やMXRのコーラス系は、クリントーンに特有の不穏な揺らぎを与え、サウンドに奥行きをもたらします。また、Dunlop RotovibeやHughes & KettnerのTube Rotosphereによるロータリースピーカー効果は、彼のリードプレイにおける「うねり」を演出するのに欠かせないツールです。再結成後のシステムでは、Providence PEC-2スイッチャーを導入し、複雑なペダル管理を正確に行っている点も、彼が単なるノイズギタリストではなく、音作りに対して非常に緻密であることを示しています。

機材名 メーカー Amazon 楽天 Yahoo! メルカリ 石橋楽器 サウンドハウス エフェクターの種類 備考
Big Muff Pi Electro-Harmonix 検索 検索 検索 検索 検索 検索 ファズ 圧倒的な音圧を誇る歪み。壁のようなサウンドに必須。
FX10 Bi-Fet Preamp DOD 検索 検索 検索 検索 検索 検索 ブースター 音の密度を高める隠し味。常にONに近い状態で使用。
Rotovibe Dunlop 検索 検索 検索 検索 検索 モジュレーション系 リード時の揺らぎを演出。サイケデリックな効果を生む。

これらの多彩なペダルが、彼の変則的なリフと複雑に絡み合い、Soundgardenサウンドの骨格を成すと想定されます。

⑤ 音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルの音作りにおける最大のポイントは、中域(ミドル)の扱いにあります。多くのメタルギタリストがドンシャリ(低音と高音を強調し、中音を削る)設定にする中、彼は中域をしっかり残し、むしろ押し出すことで、ギターの存在感を浮き彫りにさせます。これにより、ドロップチューニングで低くなった弦の振動に、音楽的な粘り強さが加わります。

具体的なEQ設定の傾向としては、Bassは6〜7程度と重厚にしつつも、Middleを5〜7付近に保ち、Trebleはキンキンしすぎない4〜5程度に抑えるのが彼の基本です。これにより、ギターの「太さ」を損なわずに、他の楽器(特にクリス・コーネルの力強いボーカルやベン・シェパードの重いベース)と共存させています。また、アンプのゲインは「限界まで歪ませる」のではなく、ピッキングの強弱でクリーンに戻る程度の余力を残したハイゲインに設定されています。これが、あの「ザラついた質感」を生む秘訣です。

曲ごとの使い分けも見事です。「Black Hole Sun」のような浮遊感のある曲では、コーラスとディレイを深めにかけ、アンプのクリーン・チャンネルを使用しつつも、ピッキングのニュアンスでわずかに歪ませる「エッジのあるクリーン」を意識しています。一方、「Spoonman」のようなリフ主体の曲では、Mesa/Boogieのリードチャンネルを使い、中低域を飽和させています。さらに、レコーディングエンジニアの視点で見ると、彼のギターはダブルトラッキング(同じパートを2回弾いて左右に振る)が多用されますが、左右でわずかにトーンを変えたり、異なるアンプを使用したりすることで、ステレオ空間における「音の壁」を巨大に見せています。

また、彼のシグネチャーとも言える「フィードバック」は、アンプのボリュームを上げるだけでなく、ギターのピックアップのハウリング特性を熟知し、弦をブリッジやヘッド付近で叩くことで、音程感のあるノイズとして制御しています。これはミックス段階でも「効果音」として重要な役割を果たし、楽曲の緊張感を高めています。これらはすべて、彼の緻密な計算と感覚の融合によって成り立っていると想定されます。

⑥ 比較的安価に音を近づける機材【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルの「重厚かつ揺らぎのあるサウンド」を低予算で再現するためには、まず「ハイゲイン・アンプのシミュレーター」と「分厚いファズ」を用意するのが近道です。Mesa/Boogieの音圧をコンパクトで再現する場合、BOSSのデジタル技術を活かしたペダルや、マルチエフェクターのモデリング機能が非常に有効です。

特にBOSSの「ST-2 Digital Distortion」は、スタックアンプの箱鳴り感を安価に再現できるため、キム・サイル的な重低音を出すのに適しています。また、ファズは本家Electro-Harmonixの「Little Big Muff」や「Nano Big Muff」を選べば、1万円前後で「あの壁のような歪み」が手に入ります。モジュレーション系については、BOSSの「CH-1 Super Chorus」が、彼の不穏なクリーントーンを再現するのに最適です。

種類 機材名 メーカー Amazon 楽天 Yahoo! メルカリ 石橋楽器 サウンドハウス 備考
ディストーション ST-2 Power Stack BOSS 検索 検索 検索 検索 検索 検索 Mesa/Boogieのようなスタックアンプの音圧をシミュレート可能。
ファズ Nano Big Muff Pi Electro-Harmonix 検索 検索 検索 検索 検索 検索 本家譲りの分厚いサウンド。小型で安価ながら再現度は極めて高い。
コーラス CH-1 Super Chorus BOSS 検索 検索 検索 検索 検索 検索 「Black Hole Sun」的な冷たい揺らぎを作るためのド定番モデル。
マルチエフェクター GX-100 BOSS 検索 検索 検索 検索 検索 検索 Mesa系アンプから多彩な空間系、変則チューニング対応のピッチシフトまでこれ一台で完結。

⑦ 総括まとめ【Soundgarden・キム・サイル】

キム・サイルのサウンドの本質は、一言で言えば「カオスとコントロールの同居」です。彼の音は、一見すると荒々しく、制御不能なノイズのように聞こえるかもしれません。しかし、その裏側には、緻密な変則チューニングの選択、アンプの中域を活かしたトーン・シェイピング、そして楽曲のダイナミクスを理解したエフェクト捌きが隠されています。彼にとってギターは単にメロディを奏でる楽器ではなく、空間そのものを震わせ、感情を増幅させるための「デバイス」なのです。

彼のサウンドを再現するために最も必要な視点は、完璧にクリーンな音や、完璧に整った歪みを目指さないことです。多少のフィードバックや、弦が擦れるノイズ、そして変則チューニングが生む「不快ではない不協和音」を愛せるかどうかが分かれ道となります。Guild S-100のような、少しクセのある機材をあえて選び、それを自分の手で飼い慣らすプロセスこそが、キム・サイル流の音作りと言えるでしょう。

また、彼のプレイスタイルに近づくためには、技術的な練習だけでなく、聴く音楽の幅を広げることも重要です。サイケデリック・ロックの浮遊感、パンクの攻撃性、ヘヴィメタルの重厚感、そのすべてを自分のフィルターを通してアウトプットする姿勢こそが、Soundgardenという偉大なバンドの核を支えてきました。機材を揃えるだけでなく、その音を使って「どんな情景を描きたいか」を常に意識してみてください。そうすれば、自ずとあなたの指先からキム・サイル譲りのダークで美しい響きが生まれるはずです。

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