① 始めに(特徴紹介)
オルタナティブ・メタル、ニューメタルの先駆者として君臨するDeftones(デフトーンズ)。そのサウンドの核を担うのが、ギタリストのStephen Carpenter(ステファン・カーペンター)です。ステファンの鳴らすトーンは、地響きのような重低音と、それとは対照的な美しく浮遊感のある空間系サウンドが同居しているのが最大の特徴です。
キャリア初期の『Adrenaline』や『Around the Fur』では6弦ギターによるソリッドなリフが中心でしたが、名盤『White Pony』を経て、徐々に7弦、8弦、そして最新作『Ohms』では9弦ギターへとシフト。多弦ギターを駆使した唯一無二のヘヴィネスを追求し続けています。単なる「重い音」ではなく、メランコリックで叙情的な響きを内包する彼のスタイルは、世界中のギタリストに多大な影響を与えています。
彼がいかにしてその壁のようなディストーションと、霧の中にいるような幻想的なクリーンを使い分けているのか。その秘密は、膨大なラック機材と最新のデジタルプロセッサー、そして緻密に計算されたシグネチャーモデルに隠されています。本記事では、ステファン・カーペンターの要塞のような足元とアンプシステムを徹底解剖します。
②使用アンプ一覧と特徴【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファンのアンプ変遷は、ギターの多弦化に合わせてより「タイトな低域」を求める歴史でもあります。初期から中期にかけてはMarshallのJMP-1やADA MP-1といったラック式プリアンプを愛用し、鋭いハイミッドと歪みのキレを重視していました。特に『White Pony』期のサウンドにおいて、Riveraアンプがその音色の70〜80%を占めていたという事実は、彼のリッチなトーンを理解する上で重要です。
近年では、膨大なエフェクトと複雑なルーティングを制御するため、Fractal Audio SystemsのAxe-FxやKemperといったプロファイリング・アンプが中核を担っています。しかし、完全にデジタルに移行したわけではなく、ステージ上ではEnglやOrangeといったハイゲインアンプのパワー感も活用しています。特に最新ツアーではOrangeの「Ring Ring」と称されるセットアップやDual Darkを使用し、9弦ギターの超低域を潰さずに鳴らし切る工夫が見られます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| JCM800 Head (100W x2) | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 初期のメイン。2台使用で音圧を確保。 |
| JMP-1 Preamp | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 90年代〜2000年代の核。MIDI制御可能なラックプリ。 |
| ADA MP-1 Midi Preamp | ADA | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 初期のハイゲイントーンに不可欠な名機。 |
| Dual Dark | Orange | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 近年のヘヴィサウンドを支えるモダンハイゲイン。 |
| 1960B Cabinet | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | G12T-75搭載の定番キャビ。ボトムエンドの強さが特徴。 |
上記のように、Marshallの伝統的なパワーと、モダンなハイゲイン、デジタルによる緻密なトーン構築が組み合わされていると想定されます。
③使用ギターの種類と特徴【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファンのギター選びにおいて最も重要なキーワードは「バリトン・スケール」と「多弦化」です。彼は長年ESPのメインエンドーサーであり、その多くが27インチ以上のロングスケールを採用しています。これにより、極限まで下げられたダウンチューニングでも弦のテンションを維持し、明瞭なアタック感を得ることに成功しています。
初期の6弦期から、アルバム『White Pony』での7弦導入、そして『Diamond Eyes』以降の8弦への移行。彼のギターはDeftonesの音楽性がより重厚でプログレッシブになるにつれ、弦が増えていきました。ピックアップはEMGの印象が強いですが、近年では自身のシグネチャーFishman Fluenceを採用。さらにKieselのヘッドレスギターを導入するなど、常に最新のプレイアビリティを追求しています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ESP STEF B-8 | ESP | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 8弦ギター | メインシグネチャー。27インチバリトン仕様。 |
| ESP STEF-T7B | ESP | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 7弦ギター | テレキャスターシェイプの7弦。『Gore』で使用。 |
| Kiesel Vader (7/8弦) | Kiesel | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ヘッドレス | Fishman Fluence搭載のヘッドレス。近年愛用。 |
| ESP Horizon Custom | ESP | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 6弦ギター | 「Back to School」MV登場。歴史的価値が高い。 |
これらの多弦・バリトンギターが、ステファンの重厚なリフの土台となっていると想定されます。
④使用エフェクターとボード構成【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファンのエフェクターボードは、まさに「音の要塞」です。彼のサウンドの半分はディストーション、もう半分は空間系で構成されていると言っても過言ではありません。特にZ-VEXのLo-Fi LoopやSeek Wah、Ringtoneといった変態的なモジュレーション・フィルター系を好み、曲のイントロやブリッジで印象的なテクスチャを作り出します。
また、ピッチシフトの効果も多用しており、Digitech WhammyやBossのピッチシフター、さらにはEventideのPitchFactorを駆使して、ギターの本来の音域を超えたサウンドをレイヤーします。ディレイとリバーブに関しては、Boss RV-3のようなデジタルで透明感のあるものから、MXR Carbon Copyのようなアナログの温かみがあるものまでを併用。これらをFractal Audio SystemsやRocktronのスイッチャーで一括管理し、瞬時にプリセットを切り替えています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Axe-Fx II | Fractal Audio | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | マルチエフェクター | ライブ/レコーディングの中核。全ての音作りの土台。 |
| RV-3 Digital Reverb/Delay | Boss | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | リバーブ | Deftonesらしい空間系サウンドに必須の名機。 |
| Whammy | Digitech | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ピッチシフター | 独特のピッチ上昇や不気味な揺れに使用。 |
| FZ-2 Hyper Fuzz | Boss | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ファズ | 凶悪な歪みを加える際に使用される。 |
多種多様なペダルをMIDIスイッチャーで緻密に制御し、楽曲ごとに最適なテクスチャを構築していると想定されます。
⑤音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファンの音作りで最も驚くべき点は、その「低域の処理」です。8弦や9弦ギターを使用する場合、通常のギターアンプの設定では低音が飽和してしまい、ベースの音域を侵食してしまいます。彼はEQセッティングにおいて、Lowを上げすぎず、むしろ200Hz〜400Hzあたりの「濁り」の原因となる帯域をタイトにカットし、ギターの「芯」が出る800Hz〜1.5kHz付近を強調しています。
アンプのゲイン設定についても、一見フルゲインのように聞こえますが、実はピッキングのニュアンスが出る程度に抑えられています。その分、ダブリング(同じフレーズを2回録音して左右に振る)や、複数のアンプ(例:MarshallとRivera)のブレンドによって壁のような厚みを作っています。クリーンサウンドでは、コーラスとリバーブを深くかけ、さらにハイパスフィルターで低域を削ることで、ボーカルのChino Morenoの歌声を邪魔しない「浮遊するトーン」を作り出します。
ミックス面では、ドラムのキックとギターの低域がぶつからないよう、エンジニアと協力してサイドチェイン的な処理や、緻密な帯域分割を行っています。ライブではAxe-FxからPAへダイレクトに送るライン音と、ステージ上のキャビネットから鳴る生音を混ぜることで、解像度と迫力を両立させています。ステファンの音作りは、単体で格好良い音を目指すのではなく、「バンドアンサンブルの中で最も巨大に聞こえる隙間」を見つける作業であると言えるでしょう。
このように、多弦ギターの特性を理解した高度なEQマネジメントと、デジタル・アナログのハイブリッドなシステム運用が行われていると想定されます。
⑥比較的安価に音を近づける機材【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファンのような重厚かつ幻想的なサウンドを低予算で再現するには、ハイゲインなディストーションと、多機能な空間系を揃える必要があります。特に重要なのは「多弦に対応できるタイトさ」です。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| マルチ | GT-1 | Boss | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | RV-3直系の空間系と強力な歪みを内蔵。これ1台で基礎が作れる。 |
| 歪み | Metal Core ML-2 | Boss | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 低域が潰れないモダンハイゲイン。多弦ギターとの相性抜群。 |
| 空間系 | MS-70CDR | Zoom | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | コーラス、ディレイ、リバーブを最大6つ同時使用可。空間系の要。 |
まず、BossのGT-1やPocket GTのようなマルチエフェクターは非常に優秀です。ここにはステファンが愛用するRV-3に近いアルゴリズムのリバーブ/ディレイや、Marshall、Mesa Boogie系のモデリングが搭載されており、手軽に「それっぽい音」を作れます。特に「Acoustic Simulator」や「Tera Echo」的なエフェクトをクリーンに混ぜることで、Deftones特有のアンビエント感を演出できます。
単体ペダルで攻めるなら、Boss ML-2 Metal Coreがおすすめです。このペダルは「メタル」という名前ですが、低域のレスポンスが非常に速く、多弦ギターの重低音をタイトに歪ませるのに適しています。ここにZoom MS-70CDRを組み合わせれば、複数のコーラスやディレイを重ねた幻想的なクリーンサウンドもカバー可能です。予算を10万円以下に抑えつつ、ステファンの多角的なトーンに近づく最適な組み合わせと言えるでしょう。
⑦総括まとめ【Deftones・Stephen Carpenter】
ステファン・カーペンターの音作りの本質は、「破壊的なヘヴィネス」と「夢心地のアンビエンス」の究極的なコントラストにあります。彼が7弦、8弦、そして9弦へと手を伸ばし続けたのは、単に低い音を出したかったからではありません。より広い音域を手に入れることで、楽曲に深みと色彩を与えるためです。彼の機材選びには常にその「目的」が一貫しています。
彼の音を再現するために最も必要な視点は、実は「引き算」です。あまりにも巨大な壁のような歪みを作ろうとしてゲインやLowを上げすぎると、音はボヤけ、Deftonesらしいキレが失われます。ステファンのように、タイトな歪みを作り、そこに空間系で奥行きを与える。この2段階のプロセスを意識することが、彼のようなサウンドへの近道です。
この記事で紹介した膨大なラック機材やエフェクターたちは、彼が30年以上のキャリアで見つけ出した「自分を表現するための道具」です。まずは手近なマルチエフェクターからでも構いません。彼の奏でる重厚なリフと美しい旋律の裏側にある「ロジック」を感じながら、あなただけのヘヴィサウンドを探求してみてください。その先には、きっと新しいギターの可能性が広がっているはずです。

