① 始めに(特徴紹介)
「Mr. 335」の愛称で世界中のギタリストから敬愛されるラリー・カールトン(Larry Carlton)。彼が1990年代初頭、ロベン・フォードの後任としてフュージョン界のスーパーグループ「Yellowjackets(イエロージャケッツ)」に加入した際のサウンドは、彼のキャリアの中でも非常に興味深い変遷を見せています。
イエロージャケッツ時代のラリーの音作りは、それまでの代名詞だった甘く太いES-335のトーンに加え、よりタイトでコンテンポラリーな質感を追求していました。特に『Greenhouse』や『Like a River』といったアルバムでは、非常に繊細なピッキングニュアンスと、Dumbleアンプによる濃密なミッドレンジ、そしてラックシステムによる透明感のある空間系が融合した「究極のフュージョントーン」を聴くことができます。
彼のプレイの特徴は、なんといってもジャズの語法をベースにしながらも、ブルースのパッションを忘れないチョーキングやビブラートにあります。イエロージャケッツの高度なアンサンブルの中でも埋もれることなく、かつ主張しすぎない絶妙なトーンバランスは、現代のギタリストにとっても最高の教科書と言えるでしょう。
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② 使用アンプ一覧と特徴【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトンのサウンドを象徴する最大の要素は、伝説的なアンプ「Dumble Overdrive Special」です。80年代のソロ活動からイエロージャケッツ時代にかけて、彼のサウンドの核はこのアンプによって形成されました。Dumbleアンプは、指先の僅かなタッチの変化に即座に反応し、クリーンからドライブまでをギターのボリュームひとつでコントロールできる圧倒的なレスポンスを誇ります。
イエロージャケッツのようなダイナミクスが激しいバンドにおいて、ラリーはアンプのドライブチャンネルをベースにしつつ、ピッキングの強弱で音の歪み具合を調整していました。また、スピーカーキャビネットにはCelestion G12-65を搭載した2×12インチのものを愛用。このスピーカーが、耳に痛くない滑らかな高域と豊かな中域を生み出す鍵となっています。
また、スタジオワークや特定のプロジェクトでは、Fender系のヴィンテージアンプも併用。Super ReverbやVibrolux Reverbなどは、彼のクリーンサウンドの透明感を支える重要な要素です。Dumbleの回路自体がFender Bassmanなどのツイードアンプをルーツとしているため、ラリーの音の根底には常に「良質なFenderトーン」が存在していると言えます。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Dumble Overdrive Special | Dumble | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 80年代以降のメイン。極上のミッドレンジとレスポンス。 |
| Fender Bassman | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | Dumbleの原点。太くブルージーな低域が特徴。 |
| Fender Super Reverb | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 1963-68年製。クリスタル・クリーンと粘りのある音が魅力。 |
| Marshall JTM45 | Marshall | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 初期マーシャル。ブルースロック的な太い歪みが得られる。 |
上記機材は、ライブやレコーディングの記録に基づいた主要なラインナップであると想定されます。
③ 使用ギターの種類と特徴【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトン=Gibson ES-335というイメージは非常に強力ですが、イエロージャケッツ時代を含む90年代の彼は、驚くほど多様なギターを手にしています。特に注目すべきは、80年代中盤から90年代初頭にかけてメイン機の一つとして君臨した「Fender Esprit」です。このモデルは、ストラトでもテレキャスでもない、FenderがGibsonに対抗して作ったアーチトップのセミホロー構造を持っており、当時のラリーが求めていた「新しいフュージョントーン」を象徴する一本でした。
もちろん、1969年製の「Gibson ES-335」は彼にとっての聖域であり、イエロージャケッツのステージでもその甘くサステイン豊かなリードトーンを聴くことができます。また、90年代中盤にはサンフランシスコで出会った1960年製Fender Telecasterに心酔し、これが彼のプレイスタイルをよりブルージーな方向へと導くきっかけとなりました。このテレキャスターはフロントPUを巻き直し、ペグを交換するなど、実戦的な改造が施されています。
その他にも、極上のハコ鳴りを持つGibson Super 400や、取り回しの良いSG、ストラトキャスターなど、楽曲のカラーに合わせて機材を使い分ける職人的な側面が強く見られます。どのギターを使用しても「ラリー・カールトンの音」になるのは、指先のタッチとDumbleアンプの組み合わせが確立されているからに他なりません。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | ギターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Fender Esprit | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | セミホロー | 80年代〜90年代のメイン。Robben Fordモデルと同系。 |
| Gibson ES-335 | Gibson | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | セミアコ | 「Mr.335」の由来。1969年製が特に有名。 |
| 1960 Fender Telecaster | Fender | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ソリッド | 90年代に出会い、プレイスタイルに変化を与えた一本。 | |
| Gibson Super 400 | Gibson | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | フルアコ | 18インチの巨大ボディから出る豊かな低域。 |
上記以外にも、Sakashta NouPaulやBaker Guitars、1966 Epiphone Rivieraなど多岐にわたるギターを使用していたと想定されます。
④ 使用エフェクターとボード構成【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトンのエフェクターボードは、時代とともに進化を続けていますが、その根底にある思想は一貫しています。それは「アンプの素直な音を活かす」ことです。イエロージャケッツ時代から近年にかけて、彼のボードで最も重要な役割を果たしているのが「Hermida Audio Zendrive」です。このペダルはまさにDumbleアンプのトーンをシミュレートするために設計されており、ラリーはこれを踏むことで、どのようなアンプでも自分の「声」を出すことができます。
また、空間系エフェクトへのこだわりも非常に強く、古くはTC Electronic 2290といった最高峰のラックディレイを使用していました。現在はStrymon TimeLineやTC Electronic Hall of Fameなど、コンパクトかつ高性能なペダルに置き換わっていますが、その透明感のあるリバーブ・ディレイ設定は、イエロージャケッツの複雑なコード進行を濁らせることなく美しく彩ります。
ボリュームペダルの使い方も熟練の技が光ります。長年Ernie Ballを愛用していましたが、最近ではVertex Boostをエクスプレッションペダルで制御し、ボリュームペダルとして機能させるなど、音痩せを最小限に抑える工夫も見られます。ワウペダルについては、80年代からCryBabyを使用していますが、楽曲の必要性に応じて出し入れする柔軟なスタイルをとっています。
| 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | エフェクターの種類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Zendrive | Hermida Audio | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | オーバードライブ | ラリーの「歌う」トーンを作る必須ペダル。 |
| TimeLine | Strymon | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ディレイ | 2014年頃より導入された高機能ディレイ。 | |
| Hall of Fame Reverb | TC Electronic | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | リバーブ | 近年のボードにおける常用リバーブ。 | |
| Vertex Boost | Vertex | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | ブースター | ボリューム操作用としても活用される。 |
上記ペダルの他、Xotic EP BoosterやSeymour Duncan Palladiumなども用途に応じて併用されていると想定されます。
⑤ 音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトンの音作りにおいて最も重要なのは、歪みの「密度」と「ピッキング・レスポンス」の両立です。彼のDumbleアンプの設定は、一見するとかなり深く歪んでいるように聴こえるリード時でも、ギターのボリュームを「7」程度まで落とすと、鈴鳴りのような美しいクリーンが出るようにセットされています。
【具体的なEQ設定例】
アンプ側のセッティングとしては、ミッドレンジを強調しつつも、ハイエンドの「プレゼンス」成分を削りすぎないのが特徴です。ES-335のようなセミアコを使用する場合、低域が膨らみすぎるのを防ぐため、Bassは控えめ(4〜5程度)にし、Middleを7〜8まで上げることで、アンサンブルの中で抜ける「鼻にかかったような」甘いリードトーンを作ります。
【ミックスと空間処理】
イエロージャケッツのようなフュージョン編成では、キーボード(ラッセル・フェランテ)の広い音域とぶつからないように配慮されています。ラリーはディレイタイムを楽曲のテンポに正確に合わせるよりも、やや短めのスラップバック気味、あるいは深いリバーブによる「奥行き」を重視します。これにより、ギターが音像の少し後ろ側に定位しつつ、ソロになると一歩前に出てくるような立体感が生まれます。
また、PAエンジニアの視点から見ると、彼の音は中音域が非常に整理されているため、コンプレッサーを深くかけずとも安定した音圧が得られます。これは、彼自身の指先でのダイナミクス・コントロールが完璧であるため、過度な電気的処理を必要としないからです。録音時には、アンプのオンマイクに加えて、少し離れた位置でのルームマイクをミックスすることで、あの独特の空気感を再現していると想定されます。
⑥ 比較的安価に音を近づける機材【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトンの「Dumbleトーン」を再現するために、本物のDumbleアンプやヴィンテージの335を揃えるのは現実的ではありません。しかし、現代の優れたコンパクトエフェクターやコスパの高いギターを組み合わせることで、驚くほど近いニュアンスを出すことが可能です。
まず、歪みの核となるペダルには「Warm Audio Warmdrive」や「Rowin Dumbler」といったDumble系ペダルがおすすめです。これらは数千円から2万円程度で購入可能ながら、あの中域の粘りをしっかり再現してくれます。さらに、音に太さを加えるために「Xotic EP Booster」のクローン系ペダル(Mooer Pure Boostなど)を常時オンにしておくと、よりラリーらしい「リッチなクリーン〜クランチ」に近づきます。
ギターについては、Sire(サイアー)から発売されているラリー・カールトン・シグネチャーモデル「H7」が圧倒的におすすめです。ラリー本人が監修しており、セミアコ特有の鳴りと、彼が好むネックシェイプが見事に再現されています。10万円を切る価格帯ながら、そのクオリティはプロユースにも耐えうるものです。
| 種類 | 機材名 | メーカー | Amazon | 楽天 | Yahoo! | メルカリ | 石橋楽器 | サウンドハウス | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ギター | H7 | Sire | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 本人監修。驚異のコストパフォーマンスを誇るセミアコ。 |
| オーバードライブ | Warmdrive | Warm Audio | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | Zendriveを強く意識した回路。Dumble系トーンの近道。 |
| マルチエフェクター | GT-1 | BOSS | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | 検索 | アンプシミュレーター内の「Tweed」や「Combo」を活用。 |
⑦ 総括まとめ【Yellowjackets・Larry Carlton】
ラリー・カールトンのイエロージャケッツ時代から現代に至る音作りの本質は、「メロディを歌わせること」に尽きます。彼にとっての機材は、あくまで自分の感情を増幅するためのツールであり、主役は常にプレイヤーの指先にあります。
彼のサウンドを再現するために最も必要な視点は、完璧な機材を揃えることよりも、「いかに少ない音数で豊かな表情を付けるか」というダイナミクスの追求です。Dumbleアンプや335が作り出す濃密な中域は、単なる歪みではなく、人間の声に近い表現力をギターに与えるためのものです。
これから彼の音を目指す方は、まずはクリーントーンとドライブトーンの境界線をギターのボリューム操作で探ることから始めてみてください。エフェクターで歪みを作るのではなく、指先のタッチで歪みを「引き出す」感覚。それこそが、ラリー・カールトンという偉大なギタリストが長年私たちに示してくれている、音作りの真髄なのです。


