【Ayase】YOASOBI風サウンドの作り方＋機材音作りまとめ

始めに（特徴紹介）

Ayaseさんは、YOASOBIの楽曲を支えるコンポーザーとして、ボーカロイド・プロデューサー出身という背景を持ちながら、J-POPの最前線で活躍する存在です。彼の音楽は、緻密に設計されたデジタルアレンジメントと繊細なコード進行、エモーショナルなボーカルメロディが融合することで、唯一無二の世界観を生み出しています。

特にデビュー曲「夜に駆ける」は、限られた機材で制作されたにもかかわらず、サウンドは驚くほど洗練されており、Ayaseさんの「少ないリソースでも最大限の音楽を届ける力」を象徴する作品です。2019年当時の環境では、MacBook Pro 2010年モデルとLogic Pro X、オーディオインターフェースすら使用せず、PC直挿しのヘッドホンだけでミックスを仕上げていたという逸話は、多くのDTMユーザーに夢を与えました。

現在ではMOTUやAPOGEEといった高品質オーディオインターフェース、KOMPLETE KONTROLシリーズのMIDIキーボード、MASCHINE+、Ivory、Serum、初音ミクV4Xなど、プロフェッショナル環境が整備され、楽曲の完成度はさらに高まっています。サウンド面においては、ピアノやストリングス、EDM系のリード、細やかなドラム打ち込みなどを高次元で融合させる構成力が光ります。

また、ライブではシンセやパッドなどを駆使し、リアルタイムでの再現性を保ちつつ、原曲の緻密なニュアンスを維持したパフォーマンスが行われています。例えば「群青」では、NordやYAMAHA reface YCを使ったオルガンサウンドが印象的に響き、Ayaseさんの音世界がライブでも鮮やかに表現されます。

さらに、彼はSNSでも定期的に機材の紹介や制作風景を公開しており、音楽ファン・DTMユーザー・ボカロPなど幅広い層に支持されています。X（旧Twitter）の公式アカウントはこちらです：
▶ @Ayase_0404 – Ayase 公式Xアカウント

この記事では、Ayaseさんの音作りの根幹をなすPC環境、インターフェース、モニタリング、MIDI・プラグイン構成を詳細に紹介し、「YOASOBIサウンド」を再現したいクリエイターに向けて、その考え方と具体的な手法を解説していきます。

▶ YOASOBI の公式YouTube動画を検索

使用機材一覧と特徴【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんはギタリストというより、DAWベースで全ての楽曲を構築するコンポーザーであるため、従来の「ギターアンプ」を使用する機会はほとんどありません。その代わり、サウンドの“出口”として重要な役割を果たすのが、オーディオインターフェースやモニターシステムです。これらが実質的にアンプやモニターとしての役割を担っており、音の最終的な出力のクオリティを大きく左右します。

まず挙げられるのが、MOTU UltraLite mk5とAPOGEE Quartetという2機のオーディオインターフェースです。MOTUは定評のある音質と堅牢な設計で、レイテンシーが非常に少ないため、リアルタイムでのパフォーマンスや打ち込み時のストレスを大きく軽減します。一方、APOGEE Quartetは高級オーディオインターフェースの代名詞とも言える存在で、AD/DA変換のクオリティが非常に高く、ボーカルや楽器の微細なニュアンスまで正確に再現することができます。

このような高品位なオーディオインターフェースを“アンプの代替”として活用することで、Ayaseさんはミックス段階でも一切の妥協なくサウンド設計を行うことが可能になっています。特にYOASOBIの楽曲のように、ストリングスやEDM要素が混在する多層的な構成では、わずかな音の歪みや解像度の低さが全体のクオリティを損なうため、インターフェース選びは非常に重要なファクターとなります。

また、モニターとして使用しているスピーカーも実質的に“アンプの音色”に大きく影響を与える要素です。AyaseさんはreProducer Audio Epic 5というドイツ製のモニタースピーカーをメインに使用しており、解像度の高い音像とフラットな周波数特性で、正確なミックス作業を支えています。さらに、ゲームやインスピレーション重視の場面ではRazer製のゲーミングスピーカーやサウンドバー（Nommo V2 XやLeviathan V2 X）も取り入れており、制作環境に“多様な耳”を導入する意識の高さが感じられます。

Ayaseさんのように、「音の出口」を徹底的に整えることで、ソフトウェアシンセやサンプル音源から生み出された音が、最終的にどのように“鳴る”のかを正確に把握できるという点は、すべてのDTMクリエイターにとって重要な示唆と言えるでしょう。

機材名	メーカー	Amazon最安値URL	アーティスト	ギタリスト	備考
MOTU UltraLite mk5	MOTU	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	メインインターフェースの一つ。高音質・低レイテンシーで定評。
APOGEE Quartet	APOGEE	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	高級インターフェース。AD/DA変換の透明度が高く、楽器や声の再現性が極めて高い。
reProducer Audio Epic 5	reProducer Audio	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	正確な定位とフラットな周波数特性を持つモニタースピーカー。メインモニターとして使用。
Razer Nommo V2 X	Razer	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	ゲーミング用ながら制作環境の補助スピーカーとして導入。ラフな確認にも最適。
Razer Leviathan V2 X	Razer	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	ゲーミングサウンドバー。制作・視聴環境のバリエーション確保に活用。

使用キーボード等の種類と特徴【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんの音楽制作において、一般的な意味での“ギター”は登場しません。しかし、彼にとっての“演奏表現のメインツール”となっているのが、MIDIキーボードやパッドコントローラー、シンセサイザーです。これらの機材は彼の手の延長として、音楽のアイディアを即座にDAWへ反映する役割を担っており、実質的に“ギター的ポジション”とみなしても差し支えない存在です。

最も象徴的なのが、Native Instruments KOMPLETE KONTROL S49 MK2 / S61 MK2（Vapor Gray）の2機種。これらは同社のプラグインバンドル「KOMPLETE 13 Ultimate」と高い親和性を持ち、プリセットの検索、パラメーターの操作などを直感的に行うことができます。Ayaseさんはこれらをメインキーボードとして使用しており、ピアノ・ストリングス・シンセリードなど、幅広い音色を自在に操るスタイルです。

加えて、Native Instruments MASCHINE+（Vapor Gray）もAyaseさんの制作環境では重要な存在です。このスタンドアローン型のグルーヴマシンは、ビートメイクやサンプル演奏に特化しており、EDM・ポップ双方のリズム構築に活躍しています。YOASOBI楽曲の中でも、ドラムサウンドの細やかなアクセントや、刻むようなリズム要素にはこの機材の存在が透けて見えるシーンも多くあります。

さらに、Ayaseさんはライブパフォーマンス用としても鍵盤機材を多用しており、Nord Electro 5D 73やNord Stage2 EX、YAMAHA reface YCといったシンセ・オルガン機材を使用しています。これらはライブ会場でもその場で演奏され、ピアノ・ストリングス・オルガンといったアコースティックな音色を表情豊かに再現するために活用されています。

また、シンプルでコンパクトなMIDIキーボードとしてRoland A-49も導入されています。軽量ながらタッチの反応も良く、自宅制作やツアー移動時の作業など、場面に応じて柔軟に使い分けていることがわかります。

Ayaseさんにとってこれらの鍵盤楽器・パッド系ツールは、もはや“ギター”以上に直接的な音楽表現手段であり、サウンドの骨格そのものを作り出す要。楽曲制作のインスピレーション源として、またライブでの演奏表現として、彼の音楽を支える重要な要素と言えるでしょう。

機材名	メーカー	Amazon最安値URL	アーティスト	ギタリスト	ギターの種類	備考
KOMPLETE KONTROL S49 MK2	Native Instruments	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	MIDIキーボード	メインの制作キーボード。KOMPLETEバンドルとの高い連携性を持つ。
KOMPLETE KONTROL S61 MK2	Native Instruments	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	MIDIキーボード	S49と併用。鍵盤数の多いモデルでピアノ演奏に適する。
MASCHINE+ Vapor Gray	Native Instruments	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	サンプリングパッド	ビートメイクやパターン制作に活用されるグルーヴマシン。
Nord Electro 5D 73	Clavia Nord	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	シンセサイザー	ライブ用キーボード。オルガンやエレピの音色で使用される。
Roland A-49	Roland	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	MIDIキーボード	軽量で携帯性に優れたサブキーボード。
YAMAHA reface YC	YAMAHA	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	モデリングシンセサイザー	オルガン音源中心。ライブ時の要所で使用される。

使用機材その②【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんは、ハードウェアのペダルボードを持たず、ソフトウェア・プラグインを用いた完全なイン・ザ・ボックス（ITB）環境で音作りを行っています。ここでは、その“仮想ボード”ともいえる、彼のDTM環境における主要なエフェクター／音源プラグインについて詳しく解説します。

まず中心となるのが、Native Instruments社の「KOMPLETE 13 Ultimate Collector’s Edition」。これは膨大な数のソフトシンセ、エフェクト、サンプルライブラリを含むバンドルで、Ayaseさんがメインキーボードとして使用しているKOMPLETE KONTROLとシームレスに連携可能です。リバーブ、コンプレッサー、イコライザーなど、一般的なミックス用エフェクトから、エフェクティブな空間系まで一通り揃っています。

さらに、EDM～ポップ寄りのシンセリードやパッドを生み出すうえで欠かせないのが、XFER RECORDS Serum。このウェーブテーブルシンセは、非常に視覚的で直感的なUIと高いサウンドエンジンを備え、YOASOBIのサウンドにおける独特なシンセフレーズやリードトーンに使用されていると考えられています。

また、ピアノサウンドには極めてこだわっており、初期の「夜に駆ける」ではLogic Pro Xに搭載された「Steinway Grand Piano」を使いながらも、2020年以降はさらに表現力を高めるためにSYNTHOGY Ivoryを導入。リアルな打鍵音やリリースの質感まで細やかに再現できるIvoryは、YOASOBIの美しいバラード楽曲における中心的な要素です。

Ayaseさんにとって、ボーカルという“人の声”をどこまで拡張し、幻想的な世界観に昇華するかも重要なテーマであり、そこに欠かせないのがCrypton 初音ミク V4Xです。ボカロP時代から愛用しているこの音源は、現代のYOASOBI作品にも影響を与え続けている彼の原点であり、ボーカロイドによる仮歌作成やサウンドデザインにも使われています。

これらを踏まえると、Ayaseさんの“仮想ボード”は、従来のペダル型エフェクターとは違い、DAW内に構築された超高機能な音楽ラボのようなものです。各エフェクトはプリセットをベースにしつつも、細かなパラメータ操作により「人間らしさ」や「空気感」を意識したミックスが施されています。

以下に、これらのプラグイン・エフェクトをエフェクター種別に分類し、ボード構成としてまとめます。

機材名	メーカー	Amazon最安値URL	アーティスト	ギタリスト	エフェクターの種類	備考
KOMPLETE 13 Ultimate Collector’s Edition	Native Instruments	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	空間系マルチエフェクター	主要なEQ、リバーブ、ディレイ、マスタリング系エフェクトを多数含むバンドル。
XFER RECORDS Serum	XFER RECORDS	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	プリアンプ/アンプシミュレーター	ウェーブテーブルベースのソフトシンセ。リードやベース音色の要。
SYNTHOGY Ivory	SYNTHOGY	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	リバーブ	リアルなピアノ音源。リバーブ成分や倍音表現も秀逸で、空間作りにも貢献。
Crypton 初音ミク V4X	Crypton Future Media	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	ギターシンセサイザー	ボーカロイド音源。仮歌やエフェクトボイスの演出に使用。

音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんの音作りは、単なるミックス処理ではなく、作品の「物語性」「映像的世界観」を形にするための“設計行為”そのものです。YOASOBIの楽曲を聴くと、イントロのピアノに始まり、サビのシンセリード、空間に溶け込むようなパッド、立体的に配置されたボーカル…すべてが丁寧に構築されています。この章では、それを支えるEQ・セッティング・ミックスの工夫について詳述していきます。

まず注目したいのが、ボーカルと楽器の「距離感」のコントロールです。Ayaseさんは「ボーカルはセンターにドンと置くが、音圧ではなく“空気感”で支える」と語っており、ボーカルと楽器がぶつからないよう、周波数と定位の整理を非常に丁寧に行っています。たとえば以下のようなEQ調整が想定されます：

• ボーカルのEQ： 200〜300Hz帯の不要な膨らみをカット。1kHz〜2kHzを軽くブーストして明瞭さを出し、4kHz以上はやや抑えて耳障りなピークをコントロール。
• ピアノ（Ivory）： 左右に軽くパンを振り、300Hz〜500Hzを軽く削りつつ、2.5kHz付近を少しだけブースト。中域でボーカルと衝突しないように工夫。
• シンセパッド： High-pass filterで150Hz以下を大胆にカットし、6kHz以上を持ち上げて“空気の膜”のような質感を演出。

また、ボーカルの処理においてはWAVESやLogic付属のコンプレッサーを使用し、自然なダイナミクス調整を行う一方で、ダブリングやリバーブ＋ディレイの組み合わせにより、幻想的な空間演出を加えています。YOASOBIの代表曲「夜に駆ける」では、あえてリバーブタイムを長く設定しつつも、プリディレイを40ms程度に調整し、ボーカルがリバーブに埋もれない工夫がなされているように聴こえます。

また、シンセ系ではXFER Serumのモジュレーション設定が大きな役割を果たします。たとえば、フィルターカットオフをLFOで周期的に動かすことで、楽曲に“息づかい”のようなうねりが生まれ、単調なループではなく“生きている音”が生成されます。これにより、単なるソフトウェアシンセがエモーショナルなリードサウンドへと昇華しているのです。

ミックスの最終段階では、バスコンプとマスタリングリミッターによって全体を整えつつ、「余白」を殺さないことが重要視されます。Ayaseさんの楽曲では音圧よりも「深さ」や「余韻」を重視しており、音量を無理に詰め込まず、聴き手の“想像力”に委ねる部分を巧みに残しています。

また、ステレオイメージャーやMid/Side処理もポイント。ステレオの広がりを活かしつつ、低域成分をセンターに集中させることで「広くて引き締まったミックス」が実現されており、モバイルスピーカーからスタジオモニターまで、どんな環境でも破綻しないバランス感が保たれています。

このようにAyaseさんのEQ・ミックス手法は、機材のスペックやソフトの機能に依存するのではなく、「音楽に命を吹き込む」という目的に即した構築であり、再現性のある技術であると同時に、強い美学を伴った表現でもあります。

比較的安価に音を近づける機材【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんのようなプロフェッショナルな制作環境をすべて揃えるのは、初心者にとってはなかなか現実的ではありません。しかし、現在ではDTMの普及により、5万円前後でも再現性の高い機材が手に入る時代です。ここでは、コストを抑えつつ、Ayaseサウンドの雰囲気に近づけるおすすめ機材をジャンル別に紹介します。

まず最初におすすめしたいのが、MIDIキーボードです。AyaseさんはNative InstrumentsのS49やS61を使用していますが、エントリーモデルとしてはM-Audio Keystation 49 MK3やAKAI MPK Mini MK3がおすすめです。前者はシンプルで安定性があり、後者はドラムパッドやノブも搭載しており、MASCHINE+のようなビート制作も可能です。

次に重要なのが、オーディオインターフェース。高音質・低価格で定番となっているのはSteinberg UR22CやFocusrite Scarlett 2i2。どちらもUSB接続、24bit/192kHz対応で、十分な解像度と拡張性を持っています。Ayaseさんが重視している“音の入り口と出口の精度”を手頃な価格帯で体感できます。

音源やエフェクトでは、Native Instrumentsの上位バンドルは高額ですが、入門者向けのKOMPLETE 14 SELECTは1万円台から購入でき、ピアノ、ドラム、シンセ、エフェクトが一通り揃っています。Serumの代替としては、無料で使えるVital（by Matt Tytel）があり、LFOやウェーブテーブルの使い方も似ており、学習にも最適です。

また、ピアノ音源の再現には、Ivoryの代わりとしてArturia Piano V3や、KONTAKTベースのThe Giantなども選択肢になります。リバーブ／ディレイに関しては、DAW付属のものでも十分ですが、より柔らかく深みを出したい場合は、WAVESのH-ReverbやValhallaシリーズ（特にValhalla Room）がコスパに優れています。

以下に、価格帯・機能・再現性のバランスに優れたおすすめ機材を表形式でまとめます。

種類	機材名	メーカー	Amazon最安値URL	アーティスト	ギタリスト	備考
MIDIキーボード	AKAI MPK Mini MK3	AKAI	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	パッドやノブ付きでSerumやMASCHINE的用途に最適。省スペース＆安価。
MIDIキーボード	M-Audio Keystation 49 MK3	M-Audio	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	鍵盤演奏に特化。シンプルで初心者にも扱いやすい。
オーディオインターフェース	Steinberg UR22C	Steinberg	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	USB接続、安定したドライバと音質。宅録に最適。
プラグインバンドル	KOMPLETE 14 SELECT	Native Instruments	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	安価でありながら即戦力の音源が一通り揃う定番入門パッケージ。
シンセ音源	Vital	Matt Tytel	Amazonで検索	YOASOBI	Ayase	Serumに近い機能を持つ無料シンセ。LFOやウェーブテーブル操作も学びやすい。

総括まとめ【YOASOBI・Ayase】

Ayaseさんの音作りにおける最大の魅力は、膨大な機材や高額なソフトウェアを駆使して「正解の音」を目指すのではなく、「物語を届ける音」にフォーカスしている点にあります。彼の作品は、すべてのサウンドが“伝えるべき意味”を持ち、楽曲全体の中で必要な位置に丁寧に配置されています。その姿勢こそが、多くのリスナーに刺さる“YOASOBIらしさ”を生み出しているのです。

初期には、中古のMacBookとDAWのみで生まれた「夜に駆ける」が象徴的です。インターフェースもなく、PC直挿しのヘッドホンだけという制限された環境でも、Ayaseさんは世界を動かす音楽を生み出しました。これは、サウンドメイクとは「装備」ではなく「設計思想と目的」によって成り立つことを証明した好例です。

現在の彼の環境は、MOTUやAPOGEEの高性能なインターフェース、KOMPLETEバンドルを活用した無数のソフト音源、IvoryやSerumのような特化型プラグインなど、プロフェッショナルレベルに整備されていますが、それは“音楽の深みを広げる手段”であって、目的そのものではありません。どれほど便利な機材を持っていても、Ayaseさんのように「物語を描く」意識がなければ、その機材は宝の持ち腐れになってしまうでしょう。

また、彼のEQ・ミックス処理は非常に理知的で、空間と音域の設計が見事です。ボーカルはセンターに、その周りにピアノやストリングスが立体的に配置され、リバーブやディレイの使い方も楽曲の情緒に合わせて繊細に調整されています。こうした技術的な工夫と芸術的な感性の融合が、YOASOBIの「文学と音楽の架け橋」というコンセプトを支えているのです。

これからAyaseサウンドを目指すクリエイターにとって、最も重要なのは「どんな世界観を、どんな音で伝えたいのか」を明確にすることです。高価な機材を揃えるよりも、無料のプラグインや限られた手持ちのツールで、いかに自分らしい音楽を設計できるか。それが最初の一歩となります。そして、必要に応じて環境を拡張しながら、表現の幅を少しずつ広げていけばいいのです。

Ayaseさんの音作りは、単なるDTMノウハウの枠を超え、「音で物語を語る」ことに挑み続ける表現の軌跡とも言えるでしょう。この記事を通じて、その魅力や手法が少しでも伝わり、あなた自身の音楽制作のヒントになれば幸いです。

▶ @Ayase_0404 – Ayase公式Xアカウントはこちら