始めに(特徴紹介)
T-SQUAREのギタリスト安藤正容(あんどう まさひろ)は、日本のフュージョン界において独特のサウンドキャラクターを持つギタリストとして知られています。1978年にTHE SQUAREに加入してから長年にわたり、バンドの楽曲に洗練されたギターサウンドを提供し続けてきました。
安藤正容のプレイスタイルの特徴は、テクニカルでありながらもメロディアスな表現力にあります。フュージョン特有の複雑なハーモニーの中でも、聴き手の心に響くフレーズを奏でる能力は他の追随を許しません。特に「TRUTH」「OMENS OF LOVE」「MEGALITH」といった代表楽曲では、彼の持つ音楽性とテクニックが存分に発揮されています。
音色的な特徴としては、クリーンからクランチ、リードサウンドまでの幅広いダイナミクスを駆使した表現が挙げられます。近年ではKemper Profiling Amplifierを中心としたデジタルシステムを構築し、ライブでの安定性と音質の両立を図っています。また、使用ギターも時代とともに変化しており、初期のGibson Les Paulから始まり、現在ではNovo GuitarsやPRS Silver Skyなど、より現代的な楽器を積極的に取り入れています。
T-SQUAREの楽曲における安藤のギターは、時にリードとして前面に出て、時にバンドサウンドを支える重要な役割を担っています。そのバランス感覚こそが、彼のギタープレイの真骨頂と言えるでしょう。
使用アンプ一覧と特徴【T-SQUARE・安藤正容】
安藤正容のアンプシステムは、長年のキャリアを通じて大きく進化を遂げています。初期のキャリアではMarshallアンプを使用していましたが、時代とともにより洗練されたサウンドシステムへと移行してきました。
現在のメインシステムはKemper Profiler Powerrackを核としたデジタルプロファイリングシステムです。2021年4月のTHE SQUARE Reunionブルーノート公演では、このシステムがサウンドの根幹を担いました。Kemperの最大の利点は、様々な名機アンプの音色特性をプロファイルとして保存し、ライブ会場やスタジオで安定して再現できることです。
安藤が使用するKemperのプロファイルは、WEB上で入手したリグを基本としています。クリーンサウンドにはCarr Slant 6V、コーラスサウンドには同じくCarr Slant 6VにKemperのエフェクトを組み合わせ、クランチサウンドにはSuhr Badger、リードサウンドにはCustom Audio Amplifiers OD100のプロファイルを使用しています。これらの設定は曲ごとに微調整され、ディレイタイムやフェイザーなどのエフェクト設定も細かく管理されています。
『IMPRESSIVE』時代から長年使用していたCUSTOM AUDIO ELECTRONICS 3+プリアンプとVHTパワーアンプの組み合わせは、安藤サウンドの基礎を築いた重要なシステムでした。また、2014年後半からはFRACTAL AUDIO SYSTEMS Axe-FXとMatrixパワーアンプの組み合わせも使用し、デジタルモデリング技術への移行を段階的に進めてきました。
ソロ活動のANDY’Sでは、よりシンプルなセッティングを好み、CUSTOM AUDIO ELECTRONICS OD-100、Carr、Magnatoneといった真空管アンプを使用しています。これらの選択は、マイケル・ランドウからの影響を受けており、よりオーガニックなサウンドを追求する姿勢が伺えます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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Profiler Powerrack | KEMPER | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 2021年ブルーノート公演でメイン使用。Carr Slant 6V、Suhr Badger、CAE OD100などのプロファイルを活用 |
Profiler Stage | KEMPER | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | アコースティックギター用として使用。ライン出力でハウリング対策 |
3+ プリアンプ | CUSTOM AUDIO ELECTRONICS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 『IMPRESSIVE』時代からの基本システム。VHTパワーアンプと組み合わせ |
Axe-FX | FRACTAL AUDIO SYSTEMS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 2014年後半から使用。Matrixパワーアンプと組み合わせたサウンドプロセッサー |
OD-100 | CUSTOM AUDIO ELECTRONICS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ANDY’Sソロ活動で使用。マイケル・ランドウの影響を受けた選択 |
Slant 6V | Carr | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ANDY’Sソロ活動とKemperプロファイルの両方で使用される真空管アンプ |
Magnatone アンプ | Magnatone | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ANDY’Sソロ活動で使用。ビンテージトーンが特徴 |
使用ギターの種類と特徴【T-SQUARE・安藤正容】
安藤正容のギター選択は、長年のキャリアを通じて常に進化し続けています。初期のTHE SQUARE時代からデビュー作『MAGIC』まではGibson Les Paul StandardとSchecter Custom Shop STを使用していましたが、現在では多様なギターを使い分ける成熟したスタイルを確立しています。
現在のメインギターの一つがNovo Guitars Model Serus Jです。2本所有しており、2019年頃の入手以降頻繁に使用されています。このギターの最大の特徴はパイン材ボディによる軽量性で、長時間のライブでも疲労を軽減できます。ナッシュビルのブランドであるNovo Guitarsは、ファーノ・ギターズ創設者のデニス・ファーノがデザインに関わっており、弦長とテンションの関係でチョーキング時のベンド幅に独特の感触があります。T-SQUARE最新作『FLY! FLY! FLY!』のレコーディングでも重要な役割を果たしました。
Fender Custom Shop Michael Landau 1957 Stratocasterも現在の主力ギターです。マスタービルダーのジェイソン・スミスが手掛けたこのモデルは、指板ラジアス7.25インチのビンテージスタイルを採用しています。安藤は2本所有しており、そのうち1本は2-3年前からメインとして使用し、ネック裏の塗装を自身で剥がすなどのカスタマイズを施しています。ただし、1弦14フレット付近でのベンド時に音詰まりを感じることがあり、指板の修正やネック交換を検討中とのことです。
Paul Reed Smith Silver Skyは、ジョン・メイヤーとの共同開発モデルで、現在メイン級の活躍をしています。安藤がこのギターに興味を持ったきっかけは、ソエジマトシキのYouTube動画でした。特に音抜けの良さを気に入っており、リアピックアップをセイモア・ダンカンのLittle ’59 Stratに載せ替えてカスタマイズしています。
Gibson 1962 ES-335は、2000年頃に入手した貴重なビンテージ楽器です。ドット・ポジション・マーク最終期のモデルで、メタル・トップのノブやダブル・リングのクルーソン・ペグなど、オリジナル仕様を多く残しています。アルバム『FRIENDSHIP』(2000年)、『BRASIL』(2001年)で使用され、近作『AI Factory』(2020年)の「Daylight」でも演奏されました。軽井沢の大賀ホールでのアコースティック・ライブではメイン使用されるなど、アコースティック寄りの楽曲に適したキャラクターを持っています。
過去には多くの個性的なギターを使用してきました。Moon Custom STやAircraft AC-5といった日本製ハイエンドギター、Valley Arts Larry Carlton Modelなど、それぞれの時代のサウンドに合わせて選択されていました。これらのギター選択からは、安藤の音楽的探求心と、常に最適なサウンドを追求する姿勢が伺えます。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | ギターの種類 | 備考 |
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Model Serus J | Novo Guitars | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | エレキギター | 2本所有。パイン材ボディの軽量性が特徴。『FLY! FLY! FLY!』レコーディングで使用 |
Michael Landau 1957 Stratocaster | Fender Custom Shop | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ストラトキャスター | 2本所有。7.25インチ指板ラジアス。メイン使用の1本はネック裏塗装を自分で剥がし |
Silver Sky | Paul Reed Smith | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | エレキギター | 現在メイン級。音抜けの良さが特徴。リアPUをSeymour Duncan Little ’59 Stratに交換 |
1962 ES-335 | Gibson | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | セミアコースティック | 2000年頃入手。『FRIENDSHIP』『BRASIL』『AI Factory』で使用。アコースティックライブでメイン |
Pete Thorn Signature Model | Suhr | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ストラトキャスター | 2018年入手。Even C Slimネック、コンパウンドラジアス指板。Thornbuckerピックアップ搭載 |
Telecaster Thinline | Fender Custom Shop | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | テレキャスター | 衝動的に入手。自宅での使用が主体。フロントピックアップカバーが外れている |
Stratocaster 1961 | Fender | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ストラトキャスター | サンバースト。『Wonderful Days』-『FLY! FLY! FLY!』で使用 |
Stratocaster 1960 | Fender | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ストラトキャスター | ホワイト。『Wonderful Days』-『FLY! FLY! FLY!』で使用 |
使用エフェクターとボード構成【T-SQUARE・安藤正容】
安藤正容のエフェクターシステムは、Kemper Profiling Amplifierを中心とした現代的なデジタルシステムと、厳選されたアナログエフェクターを組み合わせた洗練された構成となています。長年のキャリアを通じて培ったサウンドメイキングのノウハウが、現在のセッティングに結実しています。
THE SQUARE Reunionのブルーノート公演(2021年4月)では、Kemper Profiler Remoteによる統合コントロールが行われました。プリセット名を曲名で登録し、各曲でディレイタイムやフェイザーなどのエフェクト設定を微調整する繊細なアプローチが取られています。基本設定はクリーン、コーラス、クランチ、リードの4つのベースサウンドで構成され、これらを曲の展開に合わせて使い分けています。
Kemper Profiler Powerrackに入る直前に接続されるLee Custom Amplifier 12AU7 Buffer + Boosterは、JJ Electronic 12AU7真空管を搭載した小型ペダルです。このペダルの役割は、デジタルシステムに入る前の段階で音に芯を与え、真空管特有の手触りを加えることです。デジタルとアナログの良いところを組み合わせる、安藤らしい配慮が感じられます。
アカサカトリオでのライブでは、より詳細なエフェクター構成が明らかになっています。Dry Bell Vibe-MachineはKemper Profiler Stageのセンド/リターンに接続され、ビブラート効果として使用されています。このペダルはビブラート/コーラスの2モードを搭載していますが、安藤はビブラートとして活用し、楽曲に独特の揺らぎを与えています。
AMATERAS JAPAN LINE TRANS(通称ニーヴくん)は、Dry Bell Vibe-Machineの後段に接続される重要な機材です。このペダルの目的は、Kemperのデジタル臭さを緩和することで、よりオーガニックなサウンドを得ることにあります。デジタルシステムの利便性を保ちながら、アナログ的な温かみを追加する発想は、現代のギタリストにとって非常に参考になります。
Shin’s Music Perfect Volume HybridはAMATERAS JAPAN LINE TRANSの後段に接続され、ボリュームコントロールを担当しています。これまでKemperのエクスプレッション・ペダルでコントロールしていたボリュームを、よりカーブの扱いやすいこのペダルに変更したことで、より細やかな音量調整が可能になりました。
Mission Engineeringのエクスプレッション・ペダルは2台使用され、左側がボリューム・ペダル、右側がワウ・ペダルとしてProfiler Remoteと接続されています。この配置により、演奏中の足元操作が直感的に行えるよう工夫されています。過去にはより多くのコンパクトエフェクターを使用していた時期もありましたが、現在はシステムの簡素化と音質の向上を両立させた成熟したセッティングとなっています。
機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | エフェクターの種類 | 備考 |
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Profiler Remote | KEMPER | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | スイッチングシステム | プリセット名を曲名で登録。各曲でディレイタイムやフェイザー設定を微調整 |
12AU7 Buffer + Booster | Lee Custom Amplifier | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | バッファー | JJ Electronic 12AU7真空管搭載。Kemper入力前で音に芯とチューブ感を追加 |
Vibe-Machine | Dry Bell | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ビブラート | アカサカトリオで使用。Kemper Stageのセンド/リターンに接続 |
LINE TRANS (ニーヴくん) | AMATERAS JAPAN | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | プリアンプ/アンプシミュレーター | Kemperのデジタル臭さを緩和。Vibe-Machineの後段に接続 |
Perfect Volume Hybrid | Shin’s Music | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ボリュームペダル | LINE TRANSの後段に接続。カーブの扱いやすさを重視した選択 |
エクスプレッション・ペダル | Mission Engineering | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | エクスプレッションペダル | 2台使用。左側ボリューム、右側ワウとしてProfiler Remoteと接続 |
音作りのセッティング・EQ・ミックスの工夫【T-SQUARE・安藤正容】
安藤正容の音作りにおける最大の特徴は、デジタルシステムの利便性を活かしながら、アナログ的な温かみと表現力を両立させている点にあります。Kemper Profiling Amplifierを核とした現在のシステムは、単なるデジタルモデリングではなく、実機の特性を忠実に再現したプロファイルを基礎として、そこに彼独自の味付けを施したものです。
基本的なEQ設定について、安藤は4つのベースサウンドを軸に構成しています。クリーンサウンドではCarr Slant 6Vのプロファイルを使用し、中域を若干持ち上げることで楽曲の中での存在感を確保しています。低域は必要以上にブーストせず、バンドサウンドの中でベースとの住み分けを意識した設定となっています。高域は楽曲の雰囲気に合わせて調整され、バラード系では柔らかく、アップテンポな楽曲では明瞭さを重視したセッティングが施されます。
コーラスサウンドでは、同じくCarr Slant 6VのプロファイルにKemper内蔵のコーラスエフェクトを組み合わせています。この設定のポイントは、コーラスの深さとスピードを楽曲に合わせて細かく調整することです。T-SQUAREの楽曲では、コーラスは装飾的な効果というよりも、サウンドの厚みと立体感を生み出す重要な要素として機能しています。ミックス段階では、コーラスがかかった音像を意識してパンニングやリバーブ量が調整されます。
クランチサウンドにはSuhr Badgerのプロファイルが使用されていますが、このアンプ特有の中域の厚みを活かしながら、高域の刺激的な部分を適度に抑制することで、長時間の演奏でも聴き疲れしないサウンドを実現しています。ゲイン設定は楽曲の要求に応じて変化しますが、基本的にはクリーンとリードの中間的な歪み量に設定され、ピッキングニュアンスが伝わりやすい絶妙なバランスを保っています。
リードサウンドのCustom Audio Amplifiers OD100プロファイルでは、サスティンの長さとトーンの質感が重要な要素となります。EQ設定では中域を中心とした山型の特性を基本とし、楽曲のキーやコード進行に応じて微調整が行われます。特に印象的なのは、リードギターソロでの音の立ち上がりの良さで、これはコンプレッション設定とアタックタイムの絶妙な調整によって実現されています。
ディレイとリバーブの設定は、楽曲ごとに大きく変化する要素です。バラード系楽曲では長めのディレイタイムとリバーブを使用してスペーシーな音像を作り出し、アップテンポな楽曲では短めの設定でタイトなグルーヴを重視します。特に注目すべきは、ディレイのフィードバック量の調整で、楽曲の展開に合わせてリアルタイムでコントロールすることで、サウンドに動的な変化を与えています。
ミックス段階での工夫として、ギタートラックの定位は楽曲の構成要素によって決定されます。リードギターは基本的にセンター寄りに配置されますが、バッキングギターがある場合は左右に振り分けることで音像の広がりを演出します。EQ処理では、他の楽器との周波数的な住み分けを意識し、特にキーボードとの棲み分けにおいて中域の処理が重要な役割を果たします。
Lee Custom Amplifier 12AU7 Buffer + Boosterの効果は、デジタルシステム全体に真空管特有の音楽的な歪みを加えることです。この歪みは耳に聞こえるほど明確なものではありませんが、音の立体感と温かみに大きく貢献しています。また、AMATERAS JAPAN LINE TRANSによるデジタル臭さの軽減も、最終的な音質向上に重要な役割を果たしており、これらアナログ処理との組み合わせが安藤サウンドの核心部分を形成しています。
比較的安価に音を近づける機材【T-SQUARE・安藤正容】
安藤正容のような洗練されたサウンドを予算を抑えて再現するためには、彼の音作りの本質を理解し、類似の特性を持つ機材を選択することが重要です。高額なKemper Profiling Amplifierや希少なビンテージギターを使用せずとも、適切な機材選択により十分に近いサウンドを得ることは可能です。
アンプシミュレーター分野では、BOSS GT-1000シリーズが非常に有効な選択肢となります。このマルチエフェクターに搭載されているアンプモデルの中でも、特にFender系のクリーンサウンドとマーシャル系のクランチサウンドを組み合わせることで、安藤サウンドの基礎となる音色を構築できます。GT-1000の強みは、リアルタイムでのパラメーター調整が容易で、楽曲に合わせた細かな音作りが可能な点です。また、内蔵されているディレイやリバーブの品質も高く、スタジオレベルの空間系エフェクトを提供します。
ギター選択においては、Fender Player Stratocasterが最も現実的で効果的な選択肢です。安藤が現在メインで使用しているStratocaster系ギターの音色特性を、この価格帯で最も忠実に再現できます。特に重要なのはピックアップの質で、Player Stratocasterに搭載されているPlayer Seriesピックアップは、ビンテージライクなトーンと現代的な出力レベルを両立しており、フュージョン系音楽に適した明瞭さと温かみを持っています。必要に応じてリアピックアップをSeymour Duncan Hot Rails等のハムバッカータイプに交換することで、よりリードサウンドに適した出力と音色を得ることができます。
エフェクター面では、BOSS CE-2W Waza Craftコーラスが安藤サウンドの重要な要素であるコーラス効果を再現する上で理想的です。このペダルは1980年代のCE-2の回路を現代技術で再現したもので、T-SQUAREの楽曲で頻繁に聞かれる上品で音楽的なコーラスサウンドを提供します。StandardモードとCustomモードの切り替えにより、楽曲に応じた異なるキャラクターのコーラスを使い分けることが可能です。
オーバードライブペダルとしては、Ibanez Tube Screamer TS9が非常に有効です。安藤のクランチサウンドに見られる中域の厚みと適度な歪みを、このペダルで効果的に再現できます。TS9の特徴である中域のブーストは、バンドサウンドの中でギターを前面に押し出す効果があり、フュージョン系音楽での存在感確保に重要な役割を果たします。ゲイン設定を控えめにしてクリーンブースターとして使用することで、ソロ時の音量アップとトーンの変化を同時に実現できます。
ディレイエフェクトには、BOSS DD-8 Digital Delayを推奨します。このペダルは多様なディレイタイプを搭載しており、特にAnalogモードとVintageモードが安藤の使用するディレイサウンドに近い特性を持っています。重要なのはディレイタイムの設定で、楽曲のテンポに合わせた8分音符や4分音符のディレイを使い分けることで、T-SQUARE楽曲特有のグルーヴ感を演出できます。また、フィードバック量を楽曲の展開に合わせて調整することで、サウンドに動的な変化を与えることが可能です。
リバーブ効果については、TC Electronic Hall of Fame 2 Reverbが優秀な選択肢です。このペダルに搭載されているSpringリバーブとHallリバーブを楽曲に応じて使い分けることで、安藤サウンドの持つ空間的な広がりを再現できます。特にSpringリバーブは、ビンテージアンプのスプリングリバーブを忠実に再現しており、フュージョン系音楽に適した自然な残響感を提供します。
これらの機材を組み合わせることで、総額15万円程度で安藤正容のサウンドエッセンスを十分に再現することができます。重要なのは、各エフェクトの設定値よりも、楽曲全体の中でのギターの役割を理解し、適切なバランスで使用することです。また、アンプシミュレーターの設定では、過度な歪みや派手なエフェクトを避け、楽曲に溶け込む上品さを重視することが、安藤サウンドに近づく重要なポイントとなります。
種類 | 機材名 | メーカー | Amazon最安値URL | アーティスト | ギタリスト | 備考 |
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マルチエフェクター | GT-1000 | BOSS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | Kemperの代替として最適。Fender系クリーンとMarshall系クランチを組み合わせ |
エレキギター | Player Stratocaster | Fender | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 現在の安藤メインギターと同系統。Player Seriesピックアップが優秀 |
コーラス | CE-2W Waza Craft | BOSS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 80年代CE-2の回路を再現。T-SQUARE楽曲の上品なコーラスを再現 |
オーバードライブ | Tube Screamer TS9 | Ibanez | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | 中域の厚みが安藤のクランチサウンドに類似。クリーンブースターとしても優秀 |
ディレイ | DD-8 Digital Delay | BOSS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | AnalogモードとVintageモードが安藤のディレイサウンドに近似 |
リバーブ | Hall of Fame 2 Reverb | TC Electronic | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | SpringリバーブとHallリバーブで空間的広がりを再現 |
ボリュームペダル | FV-500H | BOSS | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | ハイインピーダンス対応。Shin’s Music Perfect Volume Hybridの代替 |
バッファー | Buffer Bay | Electro-Harmonix | Amazon検索 | T-SQUARE | 安藤正容 | Lee Custom Amplifier 12AU7 Bufferの代替。信号劣化を防止 |
総括まとめ【T-SQUARE・安藤正容】

安藤正容のギターサウンドとその音作りを詳細に分析してきましたが、彼の音楽的アプローチの本質は「技術と感性の絶妙なバランス」にあることが明確になります。長年のキャリアを通じて培われた彼のサウンドメイキングは、単なる機材の組み合わせではなく、音楽全体を俯瞰した総合的な表現手法として完成されています。
最も特徴的なのは、デジタル技術の利便性を最大限に活用しながら、アナログ的な温かみと表現力を決して犠牲にしない姿勢です。Kemper Profiling Amplifierというデジタルシステムを核としながらも、Lee Custom Amplifier 12AU7 BufferやAMATERAS JAPAN LINE TRANSといったアナログ処理を組み合わせることで、デジタルの弱点を補完しています。この「ハイブリッド思考」は、現代のギタリストにとって非常に参考になるアプローチと言えるでしょう。
ギター選択における彼の哲学も注目に値します。初期のGibson Les Paulから現在のNovo GuitarsやPRS Silver Skyまで、常に時代の要求と自身の音楽的成長に合わせて楽器を選択し続けています。重要なのは、ブランドや価格ではなく、楽曲に最適な音色とプレイアビリティを持つ楽器を選ぶという実用主義的な考え方です。特に近年のNovo Guitars採用は、YouTubeでの情報収集から実際の導入まで、現代的な楽器選択プロセスを示しており、年齢に関係なく新しいものを取り入れる柔軟性を表しています。
エフェクターシステムの構築においても、「必要十分」という考え方が貫かれています。過去には多くのコンパクトエフェクターを使用していた時期もありましたが、現在はKemperを中心とした統合システムに集約し、より本質的なサウンドメイキングに集中しています。このシンプル化は、技術的成熟の証拠であり、若いギタリストにとって「機材の量ではなく質と理解が重要」という教訓を与えています。
T-SQUAREというバンドの中での安藤の役割も、彼のサウンドメイキングに大きな影響を与えています。フュージョンバンドにおけるギタリストは、リードとバッキングの両方を高いレベルで担当する必要があり、そのためのトーンバリエーションとダイナミクスの確保が不可欠です。彼の4つのベースサウンド(クリーン、コーラス、クランチ、リード)は、この要求に応える合理的なソリューションとなっています。
音作りの工夫において最も学ぶべき点は、「楽曲全体の中でのギターの位置づけ」を常に意識していることです。ソロギタリストではなく、バンドの一員としてのサウンドメイキングは、EQ設定から定位、エフェクトの使い方まで、すべてが他の楽器との調和を前提として構築されています。この視点は、多くのギタリストが見落としがちな重要な要素です。
安藤正容のサウンドを再現しようとする際に最も重要なのは、表面的な機材の模倣ではなく、彼の音楽的思考プロセスを理解することです。どのような楽曲で、どのような役割で、どのような効果を狙ってその音色を選択しているのか。この「なぜ」の部分を理解することで、限られた予算や機材でも十分に近いサウンドを実現することができます。
最終的に、安藤正容のギターサウンドの魅力は、技術的完成度の高さと音楽的センスの絶妙な融合にあります。彼のアプローチから学ぶべきは、常に音楽全体を見据えた判断基準を持つこと、新しい技術や機材を恐れずに取り入れること、そして何より「良い音楽を作る」という根本的な目的を見失わないことです。これらの要素こそが、時代を超えて愛され続けるT-SQUAREサウンドの核心部分を形成しているのです。
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